６月9日夜にブリスベン入りした日本は、翌10日の夕方4時からトレーニングを行なった。この日は朝から雨模様で、日本からやってくると体感温度はかなり低い。晩秋から初冬にいきなり突入したようで、ネックウォーマーを巻いている選手もいた。

　練習は冒頭のみの公開だったが、選手の動きは悪くないようだ。乗り継ぎなしのチャーター便で到着したこともあり、「身体はすごく楽です。このサポート態勢はホントに有難いですね」と、中村憲剛は表情を和らげた。ヨルダン戦に途中出場した経験豊富なＭＦは、「たぶんオーストラリアのほうが、疲労はあるんじゃないですか」と続ける。
　
　敵地オマーンで酷暑にさらされたオーストラリアは、10日早朝にブリスベンへ戻ってきた。しかもこのアウェイゲームは、０対０のスコアレスドローに終わっている。メンタルコンディションも含めて、中村憲の推察にズレはないだろう。

　アジアの頂上決戦とも言うべき12日のゲームは、互いを知り尽くした一戦である。「だいたい知っているメンバーなので、まあ、誰が出ても自分たちのサッカーをして、いい結果を残したい」と、遠藤は力みのない口調で話す。直近の対戦では日本が１対０で勝利しているが、「あのアジアカップとまったく同じメンバーではないし、新しい選手も入っているので、これまでと同じスタイルではないと思う」と川島は冷静に分析する。
　
　日本は吉田を欠く。ヨルダン戦で負傷交代したため、今遠征には参加していない。高さのある彼の不在を不安視する声もあるが、遠藤は泰然自若としている。
「どうしてもロングボールを蹴られるときはあると思うので、まず出し手を抑えること。それからセカンドボールを意識して。競ってカバーというのは基本的に変わらない」

　遠藤だけではない。中村憲も自分たちのスタンスの重要性を強調する。
「オーストラリアは勝つ気でくると思うけど、こっちも流れ的にもすごくいい。自分たちのテンポでやるのが、勝利への一番の近道だとザックさんも言っている。そういう意味では、コンディションさえ整えば、という感じですね」

　内田も落ち着いた口ぶりで話した。
「スタメンの人とか関係なく、全員に（チームのやりかたを）浸透させてきたので、そういう成果の出てくる試合になると思う。大事ですね。やっぱりチーム力で勝っていかないといけないし、チームの力が試される試合だと思う。誰が出てきても約束事は変わらないので、あとはそのなかで個人の特徴をお互いに引き出せるようにしたい」

　ポイントのひとつに、ミドルシュートをあげたい。オーストラリアの最終ラインは高さと強さを兼備するが、スピードに秀でたタイプは見当たらない。精度あるミドルを見せつければＤＦラインは前へ出てこざるを得ず、背後にスペースが生まれる。サイドをえぐる下地ができ上がるわけだ。

　前回大会の最終予選を振り返ると、首位通過したオーストラリアは勝ち点20、同じく韓国は勝ち点16だった。韓国は４勝４分けの無敗で「16」だから、ひとまずここが予選突破の目安と考えていいだろう。

　12日の試合で勝利をつかめば、勝ち点は早くも「９」になる。残り５試合を２勝１分け２敗の５分で終えても、勝ち点は16だ。「ここで勝てばかなり有利になる」（川島）のは間違いない。

　いずれにせよ、過去2試合とまったく異なる構図が描かれる。現時点での実力がはっきりするのは間違いない。