「キリンラーメン」。一度みたら忘れられないインパクトのあるパッケージ!

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最近では新たなご当地ラーメンも次々に誕生しているが、すでに50年近く前から地域限定で人気を集めていたご当地ラーメンがある。一時は幻ともいわれた「キリンラーメン」だ。

キリンラーメンは昭和40年に愛知県西三河地方碧南市を中心に発売された即席ラーメン。全国的にはまだそれほど知られていないが、地元では知らない人がいないほど有名なものだという。

実はこのキリンラーメン、平成7年に販売量の減少を理由に一時生産を休止。すると、「これしか食べていなかった」「ぜひ、また食べたい」と復活をのぞむ声が殺到。平成14年に1回限定で復活させたところ、予約のみで完売。「手に入らなかったのでまたやって欲しい」という多くの声に応えて、再度生産。すると今度は、「また食べたい」という声が押し寄せ、「あと1回だけ」を何度も繰り返し、ついには生産体制を整備することに。平成22年からは全国販売も解禁になった。

「地元の方は他地域の知らない人に営業マンより熱く語ってくれる商品です」
と語るのはキリンラーメンを販売する小笠原製粉株式会社の担当者。地元ではいわばソールフード的存在らしい。

復活させるにあたっては、地元の熱い要望で復活するため、地元に貢献できる商品にしようと決意。まずは原料の見直しをおこない、主原料の小麦を外国産から国内産に変更。さらに、小麦を生産している生産者が米・麦・大豆をローテーションで作付けしているため、大豆(豆乳)や米(米粉)も使い始めた。
「小麦粉を水のかわりに豆乳で練り込み、米粉も入れています。麺をゆでたときに豆乳が溶け出しまろやかになり、米粉をいれることで生地がもっちりします」
また、パッキング作業の一部は地元の授産所・障害者施設に委託しているという。

ところで気になるのがユニークな商品名。なぜ、キリン?
「キリンは首が長く、子供から年配まで大変親しみやすい動物です。末永く、親しみやすい商品になればと名付けました」

レトロなムードのパッケージはキリンのイラストが目を引くが、同時に「家庭用ラーメン」という謎の表記も目立つ。この意味は?
「ラーメンは戦後の屋台から庶民に広まったもので、“ラーメン=屋台で食べるもの”でした。昭和40年ごろ、まだ一般の方は即席ラーメンを知らなかったので、“家庭でも食べられるラーメンですよ”と伝えるために表記したんです」
実はパッケージのデザインは当時のまま。とくに業務用があるわけではないそうだ。

味は3種あり、やはり一番人気は昭和40年から変わらないしょうゆ味(オリジナル)。1年前から販売しているみそ味としお味も好評だという。私もしょうゆ味を試してみたが、初めて食べるのにどこか懐かしく、まさに家庭の味といった感じ。あっさりしていて口当たりも軽く、「子どもに食べさせても安心」という主婦の声や「普段ラーメンは食べないけれど、これなら食べられる」という年配の方の声にもうなずける。

基本の即席ラーメンとして食べる以外にも、焼きそばにしたり、鍋のシメにいれたり、楽しみ方はいろいろ。意外なところでは、おでんの残り汁で煮るのもオススメだとか。

商品は生協や一部スーパー、地元の農協直売所、お土産店、雑貨店などで販売中。昨年から同社のオンラインショップでの購入も可能になり、ウワサを聞きつけた全国各地のファンから続々と注文が入っている様子。価格は6袋入り500円(税込、スープ付)。巷の即席ラーメンに比べて決して安いとはいえないが、そこはいろいろな想いの詰まったこだわり商品であるがゆえ。

シンプルな味は今食べると逆に新鮮。一度食べるとクセになりますよ。
(古屋江美子)