11月は二つの大切な予選が控えている。フル代表のブラジルW杯3次予選と、U-22代表のロンドン五輪最終予選だ。

11日のタジキスタン戦と15日の北朝鮮戦に臨むフル代表のメンバーに、ザッケローニ監督はU-22の清武と原口を招集した。U-22代表は22日にアウェイのバーレーン戦を控えているが、彼らはフル代表に専念することになった。

メンバーとあわせて発表されたスケジュールによれば、フル代表の帰国は16日となっている。U-22代表は、17日に中東へ向けて出発する。カレンダーの上では、清武と原口は二つの予選に出場できる。

しかし、サッカー協会の原博実技術委員長は、「日程的にも、彼らの体力的、精神的にも、両方に出場するのは難しい」と説明し、バーレーン戦には帯同させないことを明らかにした。その一方で、W杯予選で出場の可能性が少ない権田と酒井宏は、フル代表のメンバーから外れている。

9月の2試合で攻撃を活性化した清武は、フル代表に欠かせない人材となりつつある。試合途中から香川をトップ下へスライドさせるオプションを想定しても、ピッチに立つ機会はあるだろう。

原口はどうか。清武に比べると、出場の可能性は低そうだ。U-22世代のふたりについて、ザッケローニ監督は「試合に出場するか否かに関わらず、A代表とともにすることで成長を促したい」と話しているが、どちらかと言えば原口へ向けられた言葉と理解できる。

では、彼らを欠くことになるU-22の攻撃陣はどうなのか。8月10日のエジプト戦が参考になる。清武と原口を欠いたこの試合では、大迫が4-2-3-1の1トップを務め、左から永井、山田直、東が「3」を構成した。

中盤の2列目には、昨年秋のアジア大会に出場した山崎、水沼、登里らも控えている。10月のトレーニングキャンプに招集された金崎も、「3」の人材として期待される。清武と原口の不在を前提とした準備は進められており、彼ら抜きでも攻撃のレベルは保てるとの判断が下されたのだろう。

22日のバーレーン戦はアウェイゲームだ。勝ち点3を目ざしながら、引き分けも視野に入る一戦である。それもまた、権田と酒井宏がU-22に、清武と原口がフル代表に招集された理由にあげられる。前後半を通して優先されるのは、ディフェンスの安定感だ。

2004年のアテネ五輪最終予選が思い出される。アテネ行きの切符は、UAEと日本でのダブルセントラル方式で争われた。チームを率いる山本昌邦監督は、UAEでの第1ラウンドに大久保を連れていかない英断を下している。得点源をメンバーから外したのだ。

ジーコ監督率いるフル代表に選ばれていたため、大久保はUAEラウンドを想定した暑熱対策のキャンプに参加できなかった。コンディションに不安を抱えていたのである。それならば、国内でじっくり調整してもらい、日本ラウンドで爆発してもらおう、というのが指揮官の狙いだった。

果たして、大久保は日本ラウンドで3ゴールをマークした。「UAEの暑さでヘバっているようなところはないし、万全の体調で臨んでくれる」という山本監督の読みが、見事に的中したのである。

11月22日のバーレーン戦から5日後、日本はシリアとのホームゲームを戦う。16日に帰国している清武と原口に、コンディションの不安はない。バーレーン戦に出場できなかったことで、モチベーションも高まっているだろう。かつての大久保のような活躍ができる。

もちろん、バーレーン戦で勝ち点を積み上げてくることも大切だ。最低でも引き分け以上の結果を持ち帰り、シリアを迎え撃ちたい。今回のU-22は、U-20ワールドカップ出場を逃した二つの世代で構成されている。当時の悔しさをいまも胸に秘める彼らの地力が、敵地でのバーレーン戦で問われる。

※毎週金曜日配信のメールマガジンでは、サッカー小説「コラソン」や、昔の取材ノートから回想する「昔の現場・むかしのだいひょう」なども連載しています。こちらもお楽しみにください。