３月14日のバーレーン戦は、引き分け以上で五輪出場が決まるゲームだった。負けても僅差なら、首位を確保できそうである。条件はきわめて有利だった。

僕自身は楽観的ではなかった。

４−２−３−１の１トップで、大津が機能するのか。彼にポストワークができるのか？　扇原は左ひざにサポーターを巻いているが、フィジカルコンディションはどうなのか。不安を出発点に、思考が回転している。

ところが、バーレーンは違うのだ。彼らの立場から見た日本は、４大会連続でワールドカップと五輪に出場している強国だ。

「日本は独自の強みを持っている。勝つのはとても難しいチームだ」

試合前日の公式記者会見で、バーレーンのピーター・ジョン・テーラー監督はこんな話をしていた。試合後には「今回の予選では、日本とのアウェイゲームが一番厳しいものになると思っていた」と明かし、「日本の実力のほうがバーレーンより上だった」と敗戦を認めた。

試合前に僕が感じていた不安など、内向きなものでしかない。バーレーンにとっての日本は、あくまでも勝つのが難しい相手だった。

４大会連続で予選を突破してきた歴史をまえにすると、日本の選手たちは責任感を覚える。予選突破を最低限の目標ととらえる。

対戦相手は畏怖を覚える。日本の誰かが出場停止でも、ケガ人がいても、「日本は強い、簡単には勝てない」という思いで臨んでくる。プロ化へ踏み出す前の我々が、韓国や中東勢に抱いていたものと同じ種類の気持ちを、対戦相手が抱くようになっているのだ。

アテネの予選でも苦しんだ。北京行きも大変だった。それでも歴史をつないできた意味は、こうして予選を突破するたびに大きく、重くなっていくのだろう。３月14日の勝利も、数年後に再び価値を持ってくる。