本田の1トップは今大会で成功したが、ギャンブルであったという側面は消えない<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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４年前に時間を巻き戻してみたい。

ドイツＷ杯でグループリーグ敗退に終わった２００６年６月26日、ジーコが代表監督退任にあたって会見に臨んだ。敗因を聞かれたブラジル人指揮官は、「フィジカルの劣勢」を指摘する。相手のパワープレーがボディブローのようになったオーストラリア戦を念頭に置いているのは間違いなく、「体格差の壁を越えることができなかった」と総括した。

「ドイツＷ杯で感じたのは、相手チームとの体格差だった。フィジカルの強い相手とやるときに、最初は耐えられても最後まで続かない。90分間を通して、相手の攻撃に耐えられるようにならなければならない。ただし、これは個人の問題で片づけられるものではなく、若いときから鍛える必要がある。世界と対等に戦っていくには、そういう部分も考えていかなければならないと思う」

では、ベスト16入りを果たした南アフリカのチームは、フィジカル的な資質を４年間で大幅にアップさせていたのか。そうではない。ないのだが、カメルーンやデンマークの力ずくの攻撃を、何とかとして跳ね返すことができた。答えはジーコの言葉のなかにある。

「安定した力をコンスタントに発揮できないことが、日本の課題としてあげられると思う。しかしこれは、経験を積むことでクリアできる問題点だ」

中澤佑二と田中マルクス闘莉王の奮闘は特筆すべきもので、アンカー役の阿部勇樹もディフェンスの安定を促した。チーム全体の集中力と規律も評価されるべきだろう。そうした要因の下支えとなったのが、４年前の逆転負けだった。残り８分から失点を重ねたオーストラリア戦の経験を、南アフリカのチームは自分たちの財産として生かしたのだ。

同時に、対戦相手のコンディションがいまひとつだったことは見逃せない。カメルーン、デンマーク、パラグアイは、いずれもトップフォームにほど遠い状況だった。

その理由のひとつに、試合会場の３分の２が標高１５００メートル以上の準高地という特殊な環境があげられる。環境適応に対する日本協会の準備は改めて評価されるべきだが、換言すれば「環境を味方につけたベスト16入り」である。世界のベスト16入りを果たしたからといって、世界のベスト16に安定して入る力がついたわけではない。

06年８月９日に行われたトリニダーゴ・トバコ（Ｔ＆Ｔ）戦に招集された18人のうち、南アＷ杯に参加したのが川口能活、田中マルクス闘莉王、駒野友一、長谷部誠の４人だけだったことは、第一回分の総括で述べたとおりである。川口を除いた３人は、南アでレギュラーとしてフル稼働した。この４年間で代表の先発メンバーがそれだけ入れ替わったわけだが、南アフリカＷ杯は失敗と紙一重のところにあった。