「カーネーション」吉田結衣のInstagramより

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カーネーション・吉田

 お笑いコンビ・カーネーションの吉田結衣(37)が、バラエティ界で急速に存在感を高めている。「ロンドンハーツ」「アメト――ク!」などの人気番組に相次いで出演し、先輩芸人を相手にしても臆することなく、ハキハキと正論や苦言を口にする姿が注目を集めている。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 吉田が「相席食堂」に出演した際、MCを務める千鳥のノブが、彼女の冷静すぎる態度に苦言を呈し、「吉田はバラエティを引き締めてくるのよ」と発言したことも話題になり、今では「引き締める女」という独自のポジションを確立しつつある。

「カーネーション」吉田結衣のInstagramより

 吉田が世間に注目されるようになった最初のきっかけは、2025年の「キングオブコント」だった。この番組に吉田本人は出演していなかったのだが、お笑いコンビ・レインボーの池田直人が彼女をモデルにした仕切りたがりの女性芸人を演じるコントを披露したことで、SNSなどで吉田のことが話題になり、一躍時の人となった。

 その後、徐々にバラエティ番組にも出るようになり、安定した話術と物怖じしないキャラクターが評判になり、どんどん仕事が増えていった。

 吉田の芸人としての売りは、単に気が強いことではない。番組の中で曖昧に処理されかけたことや、出演者が何となく笑って流そうとしていることを見つけると、それを見逃さず、明快な言葉で指摘する。

 声がよく通り、発音が明瞭で、発言の着地点もはっきりしているため、吉田が口を挟むと、その場にピリッとした空気が流れる。これこそが彼女の「引き締め芸」である。

 しかし、本当に気まずい状況になるわけではない。一瞬だけ緊張感のあるムードになるものの、それがバラエティ番組の本来の明るく楽しい感じとはあまりにも不釣り合いであるために、ギャップによる笑いが生まれる。そこで共演者がツッコミをいれたり、本人がたたみかけるように言葉を重ねたりすることで、その笑いが増幅されていく。

 従来のバラエティ番組では、司会者がこのような役割を担うことが多かった。話が脱線したときに軌道修正をしたり、ボケが弱ければ厳しく処理したりすることで、番組全体の秩序を守るのが司会者の仕事だった。

 ところが吉田は、自分が司会ではなくてもその役割を遂行する。相手の芸歴や立場に過度に配慮せず、「それは違う」「今の言い方はおかしい」と正面から言う。場を和ませるような優しいことを言ったり、自分を卑下して笑いを取ったりせずに、まっすぐに言葉を放つ。その芸風には圧倒的なオリジナリティがある。

使い勝手の良い存在

 吉田は、いわゆる毒舌を売りにする芸人とは違って、誰かの欠点や弱点を一方的に攻撃するわけではない。彼女が主に問題にするのは、言動の矛盾、仕事への姿勢、ハラスメント的な言動などである。そのため、言い方はきつくても嫌な印象を与えない。視聴者にとっても、漠然と感じていた違和感を代わりに指摘してくれる頼もしい人物に見える。

 また、吉田は番組制作側にとっても使い勝手の良い存在だと考えられる。トークの流れが停滞すれば発言して動かし、出演者が内輪の空気に陥れば外側から切り込み、自分が標的になれば毅然とした態度で抵抗して笑いを起こす。

 さらに、恋愛や合コン、料理、健康管理、芸人仲間との人間関係など、本人が提供できるエピソードの幅も広い。「アメト――ク!」で吉田がプレゼンした企画が実現したことは、彼女が誰かにイジられるだけの存在ではなく、自らテーマを発信できる存在であることを示している。

 吉田のような芸人は、若手の段階ではなかなか評価されにくい。強い口調や細かい指摘は、キャラクターが浸透していないうちは、単に怖い、面倒くさいなどと思われがちだ。しかし、長い芸歴によって技術が鍛えられ、周囲の芸人たちとの関係性も蓄積されたことで、ようやく厳しさの奥にある人間味まで伝わるようになった。

 ここまでに時間はかかったかもしれないが、その遠回りによって、現在の吉田には若手には出せない厚みが生まれている。

 吉田がいま注目されているのは、毒舌だからでも、声が大きいからでもない。誰もが空気を読み、角の立たない発言を選びがちな時代に、彼女だけは空気のゆがみを見つけ、それを具体的な言葉にできるからだ。バラエティを引き締めながら独特の手法で笑いを生み出していく吉田は、今のテレビに足りなかったすき間を埋めてくれる貴重な存在なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部