都内のスーパーのコメ売り場の様子(写真:編集部)

今年の夏に起きた「令和のコメ騒動」。9月の記事「『コメが消えた夏』日本人が代わりに爆買いした物」で紹介したように、手に入って当たり前だと思っていたコメを店頭で買いにくくなっていた。

秋には新米の流通が本格化したが、コメの需給は安定してきているのだろうか。また、コメの価格が急上昇する中で、食卓に変化は起きているのだろうか。

足元の品薄状況を確認するため、全国約6000店舗の販売動向を追っている「インテージSRI+」から、スーパーマーケットにおけるコメの販売金額と商品数の前年比を見てみたい。

解消しつつあるコメの品薄

品薄状況の指標となる、販売された商品数の前年比推移をみると、8月5日週から前年割れが顕在化していた。南海トラフ地震の臨時情報が発表された際にコメの品薄情報も広がり、パニック買いが起こるなど入手しづらくなったためだ。

商品数の前年比は9月9日週に55.0%まで減少したのち、翌週の16日週から緩やかに増加し、10月7日週には69.9%まで回復した。新米の流通により、品薄が解消してきていることがわかる。


販売金額の前年比は8月5日週の179.9%をピークとして9月16日週には112.8%にまで減少した。10月7日週にかけて品薄は解消しつつあるなかでも、販売金額の前年比は、パニック買いが起きる前の7月下旬の水準までは戻っていない。コメの価格は新米が流通する頃には落ち着くとも言われていた。

ところが、総務省「東京都区部消費者物価指数」(中間速報値)によると、米類の前年同月比は2024年10月に162.3%まで伸長している。価格が大幅に上昇する中で販売金額が伸び悩んでおり、コメの買い控えが起きているのだろうか。

コメの買い控えの兆候

全国の男女約5万人の生活者から買い物データを継続的に聴取している「インテージSCI」から、購入率の推移を前年同期と比較した。ここで購入率とは、コメを買った人の割合だ。


2024年のコメの購入率は、パニック買いの起きた8月5日週に伸びが見られただけではなく、7月にかけても前年を上回る水準で推移していた。値上がりが先行していたパンや麺類などと比べて、コスパがよい食材として人気となっていたようだ。

ところが、コメの購入率は9月9日週から前年を下回っている。パニック買いの際に買いだめの動きもあったため、需要の前倒しにより一時的に購入率が落ち込んだこともあるのだろう。ただし、1カ月経っても前年割れが続いていることから、買いだめの影響だけではなく、価格の高止まりも買い控えにつながっているのかもしれない。

コメ不足やコメの価格上昇を背景に、食卓で使われる食材に変化があったのかをみてみたい。2人以上家族の主家事担当女性を対象とする食卓調査「インテージ・キッチンダイアリー」から、食事場面(朝食・昼食・夕食)ごとに食卓の変化を確認した。


主食となる食材で2024年9月の登場率上位10位を抜粋すると、朝食ではコメは2位だった。コメの登場率は品薄が影響したのか8月に落ち込みを見せていたものの、9月には回復してきている。

朝食の上位には、1位の食パンをはじめ、4位のロールパン・バターロール、5位のフランスパンなどパン系の食材が中心だ。コメ不足の前からコメの登場率は限られることもあり、コメの使用にそこまで大きな影響は見られなかったのだろう。

昼食の麺類の登場率が上昇

続いて昼食では、コメの登場率は9月に1位となっているものの2位以下とは僅差であり、8月には乾麺を下回っている。そうめんやそばなどの乾麺は夏場に登場率が増加するためだ。


一方、カップ麺・スナック麺、スパゲティ、インスタント麺などは夏場に登場率が減少しがちな食材である。ところが、カップ麺・スナック麺は9月、スパゲティは8月、インスタント麺は8・9月の両月に登場率が前年を上回っていた。

コメ不足やコメの価格上昇を受け、コメを使う回数自体にそれほど変化がない中でも、麺類を活用することでコメの消費を抑える動きがあったものと推察される。

最後に夕食についてみると、コメの登場率は1位で2位以下を圧倒しているが、8月、9月と前年よりもわずかに減少した。朝食・昼食と比べて登場率が高いため、見直しの対象となったのかもしれない。

2位の調理済み冷凍食品、3位の生・ゆで麺、4位のスパゲティなどで増加が見られており、ほかの食材の活用が進んでいることがうかがえる。


コメはまだまだコスパのよい食材

調理済み冷凍食品は、揚げ物などのおかずも含まれるが、チャーハンやパスタなどの主食が中心だ。内訳では、冷凍した白飯の割合が1割弱を占めていた。簡便さから人気となっているだけではなく、無駄のないように冷凍した食材を有効活用しているとみられる。

コメの不足や高騰を受け、麺類や冷凍食品などの活用が少しずつ進んできていることが見て取れた。値上がりしている状況でも、ほかの食材と比べればコメはまだまだコスパのよい食材と言える。ほかの食材の値上がりも続くなか、需給だけではなく価格の動向も今後の食卓の変化に影響を与えていきそうだ。

(木地 利光 : 市場アナリスト)