7月24日、東北の被災3県を除いてテレビ地上波のアナログ放送が停波された。総務省などへの問い合わせは、25日午後までで22万件を突破したそうで、多数の「地デジ難民」が発生していることは疑いようがない。マスコミなどは「地デジ化の遅れは緊急地震速報などの通達遅れにつながる」と報じているが、「ちょっと待て」と言いたい。

■デジタル放送はデータを展開する必要がある
そもそも、地震警報などの緊急速報を受信するのに、デジタル放送は向いていない。デジタル放送はデータを圧縮して送信し、受信者のテレビが展開して画面に映している。展開時間は機種によって微妙に異なるので、地震速報もこのプロセスを経なければならず、「リアルタイムではない」のである。デジタル放送で、NHKの時報がなくなったのはこのためである。

■数秒の遅れは重大な結果に?
通常の映像信号の場合、デジタル放送での表示は、アナログ放送より1〜4秒遅れるという。緊急地震速報では約2秒になる。ちなみに、携帯電話のワンセグ放送では、約4秒の遅れになる。「たった2秒」かもしれないが、実は、この差はあなどれない。2秒あれば机の下に隠れるのは可能だし、ガスの元栓などを閉めるための「最初の一歩」が違ってくる。防災の観点から、「地デジ化」に対する異論を述べる論者もいるほどだ。

■地震速報は別の解決法が求められる
この意味からも、被災3県で地デジ化を延期したのは、当然の判断であろう。肝心なことは、緊急速報の遅延なしでの放送について、官民が工夫をこらすことである。場合によっては、テレビ放送以外の手段も考えるべきだろう。地デジ化で、防災スペックが劣化することは許されないのである。

以上のように考えれば、地デジ難民は「地震速報を受信できない」ことは確かに問題だが、「地デジ化で速報が遅れる」ことはもっと大きな問題なのである。この点を論じるマスコミが少ないのは、誠に奇異なことである。


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大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
皆さんがデジタル機器の「通」に近づくための情報を、皆さんよりすこし通な執筆陣が提供します。

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