何だか慌ただしい試合が多い。今シーズンのＪ１である。
　
　たとえば、８節の横浜対神戸戦だ。
　57分に神戸が先制し、71分に横浜が追いつく。１対１となったここから、立て続けにゴールが生まれる。73分、77分と横浜が加点し、３対１で勝利したのだ。
　
　横浜が今季初勝利をあげたことで、この試合は「鮮やかな逆転劇」と伝えられた。しかし、わずか７分で３点を許した神戸のディフェンスが、僕には気になる。
　
　たとえば、９節の川崎Ｆ対磐田だ。
　川崎の１点リードで迎えた53分、スコアは２対０となる。直後の55分、川崎は３点目を加えた。
　
　普通に考えれば、これで試合は決まりだ。ところが、ここからゲームは激しい撃ち合いとなる。59分、磐田が１点を返して３対１となり、62分には川崎が加点して４対１とする。67分には磐田が２点を奪う。試合終了時のスコアは、4対３だった。
　
　この試合は風間八宏監督の就任２試合目で、川崎がリーグ戦初勝利をつかんだゲームだった。翌日の報道も「新監督の初勝利」で統一されていたが、あまりに落ち着きのないゲームである。
　
　風間監督のサッカーが浸透していないために、川崎Ｆがスリルを味わったわけではない。スコアや試合展開に対して、選手たちが鈍感なことが理由である。
　
　同じく９節では、清水対鹿島戦も似たような展開となった。１対０と先行した清水が、72分に２点目を奪う。その３分後、ホームの清水はダメ押しの３点目をゲットしたのだ。
　
　大前や高木らの若手が躍動する清水の攻撃は、間違いなく見どころがある。しかし、経験豊富な鹿島がいともあっさりとゲームを決められてしまったと、僕の眼には映った。
　
　ここにあげた３試合は、実はほんのひと握りに過ぎない。短時間に激しくスコアが動いたり、一気の加点で勝敗の行方が決まったりするゲームが、今シーズンは頻発している。
　
　エキサイティングな攻防が繰り広げられている、と言えないことはない。各チームの攻撃陣の活躍は、ひとまず頼もしい。
　
　ただし、視点を変えればディフェンスの脆いチームが多過ぎる。相手の攻勢に抗えず、勢いに呑み込まれてしまうことがあまりにも多い。
　
　おりしもプレー時間の増加が叫ばれているが、時間稼ぎのような形で流れを切らなくても、ゲームを落ち着かせることはできるはずだ。意図的にボールをまわしたり、割り切ってロングボールを使ったりすればいい。これはもう工夫などというものではなく、きわめてシンプルな個人戦術である。フットボーラーとしてのインテリェジンスの問題だ。
　
　Ｊリーグは代表を映し出す鏡である。代表の常連がプレーするチームも、ひどく大雑把なゲームをしてしまっている。かくも落ち着きのないゲームばかりでは、来るべき最終予選へ不安を覚えざるを得ない。