この記事をまとめると

■車酔いは三半規管の刺激によって自律神経が乱れることが原因だ

■アクセルやブレーキなどの急操作は車酔いのもととなる

■目の前のクルマではなく先のクルマの挙動を見て運転するのもコツだ

車酔いをさせない運転とは

 昔、矢田部のテストコースでクルマの性能テストのアシスタントをしていたとき、ある先輩テスターが面白がって助手席のアシスタントを片っ端から酔わせていたのを思い出しました。意地悪とかそういうのではなく、多分その先輩は異常に車酔いに強かったのだと思います。簡単に酔うのが不思議で面白かったのではないかと……。まぁやられるほうはたまったもんじゃありませんが。

 1番効くのはブレーキで、しかもフルブレーキで停止までされたとき。じつは時速180km/hからのフルブレーキングでも180km/h→80km/hくらいまでは大したことはありません。ただし、そのままフルブレーキで停止までされると、効果てきめんで気分が悪くなるんです。

 車酔いの原因は、三半規管が深く関係しているといわれています。三半規管は内耳にあって体のバランスを調整することろ。クルマの揺れや加減速によって三半規管が刺激され、視覚からの情報とのアンバランスが生じると自律神経が失調して車酔いを起こすといわれています。

 一般的な話に戻すと、ポイントは加速度や減速度が変化すると、酔いやすくなる傾向にあります。発進のグイっとくる加速、ブレーキの踏み込みの強さや、ブレーキを離すときパッとブレーキを離してしまう、じつはそんなところに酔う原因があるんです。

 とくに酔いやすい人を乗せるときには、コツとして走り出しをカップホルダーに置いたコップの水がこぼれないような感覚で、滑らかに走り出すことがポイント。

 減速もまず加速していない状態を作ってからゆっくりとアクセルを戻し、そこからジワッとブレーキを踏んで減速Gを立ち上げていく。要するに加速度・減速度をなるべく穏やかにするのがポイント……ということになります。

数台先のクルマを見て予測しておくのがポイント

「それではなかなか止まれないじゃないか」、と思われるかもしれませんが、減速の始めと終わりが大切で、減速中はブレーキの踏力を一定にしてGの変化がなければ、多少強めにブレーキを利かせても大丈夫です。むしろ、気を遣ってブレーキの踏み始めは穏やかにブレーキをかけて、途中から間に合わずに強く踏むほうがよくありません。

 ちなみに、減速Gや減速Gの変化が大きい運転は、近視眼的な運転をする人によく見られます。なので、クルマの流れの先まで意識して加速したり減速したりすると、ぐっとスムースに運転できるようになります。街なかですぐ前のクルマだけを注視していると、どうしても加減速の操作が遅れがちになるのです。

 人間は反応速度が約0.3秒ほどといわれているので、前のクルマがブレーキを踏んでも同時にはブレーキが踏めません。なので、わずかに遅れると、そのぶん強いブレーキが必要になります。

 しかし、先を見て走るようにすると、前のほうでクルマが詰まっていれば、そのうち前のクルマもブレーキを踏むので、心の準備をしておく、あるいは無駄になる加速をやめるといった運転が先にできるわけです。そうすると余裕をもってブレーキを踏めるしブレーキを離すときも、先が見えているので余裕をもってブレーキを離せるようになるメリットもあります。

 アクセルも同様です。街なかでの強い加速は、そのあとにアクセルオフやブレーキで強い減速も引き起こしますから、なるべく先を見て交通の流れを先取りするように走るだけで、同乗者が驚くほど滑らかに運転ができるようになります。

 もうひとつ。高速道路を走るときに一定のアクセル開度を保って、できるだけ細かな加速減速をしないで一定速で走るというのも、酔わせない運転のコツといえるでしょう。

 丁寧というのはゆっくり加速するということではなく、アクセルやブレーキの踏み方や抜き方、ハンドルの切り方や戻し方といった部分が大切になります。それが車酔いを防ぐ運転につながるのです。