週末の欧州から伝わってきたトップニュースは、ドルトムントの連覇達成だろう。
香川真司はチームの主力を担った。優勝を決めた一戦では、シーズン13点目をあげている。ケガで後半戦欠場を余儀なくされた昨シーズンとは、明らかに違う充実感や達成感を得ているに違いない。

　香川がマイスターシャーレを掲げた先週末には、本田圭佑が戦線復帰を果たしている。３月９日のロシアプレミアリーグ以来、公式戦７試合ぶりの出場となった。
復帰初戦のパフォーマンスに触れるまえに、CSKA（チェスカ）モスクワの現況を伝えておく必要がある。
　
　ロシアプレミアリーグは、新シーズンから秋春制へ移行する。このため、11−12シーズンはウインターブレイクを挟んで１年以上の長丁場となっている。現在はレギュラーシーズンの成績をもとにふたつのグループに分けられ、１位から８位までがチャンピオンシップグループを、９位から16位までがリレゲーショングループを戦っている。

　チェスカのチーム状態は良くない。３月上旬のリーグ再開後は、１勝４分け３敗と極度の不振に陥っている。ゼニト・サンクトペテルブルクがリーグ連覇へ独走したのも、チェスカの停滞感が著しいからだ。

　レギュラーシーズンの好調さが影を潜めた原因は、主力選手の相次ぐ負傷にある。ロシア代表でも正ＧＫを務めるアキンフェエフが、長期離脱を強いられたのがそもそもの始まりである。そこから本田、ロシア代表ＭＦジャゴエフ、イグナシェビッチ、ヴァシリ・ベレズツキの両代表ＤＦと、センターラインのプレーヤーが続々とケガに見舞われていった。

　冬の移籍市場では、長く攻撃を支えたブラジル人ＦＷヴァグネル・ラブがチームを去った。シーズン開幕当初のレギュラーが、同時に５、６人もいないタイミングがあったのだ。

　対照的にライバルチームは、冬の移籍で補強をしていた。同じモスクワを本拠地とするロコモティフは、代表ＦＷパヴリチェンコを迎えた。スパルタクには代表ＭＦビリャレトディノフが加入している。ゼニトにはアルシャビンが復帰した。いずれもシーズン終了後のユーロ２０１２を見据え、出場機会を求めて母国へ戻ってきた選手たちだ。戦力の底上げをはかったライバルと対照的に、チェスカはメンバーが揃わない試合が続いた。

　それだけに、本田の復帰はチーム浮上への起爆剤として期待された。だが、４月21日のディナモ・モスクワ戦は、不振のチームに本田が引きずられるような展開となる。０対１で敗れたゲームは、誰よりも彼自身にとって消化不良だったに違いない。
　
　ロシアからＵＥＦＡチャンピオンズリーグへ出場できるのは、新シーズンから１枠減って２チームとなる。３位から５位はヨーロッパリーグへまわる。２位と３位以下では、クラブと選手の新シーズンがまったく違うものになってくるのだ。

　残り４節の段階で、２位のディナモ・モスクワから７位のルビン・カザンまで、勝ち点６差に６チームがひしめきあっている。上位８チームによる直接対決の連続なので、順位が激変する可能性は十分に残されている。

　いずれにしても、チェスカの復調には本田の活躍が不可欠だ。攻撃にリズムやテンポをつけ、なおかつ決定的な仕事ができるのは、背番号７を着けた日本人以外に見当たらない。チェスカの新シーズンは、本田の頑張りにかかっている。