9月6日のウズベキスタン戦は、歓喜ではなく安堵を、あるいは落胆にも似た物足りなさを運んできたに違いない。

試合後のミックスゾーンでは、「最低限の勝ち点1」というフレーズをあちこちで拾うことができた。取材陣のトーンも同じだった。清武が登場した後半開始の4-2-3-1で最初から戦っていれば、十分に勝機はあったという空気に満ちていた。

阿部をボランチで起用したザックの采配は、意図としては理解できる。ウズベキスタンには過去7戦して一度も負けていないが、タシケントでのゲームはいつも難しいものになる。

デコボコのピッチは日本のパスサッカーに不向きで、地元ファンのすさまじい歓声がピッチを覆い尽くす。文字どおりアウェイの雰囲気に包まれるのだ。ザックでなくても、経験豊かな選手を使いたくなる。

大型で力感溢れるウズベキスタンの攻撃は、分かっていても圧力を感じるものだ。阿部の起用が少なからず守備に混乱を招いたのは間違いないが、だからといって彼だけの責任ではない。前半の攻撃から日本らしさが感じられなかったのも、長谷部ひとりに原因を押し付けられるものではない。

「3次予選の6試合で、今日が一番難しい試合になると思っていた」と長谷部は振り返るが、いつもどおりにいかないのがアウェイゲームである。とりわけここタシケントは、アジアのなかでもとびきりタフな環境だ。ザックの戦略がハマらなかったのは事実だとしても、勝ち点1をつかんだのは評価できる。

勝てなかったという思いが募る一方で、負けなくてよかった一戦でもある。
日本が1-1に追いついた直後の62分だった。日本の左ショートコーナーをしのいだウズベキスタンが、カウンターを仕掛けてきた。守備の人数は揃っているにもかかわらず、ゴール前へ走り込んだジェパロフにスルーパスを通されてしまう。先制点を決めていたウズベキスタンのキャプテンは、得意の左足でシュート態勢に入る。

「パスを出した選手がボールを持った時点で、8番 (ジェパロフ) の動きは見えていた。真ん中からだったので、コースを消すことだけを考えていた」

コースを素早く限定したGK川島のシュートストップが、日本を救ったのだった。同点に追いついた直後のこのシーンで、再び突き放されていたら。試合の流れを引き戻すのは難しかっただろう。価値あるビッグセーブだった。

同点に追いつく直前にも、川島は1対1をストップしている。ペナルティエリア左からフリーで抜け出してきたカパーゼのシュートを、冷静に処理したのだった。こちらは同点ゴールの下地となったセーブである。

さらに付け加えれば、前半17分の対応も見事だった。日本の左サイドでサイドチェンジのパスを受けたカルペンコが、ダイレクトでクロスを入れてきた。シュート性のクロスが、川島の頭上を鋭く襲ってきた。

「もしかしたらダイレクトで入れてくるかもしれないとイメージしていた。来るな、とは思っていました」

バックステップしながらディフレクトでしのいだこのシーンも、後半の反撃につながったと言えるだろう。ここでもし追加点を許していたら、ウズベキスタンの勢いがさらに加速していたのは想像に難くない。

チームメイトに安心感を、対戦相手には威圧感を与えるのは、優れたGKの条件と言っていい。敵地タシケントでつかんだ勝ち点１は、これから重みを増していく。チームを敗戦から救った川島こそは、ウズベキスタン戦のマン・オブ・ザ・マッチである。

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