パワハラ疑惑でも橋本環奈は干されないと思う理由 パワハラ報道のあったタレントたちに共通する「強み」とは
週刊文春にマネージャーへのパワハラ疑惑を報じられた女優の橋本環奈。SNSなどでは炎上騒動となったが、ライターの冨士海ネコ氏が、「彼女は干されない」と思う理由とは――。
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「昭和のスターっぽい」という言葉は褒め言葉なのか、けなし言葉なのか。豪放磊落(らいらく)で型破り。目を離せないカリスマ性がある人。そういう意味では、橋本環奈さんは実に「昭和のスターっぽい」人である。類まれなる美少女でありながら、酒好きでガハガハ笑う飾らなさ。かといって下品にならず、少女漫画の清純ヒロインの再現もお手の物だ。紅白歌合戦という大舞台の司会も、堂に入った進行ぶりを見せつけた。朝ドラ出演中なのに人気俳優との交際報道が出ても、騒がずドンと構えているのもまた頼もしい。
その橋本さんのパワハラ疑惑を「週刊文春」が報じ、ちょっとした話題になっている。稼ぎ頭のスキャンダルを、事務所は長文で真っ向から否定。「サバサバしている」「年上の男性にも物おじしない性格」は橋本さんの人気の理由でもあったが、パワハラもさもありなんと信じる声も少なからずある。とはいえ、これしきのことで干されるとも思えない。というか、今までパワハラ疑惑が出たタレントたちは、不思議なことになんだかんだ息の長い売れっ子であり続けているのだ。
氷川きよし、菜々緒、田中みな実……今までパワハラが報じられた人気タレントの共通点
氷川きよしさん、菜々緒さん、田中みな実さん。その共通点は、三人ともマネージャーに対するパワハラが報じられたということである。氷川さんは一部事実関係を認め、菜々緒さんや田中さんはノーコメントを貫いた。事実はどうあれ、面白いことに、三人をかばう周囲からの評判は実に似通っている。
それは「ストイック」であり、「よく気がつく」人であるという。あらゆる細かなところに目配りがいくからこそ、仕事の進め方や小さなズレを見逃せない人といえるのかもしれない。マネージャーに対し、氷川さんは手が出てしまったことがあるそうだが、それこそ昭和の時代であれば「仕事熱心な人だからこそ」と当然のように受け入れられ、時には美談にもされていた働き方だったのではないだろうか。氷川さんは「みんなに迷惑がかかるから」そういう行為に出たと、当時の取材に対して弁明している。
もちろんどんな理由があっても、今の時代、暴力はもちろん長時間の叱責もアウトである。それはタレントも事務所も分かっている。でもその一方で、それだけ熱量高く仕事をしているからこそ、他のタレントが追随できない成果を生み出してきた面は否めない。
氷川さんは活動休止期間を経て、風貌も楽曲もこれまでにない変化を見せ続けている。菜々緒さんや田中さんも、有名人との恋愛と露出の高い写真集で注目を集めた後、悪女役や怪演で話題をさらった。普通のタレントなら尻込みするような売り方でも、売れるためなら何でもやりますという開き直った彼ら彼女らの姿は、橋本さんにも通じる「サバサバして肝の座った昭和スター」の特性を思わせるのである。
パワハラを生むのは本人の問題? 事務所の問題? 橋本環奈の事務所の求人に見た「干させない」覚悟
とはいえ人と同じことをやっていても売れないという業界の空気が、パワハラを容認しがちな土壌をつくっていることも確かだ。氷川さんの前事務所の社長も、社員に対する暴行や恫喝が問題視されたことがある。そうした社長の元ではキャパシティーを超えた仕事量が売れっ子に集中しても、「期待の表れ」として正当化されてしまうことも多いだろう。そして前述のようなストイックなタレントたちほど、期待に応えようと手を抜かずに頑張るに違いない。鶏が先か卵が先かという話かもしれないが、売れっ子だから威圧的になるのではなく、本人の限界を超えた仕事量がパワハラ的な言動を生んでしまうこともあるのではないか。
橋本さんの所属事務所は15名の小規模な会社で、彼女が稼ぎ頭である。所属事務所の声明では、橋本さんではなく社長が社員に厳しい指導をすることがあることも認めていた。仮にオーバーワークが原因で人間関係にひずみが生じているのなら、複数名体制でのマネジメントに切り替えるなど、仕組みを変えるしかない。並行して10名ほどの社員募集を行っていることも注目されているが、タレントに割くリソースを増やすためのはず。こんなことで橋本さんのことは「干させない」という事務所の強い意思がうかがえる。
気乗りしない仕事に仏頂面を隠さない、そんな振る舞いは批判されやすい。かつて平手友梨奈さんや山本舞香さんもそれで炎上した。「人間だもん、やる気出ないときもあるよね」と物分かりの良さを示すのが令和の正解と分かっていても、引き受けた以上つべこべ言わずにやれよ、と昭和の反応をしてしまう人がまだまだ多いからだろう。だからこそ、パワハラ疑惑が出ようともがむしゃらにわが道を行くタイプの芸能人への支持は衰えないのではないか。
個人的には、橋本さんには昭和っぽい泥臭さだけでなく現代っ子らしいドライさも感じる。でもそれは他人を突き放すことより、自分を客観視する、プロフェッショナルとしての視線が備わっているがゆえであるように見えた。朝ドラでは平成ギャルを演じている橋本さんだが、昭和のマインドと令和のバランス感覚で、1000年に1人のスターとしての歩みが始まることを期待したい。
冨士海ネコ(ライター)
デイリー新潮編集部