家路を急ぐ脚を写した雨の夕暮れ!日常をアートまで昇華させた写真展【NEXT GENERATION】
写真には、見慣れた景色に隠された非日常が映し出されることがある。

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」で現在開催中の「東雅美写真展『DANCE』」は、日常から非日常を写し出した、ドキドキする写真展だ。

普段は見過ごされている景色や何気ない仕草が、写真家のレンズを通すことでアートへと昇華していく。

雨の日の夕暮れ、家路へ帰る人、デートへ向かう人、人々が行き交う街で、「1本の脚」がアートのように浮かび上がってくる。
ネオンの反射と雨に路面が奏でる光のハーモニーの中、このうえなく美しい「1本の脚」が見る者を魅了する。

この作品を撮影し続けている東雅美さんに、写真へのこだわりを伺った。


■写真教室の課題から始まった雨の夕暮れ撮影
「DANCE」は、2010年、日本最大級の写真フェスティバル「関西御苗場」でRING CUBE賞を受賞したことで脚光を浴びた作品だ。

写真教室の課題である「雨」の撮影で、このアート作品は産声をあげた。
「仕事が終わってから撮りに行くので、どうしても夕方になってしまいます。それで、雨の日の夜に撮影することになったのです。雨の日の夜って、あまり撮る人がいないと思うのですが、そこを逆手にとって、雨の夜にしか撮れない写真を撮ろうと思って取り組んだのが始まりです。」

「雨が降った地面に光や人がきれいに反射しているのを見て、最初は建物や街を歩く人を撮っていたのですが、もっと動きが欲しいと思うようになりました。動いている部分は人の脚だったので、そこをクローズアップしていったのです。そして最終的に脚の写真になりました。」

それ以降、雨の日の夕暮れ、街を歩く人の脚を撮影するようになっていったという。
雨の夕暮れは、写真撮影にはおよそ不向きだ。普通は避けるシチュエーションとなる条件を作品に昇華することで、独走的な作品作りへと繋がっている。

■脚の動きを見せたい
撮影時は、男女区別なく撮影しているという東さんだが、ヒールの女性の方がきれいに見えるので、選ぶのはヒールの女性が多いという。

「見てもらいたいのは脚の動きというのでしょうか、シルエットの美しさですね。」
という東さん。
作品に映し出される脚は、1本の脚にフォーカスし、一方の脚は大きくぶらすか、消し去っており、あたかも1本の脚が街の中のスポットライトでダンスをしているようだ。

東さんは、「動きを見せたかったから」と、「1本の脚」に見える作品へ傾倒した理由を語ってくれたが、それが彼女だけがとらえたアート作品となったといえるのかもしれない。

この撮影で、さすがに脚フェチではないが普段から脚を見るようになったという。

■撮影チャンスは、一瞬、わずかな時間
写真撮影には苦労がつきものだが、「DANCE」の撮影は、かなり厳しい。
東さんによると、「撮影時間はだいたい1時間から1時間半ぐらいです。仕事が終わって、いつも撮影している場所の照明が消えるまでの短い時間です。」
また、「撮影中は、ずっとファインダーを覗いていて、脚が入った時に撮るんです。遠くから人が来るのを見て、構えていたこともあるのですが、そうすると気付かれて別の道へ方向を変える人もいるんです。だから、最初からファインダーを覗いていて、狙っていないように見せつつ、脚が入ったら撮るようになりました。」

撮影は雨の日なので、ずっと同じところに座っているのは寒く、辛いそうだが、雨が降ると「今日は撮れるぞ。」とテンションが上がるという。

とはいえ、ただ雨が降ればいいというわけではないそうだ。
「朝から雨だとみんながレインブーツになってしまうので、お昼から雨という予報の時に、カメラを持って出かけます。」と、かなり限定された条件をクリアして撮影してきたそうで、天気予報を見ながら撮影の計画を立てているのだそうだ。

■写真教室が写真の世界を変えた
東さんが、写真を始めたのは2000年で、一眼レフカメラを買って風景や花を撮り始めた。
「いままでお花とか風景とか、きれいなものをきれいに撮るようにしていたのですが、なんとなくそうじゃないものを撮りたくなって。自分らしいもの、もっと表現の幅を広げたい」
こう思って、2008年に写真教室に通い始めたことが東さんの世界を変えていく。
「写真での表現の幅が広がりました。みなさんが撮っていらっしゃる写真を見ると、様々な表現方法があり、こんな表現もありなんだと思えるようになった」という。

今回の写真展も、写真教室の先生に聞いて出展した、2010年の写真フェスティバル「関西御苗場」でRING CUBE賞を受賞したことから実現した。

■脚フェチが悦ぶ? 「DANCE」の今後
東さんは、今後の「DANCE」の行く先を考えている。
「これまでは、同じ場所での撮影だけでしたが、他の場所や時間、モデルや靴などにこだわったロケーションでの作品作りをしてみたい。」

1本の脚が奏でるアートが、さらに美しく飛躍する、そんな東さんの世界に期待したい。

東雅美
1977年 兵庫県生まれ
2008年11月より波止場写真教室に通う。2010年10月、「関西御苗場」にてレビュアー賞(RING CUBE/B GALLERY)を受賞。写真を木下アツオ氏に師事。

NEXT GENERATION東雅美写真展『DANCE』
主催:株式会社リコー
期間:2011年10月5日(水)〜2011年10月17日(月) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:03-3289-1521
開館時間:11:00〜20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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