ファビオ・カンナバーロのバロンドール(ヨーロッパ最優秀選手)受賞は、果たして妥当なのか。11月27日の正式発表を前に受賞者が分かってしまった今、イタリアサッカー界では真っぷたつに意見が分かれている。
DF一筋の選手が受賞したのは、数々の受賞歴の中でも珍しいケースで、イタリアサッカー界としても名誉なことである。

しかしイタリア国内では、フランス・フットボール誌が選定したジャーナリストたちはおそらく、世界最高GKの呼び声高いジャンルイジ・ブッフォンを選出するだろう、という意見も根強かっただけに、意外な結果との受け止める人も多い。

“意外派”の代表として、ドイツワールドカップでブッフォンの控えGKだったマルコ・アメリアは次のように語っている。
「GKとして並び立つ者のないジジ(ブッフォンの愛称)の悔しさは、容易に想像できる。僕自身は、最終的にはブッフォンが受賞するものだと確信していた」
とはいえ、アメリアもこう付け加えている。
「しかし、我がイタリア代表の偉大なキャプテンが受賞したことには満足している」
つまりは、ブッフォンを推す“意外派”も、カンナバーロの受賞に反対しているわけではなく、納得しているのである。

では、“順当派”の言葉も紹介しよう。インテルのDFで、世界制覇の立役者になったマルコ・マテラッツィ――ジダンとともに頭突き事件の主役を演じた彼はこう語る。
「ドイツワールドカップをともに戦った多くのチームメイトが、バロンドールを受けるに相応しい選手だったと思っている。だが、カンナバーロが受賞したことで、イタリア代表の素晴らしい精神力と勇気が認められたことになる。彼はそんなチームのキャプテンだったのだから。また、同じポジションの人間としても非常に満足している。今までは、常にストライカーやファンタジスタが受賞してきた。ようやく今回、DFの仲間のひとりが大きな賞を獲得することができた。これはチームがストライカーやファンタジスタだけでは成り立たないことを証明してくれた」

ミランのジェンナーロ・ガットゥーゾも、代表のチームメイトであるマテラッツィとほぼ同じ意見のようだ。
「僕たちのキャプテンが受賞できたことは嬉しいし、ブッフォンが受賞できなかったことは残念だよ。まあ、個人の気持ちは別にしても、カンナバーロの受賞によってイタリア代表の偉大さ、功績が評価された意義は大きい」

だが、リッピ監督率いるイタリア代表で、ガットゥーゾの馬車馬のような働きがなければ、カンナバーロの受賞もおぼつかなかったかもしれない。
「僕自身も候補者50人に名前が挙がっていた。でも、僕の場合は受賞なんて夢のまた夢だった。ノミネートされただけでも、十分名誉なことだ。僕はただ、自分よりも優秀なチームメイトをサポートするために、ひたすら走り回るだけさ」

ともあれ、カンナバーロが受賞に値する活躍を果たしたことは、紛れもない事実である。