■漫画家になれるかどうかは運次第

『…赤羽』はケータイ配信のときから身内の評判はよかったんですけど、いろいろな媒体で触れてもらえるようになったのは単行本になってからです。それでもいまだに部数は大したことなくて、6巻でようやく累計10万部に届いたくらい。売れてないんだけど、なんか売れているような空気だけはあるみたいで(笑)。

 ネタはまだまだあるんですけど、最近さすがに疲れてきましたね。何がキツいって、巻を重ねるごとにかかわっていかなきゃいけない人たちが増えていくわけです。一生懸命演技して、社交的に振る舞ってますけど、本来、僕は人づき合いが得意なタイプじゃない。以前は、居酒屋もスナックも初めての店だと緊張しまくり、何をどうしていいかわからずテンパってました。決して、ただお気楽に描いているだけではないんですよ。

 今はほとんど緊張しませんし、店や客のタイプによってどう対処すればいいかもすぐわかりますけど、それはすべて場数を踏んだからでしょうね。場数を踏んで初めて見えてくることがある。割と何事も(笑)。

 昔は賞にさえ引っかかったら漫画家になれるんだと思ってましたが、その後、連載を取るためにはネームを描かなきゃいけない。連載したらしたで、単行本を出して売れないと漫画家にはなれない。どんどんゴールが遠くなっていくんです。

 まあ、漫画家なんて運ですよ。どんな題材を描くかということに出会うかも運だし、思いつくのも運。神様、どうかこの運が尽きませんように!

(撮影/山形健司)

●清野とおる
1980年、東京都板橋区出身。1998年、『週刊ヤングマガジン』でデビュー。2001『週刊ヤングジャンプ』で初連載『青春ヒヒヒ』開始、半年で打ち切り。2003年、同誌で連載第2作『ハラハラドキドキ』開始、やはり半年で打ち切り。2007年、ブログが注目を集める。2008年、携帯漫画『東京都北区赤羽』を配信開始。【http://twitter.com/seeeeeeeeeeeeno】


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