俺たち、ナナロク世代!

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「ナナロク世代」という言葉がある。1976年前後に生まれたネット企業家やエンジニアのことを指す言葉であり、該当する人物としては、mixi創業者の笠原健治氏、2ちゃんねる管理人のひろゆき氏、チームラボ創業者の猪子寿之氏などが挙げられる。

このナナロク世代は、あくまでも1976年「前後」に生まれた人たちの総称であり、1975年や1977年に生まれた人も、「ナナロク世代」でまとめられている。例えば上記の笠原氏は1975年生まれだが、ナナロク世代にまとめられている。

これは例えるならば、「息子と誕生日が近いので、息子の誕生日にまとめてお祝いされたお父さん」の心境に近いものがあり、1975年生まれ、1977年生まれの人たちとしては何となくしっくり来ない部分もあるのではないだろうか。この、世代の呼び方に関する微妙な不公平感について、考えてみる。

筆者が思うのは、「ナナロク世代」が採用された理由として、社会背景もさることながら、「ナナロク」という字面の良さ、響きの良さがあったのでは、ということである。例えば、1983年にトヨタ自動車から発売されたスポーツクーペは「ハチロク」という名前であり、「ナナロク」と響きが似ている。ナナロク、ハチロク、ヨコハマ、ヨコスカ、ほら、どれも何だか雰囲気が似ている(そうでもない?)。

これに関し、マーケティング専門誌「宣伝会議」の編集長である谷口優さんに、「ナナゴ世代」「ナナロク世代」「ナナナナ世代」の3つの言葉を、コピーライティングの視点から比較していただいたところ、以下のような意見をいただいた。

「『ナナナナ』は、同じ言葉が続いて、発音しづらすぎる。『ナナゴ』は発音しやすく、記憶しやすいですが、「ナナゴ」という言葉をパッと聴いたり見た感じから、数字の「75」が想起されづらい。何のことを表現しているのかが瞬時に伝わらないというコピーとして致命的な問題があります。

これらと比べると、 ナナロクは発音しやすく、かつ、パッと聴いたり見たときに数字の7と6の組み合わせであることが想起されやすく、この言葉を通じて伝えようとしていることが伝わりやすい言葉だと思います。

広告コピーの字面や響きにルールがあるわけではないですが、そもそも、その役割は『認知』され、最終的に『記憶されること』にあります。どんなに耳馴染みがよくて覚えやすくても、瞬時にその言葉を介して伝えようとする意味が伝わらなければ、コミュニケーションツールとしてのコピーの役割を果たせていないことになりますから、その意味で、ナナロクはナナゴ、ナナナナよりもコピーとして優れていると言えると思います。」

ということで、やっぱりナナロク生まれの人は、コピーライティング的に若干得をしている人たちであるといえるのではないだろうか。

しかし、谷口さんいわく、「ナナロク世代という言葉が普及した最も大切な理由は、実際にその世代に活躍している人たちがたくさんいるということです。どんなに字面や響きがよくても、当然ながら中身が伴わなければ、言葉は伝播しないものです」とのことであり、やっぱり人あってのナナロク世代なのであった。

ちなみに、筆者は1981年生まれだが、最近はナナロク世代と同じノリで、「ハチイチ世代」という言葉もあるようである。コピーライティング的には、「81」を想起しやすい言葉であるようにも思うので、この言葉をさらに普及させるべく、筆者も場末の有閑ライターとして、がんばっていきたい。
(エクソシスト太郎)