2030年までに医療ナノロボットや小型探索ロボットなどが開発される - IEEE

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世界最大の技術者・エンジニア・研究者の組織であるInstitute of Electrical and Electronics Engineer(IEEE)は、2030年までにナノサイズから中型までのさまざまな小型ロボットが登場し、将来の我々の生活に変化をもたらす画期的な用途が期待できることを予測していると発表した。

体内からの健康監視による薬物投与、捜索救助チームへの重要情報の提供、食の安全に関連する問題発生の最小化といった機能を持つ小型ロボットが、ヒトの寿命と社会の健全性に大きな影響を与えることになるとしている。

IEEEフェローで南カリフォルニア大学のロボット工学および組み込みシステムセンター(Center for Robotics and Embedded Systems)の創設者でもあるマジャ・マタリック(Maja Mataric)博士によれば、「ロボットのサイズとヒトによるロボット受容の関係は、ロボット工学の分野で常に研究されているテーマです。

これまでの研究から、人体の75%未満のサイズのロボットであれば、広く受け入れられることがわかっています。

この知見に基づき、現在は近い将来の我々の生活を向上させるさまざまな用途に使用される小型ロボット技術の開発の躍動期にあるといえるでしょう」という。

実際、世界で最も有名なヒューマノイドロボットといえば、ホンダのASIMO(画像)だが、ヒトの生活空間で活動できるサイズとしつつも、子どもたちにも威圧感を与えないサイズとして、130cmという身長だ。

また今回の予測では、病気とヒトの免疫系の異常を監視するミニモニター、人体に注射されて機能する微小サイズのナノロボットの開発が進んでいることにも触れられている。

こうしたロボットは、さまざまな疾病や栄養素を人工知能によって自動的に見分ける仕組みを持たせるべく研究中だ。

複数のナノロボットを連携させて、ヒトの内蔵など内部の健康状態を把握することができるようにもするという。

IEEEのメンバーでフリーのロボット専門家であるアントニオ・エスピンガーデイロ(Antonio Espingardeiro)氏によれば、「健康の監視と維持を担うこの超小型ロボットが、2030年までに寿命の延長に寄与することが有望視されています。

ロボットは、疾病の検出や動脈内の清掃だけでなく、インシュリンなどの薬物の投与も行うようになるでしょう。

こうした機能を組み合わせることで疾病を初期段階で特定して処置できるため、長期間にわたって人体を正常に機能させ続けることができます」としている。

国内でも、本格的なナノサイズの分子ロボティクス研究も今年から5カ年の新学術領域(画像2:記事はこちら)として文部科学省から助成費を受けてより活発に研究が進められているし、その関連として学部生による国際生体分子デザインコンテスト「BIOMOD」(画像3:記事はこちら)も行われているところだ。

そして、災害現場における要救助者の探索を目的とした探索・救助ロボットについても触れられている。

9・11の要救助者捜索でも米国製の小型クローラロボットが活躍したし、現在は福島第一原子力発電所の原子炉建屋内で、世界最高の運動性能と不整地踏破能力を有する日本製の「Quince」(画像4)が活躍はご存じの方も多いだろう。

Quinceも小型だが、先日発表されたその後継機の1台である「Sakura」(画像5:記事はこちら)はさらに小型なのだが、今回のリポートによれば、より小型のロボットたちが活躍するようになるとする。

ビルの崩壊、自然災害、核関連災害後の被災者の安全確保には、捜索救出ミッションが極めて重要であり、このような災害後の状況において、靴箱より小さなサイズでヘビのように動くことができる小型ロボットを利用できれば、ガレキの中を進んで被災地の初期構造をスキャンしたり、人命の探索や大気の安全性評価などの重要な機能を実行する上で大きなメリットになる。