シリア戦を終えて、U-22日本代表を巡る話題は大津祐樹で一色に染まっている。
唯一の海外組として参戦した今回の2試合で、大津は2戦連発の結果を残した。清武、原口、山村らが不在のなかで、勝利を引き寄せる立役者となった。救世主として取り上げられるのも当然かもしれない。

試合内容はどうだったのだろうか。　
当面のライバルとなるシリアを下したのだから、結果には及第点をつけられる。1-1と追いつかれたあとに2点目を奪う展開も、精神的な逞しさを感じさせるものだ。

ただ、首をひねりたくなることもあった。
75分に1-1とされた日本は、その直後に直接FKを得た。シリアはふたりの選手がカベを作り、ペナルティエリア内に6人、ペナルティエリアのすぐ外にひとりが帰陣した。前線に残っているのはひとりだけである。

それに対して、日本は何人の選手がペナルティエリア内に入っていったか？
濱田、鈴木、大津、永井の4人だけである。ペナルティエリア外で3人の選手がセカンドボールを待ち構え、実際に山口がクリアをシュートへつなげたが、そもそもクロスに飛び込んでいく人数が少なかったのではないか。

82分のFKでは、5人の選手がペナルティエリア内で待ち構えた。ところが、濱田と鈴木の両センターバックは上がっていない。空中戦でもっとも期待できる長身のふたりが、自陣にとどまっていたのである。
シリアはオマル・アルスマを前線に残していた。同点ゴールを喫した背番号10の背後には、鈴木がピタリとついていた。2点目を与えてはいけないいう警戒心が、強く働いていたのだろう。

とはいえ、残る9人のフィールドプレーヤーは、すべて自陣に戻っていたのだ。オマル・アルスマが気になるとしても、FKを蹴った酒井と鈴木の2枚で十分に対応できる。濱田まで自陣に残る必要はない。センターバックのどちらかひとりは、相手ゴール前へ出ていけたはずだ。

そうかと思えば、2-1とリードした直後のＦＫで、鈴木と濱田が揃ってゴール前へ上がっていく。75分、82分のFKと異なり、ペナルティエリア右角で得たこのFKはゴールを直接狙えるものだった。誰かに合わせる可能性は低い。

果たして、キッカーの扇原は自らゴールを狙った。二人のセンターバックが上がっていくことで、シリアのGKに警戒心を募らせることが狙いだったのか？「中に合わせてくる」と思わせたかったのか？　意味のない攻め上がりとしか理解できなかった。

後半ロスタイムの左CKも同様だ。
残り時間はあとわずかである。3点目を奪うのではなく、1点のリードを守りきることが何よりも優先される時間帯だ。

ここでまた、鈴木と濱田が上がっていくのである。センターバックを上がらせる必要はないし、ショートコーナーで時間をかければいい。それなのに、キッカーの東はさほど時間をかけることもなく、ごく普通に蹴ってしまった。彼に近づいていく選手もいなかった。

時間を稼ごうという発想を持った選手は、ひとりもいなかったわけである。3点目を奪いにいこうとする意欲的な姿勢、などという表現は当てはまらない。無謀なトライというべきだ。

1点を必要とするリスタートで、空中戦に強いセンターバックが上がらない。1点を守るべき時間で、センターバックが上がっていく。あまりにもチグハグである。状況判断が不適切と言わざるを得ない。

新しいタレントが台頭し、チームは結果を残した。表面的には申し分のないゲームだが、細部を突き詰めると粗さが目につく。相手によっては致命傷となりかねないスキが、ところどころに見えるのだ。シリアとの全勝対決を制してグループ首位に立ったとはいえ、五輪への道のりはまだまだ細く険しい。

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