インタビュー:阿部芙蓉美「素敵な曲を1曲1曲大切に作りたい」
中谷美紀と荒川良々という異色の組み合わせによる「ハウスメイト」テレビCMにサードシングル「開け放つ窓〜piano version〜」が使用され、ノークレジットにも関わらず大きな反響を呼んだシンガーソングライター、阿部芙蓉美(あべ ふゆみ)。先月8日には“番組が今、最も注目するアーティスト”としてフジテレビ系「僕らの音楽」へ特別出演も果たした彼女が10日、“秋限定EP”として「ワン ナイト トリップ EP」をリリース。同作の1曲目に収録される「trip - うちへかえろ -」は、フランスで国民的大ヒットを記録し、主演女優のオドレイ・トトゥを一躍有名にした映画「アメリ」の脚本家ギヨーム・ローランが放つ、今秋公開の新作映画「ベティの小さな秘密」の日本イメージソングとなっている。
――今作の「ワン ナイト トリップ EP」で作曲を担当されている谷本さんとは、デビュー時からずっと一緒にやられているんですか?
阿部芙蓉美(以降、阿部):そうですね、立ち上げからずっと一緒です。――二人に共通点はありますか?
阿部:共通点は色々とあるような、全然無いような、すごく不思議な二人なんですけど。全然かみ合わない所はかみ合わないし、だけど目指しているものは一緒というか。やりたい音楽とか、求めている音楽はもう本当に面白いぐらいに。色々と話し合いながら目指していく所だったり、元々もっていた要素が一緒だったり、何か合って。共通点は何だろうな?言葉にしにくい。――音楽以外のことについては、全く別々な感じですか?
阿部:そうですね。もう最初から音楽目的で出会っているので。ダラしないと言ったら、ちょっとアレかもしれないですけど。必要最低限の生活をするということで崖っぷちで、ちょっと危ぶまれてる(笑)。――二人で一緒に音楽活動を始める時に、どういう音楽、どういう歌を歌いたい、どういう楽曲を作りたいなど話し合われたことはありましたか?
阿部:皆さんは基本、ジャンルに分けるというか、割とそういう聴き方がポピュラーなのかなという所もあるんですけど、その曲その曲で欲しい要素を素直に採り入れるし、まずジャンルという概念が一番要らないって。でも、メロディが素敵な曲というのはずっと残るし、「メロディが素敵だね」という曲を私も谷本さんも好きでやりたいから、メロディが素敵だったり、もちろん歌詞も、素敵な曲を1曲1曲大切に作りたいという。本当にシンプルというか、いい曲に私も出会いたいし、そういう目的でやり始めて。あとは私の声もそうですけど持っているもの、持っている世界観を最大限に活かす方法とか、あるいは足りないものをプラスしたり、練習して育てていったりという。本当に一番、無理しちゃいけない。無理してカッコつけても音に全部出ちゃうし。一つ一つ着実に、一生懸命やりましょう、ということで、ずっとやっています。――すごく独特な質感のある声質ですが、映像や台詞と同居しても邪魔すること無く、むしろ相乗効果を生み出すので、CMや映画で使用される機会も多いのかと感じていますが、自分自身の声質についてどう思いますか?
阿部:もともと歌をやるやらない関係無く、自分の声って何か変な感じがするじゃないですか(笑)。よくある「カセットテープに録ると」みたいな。私もオーソドックスに小学校の頃とかにそういう経験をしていて、「げっ!」と思ったり(笑)。でも不思議なもので、実際に私も歌い始めたものの、本当に自分で歌を歌って、それが作品になっていくとは「まさか?」と思っていた身なので。「大丈夫なのかな?」とずっと思いながら、今でも時々「あれ?私どうやって歌って」とか「自分の歌って何だったっけ?」って、たまに分からなくって、不安になったりもするんですけど。とは言っても、もう歌い始めて少し時間が経っているし、自分の声ですからね。今できる表現以外にもっと何かあるかもしれないし、絶対に今の状態で満足することはまずないから、できることは何でもやりたいし。歌って、声を出すだけで成り立つとも思ってないし、まだまだ得体が知れないというか、まだまだ甘いかもしれないです。――現状に満足していないということは、すごく健全だと思います。
阿部:健全ですかね?――本当に満足したのなら止めればいいというか、その先その人が成長することは無いと思うので。
阿部:(笑)。なかなか何においても満足してしまうと、そこでね、何か分からなくなっちゃうのかなと。いつも振り返って、考えて「うーん、どうなのかな?」ってなって。何事においても考えていますね。