ゲームには流れがある。では、流れは何によって生み出されるのか。言うまでもなく、ボールの動き方である。

　ボールを支配していれば、少なくとも負けることはない。そこから一歩進んで勝利をつかむには、実効性のあるボールの動かし方を突き詰めていかなければならない。

　３月14日のバーレーン戦で、日本は62・１％のボール支配率を記録している。内容的にも危なげなく勝利をつかんだが、世界基準に照らしてみると違う視点が成り立つ。

　ボールの流れで気になったのは、左サイドバックの比嘉だ。右利きの左サイドバックである彼は、プレーの多くを右足で処理する。ノープレッシャーならば、それでもかまわない。問題は圧力を受けた局面である。

　左センターバックから、ボールを受けたとしよう。右足でトラップしたボールは、右足の前に置かれる。ここで相手にうまく寄せられると、タテへのパスコースは切られる。横か後ろに限られてしまう。ボランチにつけるか、左センターバックへ戻すか、ＧＫまで下げてしまうか、という選択肢だ。

　バーレーン戦のプレーを調べてみると、比嘉からもっとも多くのパスを受けたのは、左ボランチの扇原だった。次に多いのは左ワイドの原口だが、ディフェンディングサードやミドルサードでのパスが半分以上を占める。アタッキングサードでのパス交換や、崩しを意識した原口へのタテパスといったものは、非常に限定的なのである。右足メインのプレースタイルが、ビルドアップや崩しの局面での選択肢を狭めているのだ。

　コンパクトな現代サッカーは、サイドバックに攻撃の起点作りを求める。タッチライン際へ抜け出してのクロスや、カットインからのフィニッシュだけでなく、ＦＷへクサビを入れたり、スルーパスを供給したりすることで、チームの攻撃はバリエーション豊かになる。ポゼッションに実効性が伴ってくるのだ。

　バーレーン戦の比嘉は、左サイドのタッチライン際を有効活用できていなかった。それでも何とか切り抜けられるのは、アジアまでである。世界と向き合うこれからは、ウィークポイントを徹底的に突かれる。ボランチへの横パスさえも、遮られてしまうかもしれない。ロンドンでの成否は、ディティールをどこまで磨き上げられるかにかかっている。