12月25日に行なわれた、全日本大学サッカー選手権の準決勝を取材した。「インカレ」と呼ばれるこの大会を取材するのは、ほぼ20年ぶりになる。

ゲームを観ていくと、Jリーグとの違いに気づかされた。反則が少ないのだ。判定基準は変わらないはずだが、Jリーグなら笛が吹かれてもおかしくないコンタクトプレーが、かなりの確率でノーファウルと判断されていた。
反則を主張する選手はいるし、ベンチが反応するシーンもある。それでも、選手が主審へ執拗に詰め寄るとか、監督やコーチが副審や第4の主審に抗議する場面はなかった。

世界と日本の違いに、インプレー時間の長さがある。スペイン代表やバルセロナが絡んだゲームは、少なくとも60分以上の、長ければ70分以上のインプレー時間を弾き出す。ゲームが止まる場面が少ないのだ。
動いている時間が長ければ、そのぶんだけ活動量は多くなる。心身ともに疲労は増す。バルサの選手たちが優れているのは、そうしたなかでもプレーのレベルを落とさないところにある。パスワークが息切れしないのだ。

インカレに話を戻そう。
なかなかファウルをとってもらえないのであれば、選手はコンタクトプレーで負けないようにするしかない。バランスを崩しかけても踏み止まる。倒れそうになっても、前へ出ていく意思を示す。審判を頼りにしないように心がけていけば、個人レベルではコンタクトに強いプレースタイルが身につき、ゲームそのものはインプレー時間が長くなる。

ファウルをうまく誘うのも、サッカーの技術のひとつである。ファウルを受けたあとの時間の使いかたも、勝敗に影響をもたらす要素に含まれる。
ただし、そうした駆け引きはあくまでもケース・バイ・ケースで持ち出されるものだ。負けているゲームでは意味をなさない。

何よりも、インプレー時間を延ばすように働きかけることで、選手のスキルは上がっていく。心身ともに疲れを感じたなかでのプレーに磨きがかかる。ゲームが決定的に動くことの多い終盤に、しっかりと戦える選手になる。それこそは、国際舞台で結果を残すための大切な要素だ。

ファウルに頼らないとか、抗議をしないという行為は、学生らしいスポーツマンシップを連想させる。「正々堂々」という四文字が頭に浮かぶ。
アマチュア的なその正直さが、国際舞台では裏目に出ることもある。しかし、狡猾さではなくタフネスさで対抗したほうが発展的だ。スペインが牽引する時代の潮流にも合致する。

この日のゲームを担当した主審が、意図的にファウルを取らなかったのかどうかは分からない。どちらにしても、ゲームは規律を失わず、ケガ人が出ることもなかった。そのうえで、インプレー時間が長くなったのだから、決して悪いことではないだろう。

ここ数年の大学サッカーは、Jリーグで即戦力となるタレントを輩出している。今年8月のユニバーシアードでは、日本が3大会ぶり5度目の優勝を果たした。
学生スポーツならでは「スポーツマンシップ」が、プレー時間の長さにつながっているのか。それによって、大学サッカーが再び地位を高めてきたのか。まずは来年1月5日に行なわれる、明治対専修の決勝戦を観に行こうと思っている。

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