51歳上司が青ざめた…向上心ある優秀な部下の「まさかの離職」を招いた「意外すぎる一言」
人手不足の現代にとって、「離職」は採用面や業務の効率面などに大きく作用するため、企業としては何としてでも防ぎたいもの。しかし、なぜ人が離職するのか、その要因を知っている人は少ない。『離職防止の教科書』の著書もある経営心理士・藤田耕司氏が、事例をもとに離職の根本的な原因となる「4つの欲求」について解説する。
「もしかすると、あの一言が原因か」
金融関連の会社で働いていたE氏(51歳)には、部下のU氏(31歳)がいました。
U氏はスキルアップを目指して自ら研修に参加するなど、高い向上心を持って業務に取り組んでくれていました。
ある日、U氏から「自分の成長のために何か目標としたらいいことってありますか?」といった相談を受けたE氏。
U氏が普段からよく頑張ってくれており、あまり若手にプレッシャーを与えすぎてもいけないと思い、「君はよくやっている。今のままで十分だよ」と伝えました。
ところが翌月、U氏から離職する旨を伝えられました。
U氏はもっと成長したいと思い、転職活動を始めたら、すぐに転職先が見つかったとのこと。
E氏は「もしかするとあの一言が原因になったのかも」と、気になるものの真相は分からないままです。
人間が根源的に抱く4つの欲求
U氏の離職の原因を考えるうえで、まず人間が根源的に抱く4つの欲求についてお話ししたいと思います。
それが生存欲求、関係欲求、成長欲求、公欲です。
生存欲求は、安心・安全に生きていきたいという欲求であり、現代ではお金が大きく影響します。
関係欲求は、良好な人間関係を築き、人から認められたいという欲求です。
成長欲求は、長所を伸ばし、苦手を克服し、更なる成長をしていきたいという欲求です。
公欲は、人に喜んでもらいたい、社会の役に立ちたいという欲求です。
このうちのどれか1つでも欲求が満たされないと、人は離職を考え始めます。
中でも組織をけん引するような優秀な人材は、成長欲求が強い傾向にあります。
だからこそ優秀なわけですが、「この会社にいても自分の成長はない」「成長に繋がるような新たな経験をさせてもらえそうにない」と感じると離職に向けて動き始めるのです。
先のU氏も成長欲求が強いタイプですが、そういった人は「新たな成長の機会が得られそうにない」と感じると、それが離職の大きな動機となります。
その意味では「「君はよくやっている。今のままで十分だよ」というE氏の一言がU氏の離職の引き金になった可能性は十分にあると言えるのです。
* * *
上記の事例からわかるように、優秀な社員に長く働いてもらうためには、成長の機会を与え続けなければいけない。その必要を知っている経営者の声も交え、引き続き後編記事〈優秀な部下の「まさかの離職」で泣きを見ないために…「給料を上げる」「仲良くする」よりも大事なこと〉で解説する。