『バ先』『タイパ』『カプヌ』…昭和生まれが「イラっとする」略語は?若者世代の“謎言葉”に大混乱
バイト先を「バ先」、タイムパフォーマンスを「タイパ」などなど、世間にあふれるさまざまな“略語”。その一方で「あまりしっくりこない」「聞いていてモヤモヤする」と感じる略語もあるはず。
そこで『週刊女性』では、昭和生まれの男女500人に「イラッとする略語」というテーマでアンケートを実施。近年見聞きする略語について、思いの丈をぶつけてもらう。
また今回は昭和生まれのコラムニスト・辛酸なめ子さんと、平成生まれのラッパー・Eeveeさんにも話を聞いた。“言葉を扱うプロ”たちは、現代の略語をどう見るのか。
敬意が足りないと思えるものには…
略語は自然発生的に広まることも多いが、テレビやSNSなどメディアをきっかけに浸透するケースもある。
その代表格が「タイパ(タイムパフォーマンス)」だ。映画を倍速で視聴したり、生成AIを使って作業時間を短縮するなど、限られた時間で効率よく成果を出そうとする考え方。しかし、昭和世代からはこんな声が上がった。
「時間短縮ばかり意識すると、かえってミスをして余計に時間がかかるリスクもあるので考えもの」(神奈川県・52歳・女性)、「短い時間でおいしい思いをしようなんて、考えが甘い。懸命に働くことが大事だと思う」(京都府・71歳・男性)など、辛辣な言葉が並ぶ。やはり、遠回りと失敗を重ねて成長していった昭和世代にとっては、相いれない部分があるようだ。
そのほか、ミラノ・コルティナ冬季五輪で金メダルを獲得し、メディアで広く浸透した「りくりゅうペア(三浦璃来・木原龍一ペア)」の愛称に、モヤッとしている人も多数。「人の名前を略すのは失礼」(岐阜県・70歳・男性)や「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と語感が似ていて、イメージが悪い」(北海道・57歳・男性)などの意見も。Eeveeさんも平成世代ながら「りくりゅう」には思うところがあるそうで……。
「敬意が足りないのもありますが、少しひねりがない感じはしますね。略語ではありませんが、メディアで使うなら『ハンカチ王子(斎藤佑樹)』のようにひと工夫してほしい気もします」
『週刊女性』もメディアの一員として、精進したいところだ。
「企業主導の略語」も
「業スー(業務スーパー)」や「まいばす(まいばすけっと)」など、企業名や商品名を略した呼び名が浸透するケースもある。ただ、雑貨店の「スリコ(3COINS)」には「万引きしてる子のような言葉で、あまりいい言葉ではない」(東京都・55歳・男性)といった想像力豊かな意見も寄せられた。
また「ホケミ(ホットケーキミックス)」に対しても「ホケミと言われても、すぐには意味がわからないので省略する必要はないと思う」(千葉県・57歳・女性)などの声も聞こえた。あまりに省略されると、意味が伝わりにくくなる可能性もありそうだ。
なかには、企業側が仕掛けた略語も存在する。日清食品の定番商品「カップヌードル」を略し、CMで使っている「カプヌ」もそのひとつ。
「日清食品のコマーシャルは変てこなものが多い。よく言えば尖っているのかもしれないが、何となく好きになれない」(大阪府・55歳・女性)や「あまりおいしそうな響きではない」(山口県・53歳・男性)、「語感が気に入らない。カップヌードルと呼べばいい」(長野県・52歳・男性)など、散々な言われよう。ちなみに「カプヌ」は「カップヌードル」と同様に登録商標も取得されている。
辛酸さんは「企業主導の略語は定着が難しい」と分析する。
「人気の芸能人やヒットしたモノが略されて呼ばれることも多いですが、それらはファンやユーザーが考え出した略称が多い印象です。嵐の松本潤さんの『松潤』や、先述の『スリコ』もおそらく利用者発信の略称ですよね。
実際の“呼びやすさ”も考慮されているからこそ、定着したのではないでしょうか。その点、カプヌは言いにくいうえに、企業から“流行ってほしい”というゴリ押しのメッセージも感じる。その圧が、ユーザーの反発を招いているのかもしれません」
ゴリ押しをやめるだけでも、使ってくれる人は増えるかも?
何にでも「活」をつければいいの!?
そして平成世代が普段使っている略語に対しても、疑問を呈する声が上がった。
「『メンヘラ』は心に不調を抱えている人を指すにもかかわらず、言葉が軽すぎる」(福岡県・50歳・女性)、「何かあればあの人はメンヘラだと簡単な言葉で片づけられてしまい、いい印象がない」(三重県・54歳・女性)といった、若者言葉特有の“軽さ”に違和感を抱く人も少なくないようだ。
また、推し活ブームとともに急増した「◯◯活」にも不満が集まった。「『ヌン活』。言葉を切るところが変。なんでアフ活じゃないの?」(岩手県・46歳・女性)、「何にでも活をつければよいという風潮が嫌い。アフタヌーンティーの優雅さがこの言葉だと台なしになってしまい、イメージも悪くなる。昔の、もっと手頃な価格のアフタヌーンティーのほうがずっと雰囲気が良かったのに、この言葉が流行ってから値段もつり上がってしまった」(神奈川県・61歳・女性)という恨み節も。
お気に入りのぬいぐるみを愛でる「ぬい活」については「大和田伸也さんが趣味にしていると知った。楽しそうで悪いことではないが、なんでも『活』とつければいいみたいな流れがイヤ。もう少しよい呼び名はないものか」(兵庫県・75歳・男性)などの意見も寄せられている。
どうやら、活動そのものよりも「◯◯活」という命名法に食傷ぎみの人が多いようだ。辛酸さん自身も“略語のカブり問題”を実感しているという。
「私はシール交換をする『シル活』をしているのですが、シルバニアファミリーを集める活動も『シル活』と呼ばれているんです。略語が増えすぎると、意味が重なって混乱しますよね」(辛酸さん)
一方で、こうした若者発信の略語について「高校時代から日常的に使っていたものが多い」とEeveeさんは話す。
「周りの子は『今日遅刻しそうだったからガンダした』なんて、普段から使っていました。個人的には『ガンダ』という響きがあまりかわいくないので使わない派です(笑)」
アンケートではガンダ(ガンガン+ダッシュの略。全力で走ること)について「ガンダムと紛らわしい。略す必要性を感じない」(北海道・57歳・男性)との意見もあった。知っている言葉との認識のズレに、ジェネレーションギャップを感じる人もいるようだ。
アンケートを通して昭和世代の声を聞いたEeveeさんは「言葉そのものを楽しんでみると、印象が変わるかもしれない」と話す。
「私は、ラップを始めてから“言葉遊びは人間の特権”だと感じるようになりました。きっと今、若者の略語を『けしからん!』と思っている方々も、若いころにはいろいろと略していたはず。
若者の言葉を無理に使う必要はありませんが、周りの友人や家族との間だけで通じる略語や造語をつくって遊んでみると、仲間との連帯感も生まれ、世の中の略語にも寛容になれるかもしれないですね」
この世は諸行無常。移り変わる言葉の“今”を略語から楽しんでみるのも悪くない。
取材・文/とみたまゆり
