長い人生のなかでは、ときに「他人の車に乗る機会」があるものです。しかしドライバーによって車内マナーに対する考え方は異なり、「どう振る舞えばいいのか」と迷うこともあるかもしれません。

なかには常識をめぐるすれ違いが、思わぬトラブルにつながることも。今回は「他人の車に同乗した際のトラブル」についてのエピソードを集めました。

当て逃げした彼氏から“まさかの一言”

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他人の車に同乗しているとき、絶対に陥りたくないのが「事故」でしょう。もちろん事故はいつでも避けたいものですが、同乗中の事故は「その後の関係」にヒビを入れてしまうこともあるようです。

「昔付き合っていた彼氏と車でショッピングモールに行ったのですが、駐車するときに彼が隣の車にぶつけてしまったんです。ガコッという音がした瞬間、彼は血の気が引いたようになり、慌ててその場から逃げてしまったんですよ。

私は当時免許をもっていなかったのですが、さすがに当てておいて逃げるのはマズいと思い、『ちゃんと謝らないとダメだよ』と促して。でも、彼は私を無視してどんどん進んでいくんです。

しかも、罪悪感なのか焦りなのか、それまでにないくらい運転が荒くて、一刻も早く遠くに離れようとしているみたいでした。目的地もなく30分ほど進み、少し彼の顔も落ち着いてきたように見えたので、とりあえずランチにしようと提案して。

彼は降りた店の駐車場で、ぶつけた箇所をしきりに確認し、私に『あの車、人乗ってた?』と。わからないと伝えると、またしばらくキズを見て、ちょっとギクシャクした挙動で店に入っていきました。

ご飯を食べたあと、『やっぱり今からでも謝りに行こう』と促しましたが、やっぱり無視。それから少しして、彼からの言葉に愕然としてしまいました。『お前が運転してたことにしてくれない?』と。

最初は何をいわれているのか、よくわかりませんでした。そもそも私、免許もってないし。しかも、事故を起こしたら仕事がなくなる、とかいうわけじゃないんです。ただ単に、自分が責任から逃れたいだけだったみたいで。

面食らっていると、『俺が捕まってもいいの?』と。いや、逆に私が捕まるのはいいのか?とやんわり聞くと、こっちは女だから、『怖くて逃げちゃった』とかいえば許されると。もう開いた口がふさがりませんでした。当然、その日から二度と会っていません」(30代女性)

このような「事故当事者の身代わり」は実際に起きており、たとえば「飲酒運転をして物損事故を起こした人が、家族に身代わりで事故を申告させる」といったケースが報告されています。

これが発覚した場合、事故を起こした人物が事故の報告義務違反や各種違反に問われることはもちろんですが、身代わりになった側も刑法103条に定められる「犯人隠避」などの罪に問われる可能性があります。

物損事故が刑事事件に発展するケースも考えられますので、どんな事情があろうと、事故の際の身代わりは絶対に避けなければいけません。

なお、当て逃げをした車の同乗者の責任については、以下の記事で詳しく解説しております。あわせてご参照ください。

えっ、運転してないのに賠償するの?

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誰かの車に乗せてもらう際、トラブルになりやすいのが「移動費の負担」です。車はタダで走れるわけではなく、また運転には労力が必要ですから、車を出してくれた人に対しては何かしらの形でお礼が必要でしょう。

しかし、こうした「小さな気遣い」で円満にいくのは、あくまで平常時の話にすぎないのかもしれません。

「大学生時代、サークルの仲間と5人で旅行に行きました。最初はレンタカーを借りようとしたんですが、友人Aが親からミニバンを借りられるというので、それで行こうという話になったんです。

ただ、保険の関係でAしか運転できないので、Aの分の旅費は少し安くしようという話になって。それで、旅行自体は無事に終わったんですけど……。

帰りに解散してAが家に帰る途中、電柱に側面をぶつけてしまったと。数日後、グループLINEでAから『修理代20万円近くかかるわ、車両保険入ってないみたいで最悪』と報告されたんです。

気まずい気持ちになっていると、別の友人のBがいきなり『運転疲れてたのもあるだろうし、俺らも負担するよ』と。私としては寝耳に水という感じだったのですが、他の2人も同調しはじめて、さすがに断れない雰囲気でした。

結局、半額はAの親が負担して、残りの10万円ほどは旅行に行った5人が2万円ずつ負担することになりました。正直、今でもモヤモヤはありますね。

恥ずかしい話ですけど、5人のなかで私だけ一人暮らしで、経済的にも割とギリギリのなか旅行に行っていたんで、比較的余裕がある人たちの間だけで話を進められたくなかったなと」(30代男性)

友人などと旅行に行き、事故に遭って金銭的な負担が生じた場合に、「誰がどれだけ支払うか」は非常に難しい問題です。法的な責任や賠償義務はそのときのドライバーにありますが、同乗者の心情として、「ドライバーだけに負担させるのは申し訳ない」という気持ちもあるでしょう。

そのため関係性によっては、「運転していない人もいくらかの金額を負担する」という対処も考えられます。とはいえこのケースにおいては、あらかじめドライバー以外の面子で支払いを申し出る点を合意しておくべきだったのかもしれません。

車での移動は大変便利な一方で、事故をはじめ「想定外の事態」が生じた際の被害も大きくなりやすく、法的責任や金銭面の負担など「何となくの雰囲気では解決できない問題」に遭遇することも考えられます。

自身が運転するときはもちろん、他人の車に同乗するときにも、なるべく「万が一のときにどうするか」についてお互いの考えをまとめておくといいのでしょう。