「いじめられたくなければ、お前の彼女を差し出せ」…いじめ加害者の卑劣な要求に、彼氏が下した「最悪の決断」

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命は助かったが…

2021年2月に北海道旭川市で起きた、女子中学生死亡事件――。

当該女子生徒が氷点下17度の夜に突然家を飛び出して行方不明になり、翌月公園で凍死した状態で発見された事件だが、発覚直後から、その背景にある同世代の男女数名による性加害を含む悪質ないじめの存在が取り沙汰されていた。

この事件ではいじめの内容が凶悪犯罪のレベルであるにも関わらず、未成年の加害生徒たちのプライバシーが守り固められていたことに世間から反発の声があがり、少年犯罪における処罰の在り方が改めて社会に問われたと言っていい。

いずれにしても同世代の子どもを持つ保護者を震撼させる事件であったことは間違いないが、同類のことは起きている。筆者に「とても他人事とは思えない」と声を震わせて訴えたのが、シングルマザーの松永真由美さん(仮名・43歳)だ。

松永さんのひとり娘である和香さん(仮名・19歳)も、同世代の複数の少年から性加害を受け、それが尾を引いて自殺未遂を起こしている。

「娘はマンションのベランダから飛び降りようとしていました。命が助かったのは偶然でした。たまたま隣人が、身を乗り出していた娘を見つけてくれて、ベランダのパーテーションを蹴り破って助けてくれたのです」

事件後、和香さんは「廃人のような状態」になってしまったという。

「とにかく助かって良かったと思いましたが、その一方で、ほんの一瞬ですが、もし娘が死んでいたら、犯人の家の前で灯油を被って焼身自殺をはかっていたであろう自分を想像しました」

真面目で優しく、孤軍奮闘する母親に寄り添うように暮らしていたという和香さんに自死を選ばせるほどの性加害――。そこには想像を絶する事実が存在した。

以下、松永さん慟哭しながら筆者に訴えた告白を聞いて欲しい。

いじめを受けたS君が、学校で問題視

「娘には幼馴染のように育ったSという少年がいました。ふたりは中学2年生の頃から付き合い始めましたが、別々の高校に進んでも交際は続いていました。交際と言ってもせいぜい手を繋ぐくらいのほほえましいものでした」

中学時代サッカー部の中心選手だったS君は北関東にあるサッカーの名門校に進学し、部活に明け暮れる毎日を送っていた。当然和香さんとのデートもままならなかったが、ふたりの関係は揺るがなかった。そんなある日、和香さんはS君から「部活の先輩にいじめられている」ことを聞かされる。

「S君に対するいじめは入学して間もない頃から始まったようです。S君の高校のサッカー部は強豪で知られてはいましたが、部員の素行はお世辞にも良いとは言えず、真面目なS君は結果的に浮いてしまうことになって、先輩たちに目をつけられてしまったようでした」

いじめに耐えきれずS君は部活を辞めるのだが、スポーツ推薦で入学したS君がサッカー部を辞めたことは校内で問題にされ、S君は非難の的となったという。

「それだけではありません。いじめグループは、S君の退部後も攻撃し続けていたのです」

卑劣な交換条件

学校内で孤立してしまい、卑屈で暗い性格になってしまったS君。それでも和香さんは変わらずにS君と交際を続けていたのだが、あろうことか、いじめグループの少年たちが和香さんに目をつけてしまう。

「ふたりがデートしていたところを見られたのがきっかけでした。加害少年たちはS君にうちの娘を差し出すように命令したのです」

交換条件は「もういじめない」ことだったという。

「精神的に限界だったS君は正常な判断力がなかったのでしょう。彼は加害少年たちに言われるままに娘を連れ出しました」

その頃S君をデートに誘い出すのは、常に和香さんの方だったらしい。

「それが久しぶりにS君の方から誘われたと言って、娘はすごく喜んでいました。買ったばかりのワンピースを着て嬉しそうに出かけて行く娘…娘の心からの笑顔を見たのは、この時が最後になりました」

…この後、和香さんは加害少年たちの餌食にされた――。

つづく後編記事『「お前って淫乱なのか?」いじめ加害者に交際している彼女を“生贄”として差し出した、最悪な彼氏が言い放った「最低すぎる一言」』では、事件の詳細と、性被害のカウンセリングの難しさ、そして被害をメディアで告白した切実な理由を母が語ります。

「お前って淫乱なのか?」いじめ加害者に交際している彼女を“生贄”として差し出した、最悪な彼氏が言い放った「最低すぎる一言」