――リバプールも1点を返しましたが、その前の2点で勝負アリといったところでしょうか?

「リバプールの1点はオフサイド気味だったからね。見逃してもらったといったら言い過ぎかもしれないけど、2点リードで残り時間が少ないと、ああいう得点シーンって生まれやすい。で、流れを変えるってほどの重みはなかった。もう終盤だったし、ミランには1点を守り切る力が十分にあったと思う」

――ミランは今回の欧州CLだけでなく、レッジーナ時代にも何度か対戦しています。そのぶん、ミラン寄りの目線で試合を見ていたのでは?

「そうだね。じかに対戦しているぶん、思い入れみたいなものはある。今シーズンはシェフチェンコが移籍して、インザーギのケガやジラルディーノの不調とかもあって、FWの軸が定まらなかった印象が強い。ただ、チームとしての成熟度が高いというか、戦い方がしっかりしていた。抜け目がないチームだなと思う。それだけ経験と能力を兼ね備えた選手が多いってこと。決勝トーナメント1回戦でホームにミランを迎えたとき、最初は4−3−3のようなシステムで来るかなと思ってた。そのほうが、ヤンクロフスキと1対1のシーンに持ち込みやすいから、そのシステムで来て欲しいと思ってた。けど、4−4−1−1のようなシステムだった。つまり、リスクを減らして相手の良さを消しつつ、カカと1トップの2人で点を取れればいいし、取れなくてもまあいいって狙いだったと思う。マンUと対戦したとき、オレがC・ロナウドをケアして、サイドバックと一緒につねに2人で対応するような戦術を取ったけど、同じようなことをミランが、オレに対してやってきた。手堅いなーと思った。C・ロナウドじゃないんだからって…。今回のリバプール戦の前半もあのときと同じような手堅い戦い方をしてたね」

――個人的に印象に残った選手やシーンは?

「選手でいえば、マルディーニとか、印象深かった。現役時代のロベルト・バッジョにも同じような印象を持ったけど、あのレベルでも、年齢は関係ないんだなと。瞬間的なスピードみたいなものは落ちてるかもしれない。けど、そのぶん判断や読みの早さで、相手FWよりも先手を取ってカバーしていたり。いち早く危険なゾーンを察知していたり。それで年齢をカバーするどころか、お釣りがくるぐらいのパフォーマンスができるんだなってあらためて認識した。あと、シーンっていうわけじゃないけど、そのマルディーニやネスタなんかのスライディングのタイミングとか、考えさせられたね」

――というと?

「明らかにスライディングのタイミングが早い。当たりも早いね。日本でプレーしてた感覚でいうと、あまり飛び込みすぎるのは好まれない。日本人のDFだったら、“切り返されたらまずい”ってまず考えてしまうよね。そんなシーンでも、彼らは思いっきり飛び込む。なぜ飛び込むのかというと、まず相手選手のシュート力が高いっていうのがある。それに、切り返されても次のDFが対応に入っていて、少なくとも攻撃を遅らせることができる。で、攻撃側にしてみれば、いったんシュートを仕切りなおすと、やっぱりコースを狙いづらくなる。そういう要素をすべて加味すると、結局、“飛び込め”って結論になるんだと思う。ディテールの話だけど、そういう部分って知っておいて損はないし、たとえば、日本代表などで強豪国と戦うときにも参考になる」