チームの柔軟性を重視した選考……8月25日、アルベルト・ザッケローニ監督はＷ杯3次予選のメンバーを発表した。チームは8月29日に集合し、9月2日に朝鮮民主主義人民共和国 (北朝鮮) を迎え撃ち、4日後にはアウェイでウズベキスタンと対戦する。

チームの「幹」はこれまでと同じである。スタメンを選べと言われれば、8月10日の韓国戦の11人を思い浮かべる。おそらく誰もが同じだろう。札幌ドームで宿敵を撃破したゲーム内容を考えれば、あえてメンバーをいじる必要はないというものだ。長友佑都を欠く左サイドバックは、駒野友一を当てはめればいい。そのうえで、ザックは真剣勝負にふさわしいリスクマネジメントをしている。

今回のメンバーの論点は、中村憲剛の代表入りにある。そろそろベテランと呼ぶにふさわしい30歳は、アルゼンチン、韓国と対戦した昨年10月以来の復帰となった。

代わって招集外となったのは家長昭博だ。6月のキリンカップと先の韓国戦から判断すれば、ザックは家長にボランチとしての適性を見出そうとしていたことが分かる。しかし、本来のポジションでないことや出場時間の短さが重なり、家長はいまひとつ特徴を発揮できずにいる。リーガ・エスパニョーラがストで延期され、ゲームから離れていることもザックには気がかりだったかもしれない。

そこで浮上したのが中村憲である。「クオリティがあり、経験豊富で、パスの精度が高い。グループのなかで協調できる。真のプロフェッショナルだ」と評価するMFに、ザックは遠藤保仁と長谷部誠のバックアップとしての期待を寄せているのだろう。攻撃的な資質も備える中村だけに、4-2-3-1の2列目で起用することも可能だ。

8月の韓国戦から復帰した阿部勇樹も、引き続きメンバー入りした。彼もまた、ボランチの層を厚くする人材だ。同時に、サイドバックやセンターバックもこなす "守備のジョーカー" でもある。

09年6月にウズベキスタンで行われた南アフリカＷ杯最終予選に、中村憲は先発出場している。阿部も後半途中からピッチに立った。アジアの舞台での豊かな経験値も、彼らの存在を際立たせる。

敵地ウズベキスタン入り後は、新たに選手を招集するのは事実上不可能だ。手元にいる23人であらゆる事態に対応しなければならず、複数のポジションを消化する選手がいることで、チームの柔軟性を高めることができる。そうしたことを踏まえると、南アフリカW杯に出場した中村憲と阿部はメンバー入りにふさわしい。

8月の韓国戦までの流れを踏まえつつ、W杯予選という舞台やアウェイの環境を意識した選手を加える。原口のような若い選手も迎える。代表監督の経験を持たないザックだが、彼の選考は明快だ。監督就任からの一年で「チームは自信を持った」とザックは語るが、他ならぬ彼自身も手応えをつかんでいるに違いない。

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