練習前、誰もいない室内練習場でキャッチボールをする藤川監督(撮影・田中太一)

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 「阪神秋季キャンプ」(2日、安芸)

 阪神の藤川球児監督(44)が2日、就任後初実戦となる3日の紅白戦のスタメンを発表した。紅組は「2番・三塁」に佐藤輝、白組は「2番・左翼」に前川を起用する“球児色”が前面に出たメンバーとなった。「浅知恵です」と詳細な意図は伏せたが、25年型オーダーの可能性を探る一戦となりそうだ。

 虎党が待ち望んだ初実戦。藤川監督が明かしたオーダーには“らしさ”が凝縮されていた。メモを手に、指揮官が読み上げた両軍メンバーでひときわ目を引いたのが、佐藤輝と前川が名を連ねた2番打者だった。

 今季、中軸を担った2人を「2番」に据えた攻撃的起用。理由について藤川監督は「浅知恵です。やってみたかったというか」と笑顔でかわしたが、言葉の端々にその意図が透けて見えた。

 固定観念を排除する。「2番イコールというものを外したい選手もいる。今は(可能性を)狭める時期じゃない」と力を込めた。阪神の「2番」と言えば、岡田政権下では主に中野が務めたが、紅白戦では「1番」に置いた。「固定のレギュラーだったので、バリエーションを持たせないといけない」。異なる打順を経験することで、新たな可能性を引き出していく。

 日本球界における「2番」には“つなぎ”のイメージが色濃く残っており、DeNA・牧は異質の存在だ。一方で米大リーグではドジャース・大谷やエンゼルス・トラウトらチームの最強打者が、打席数の多くなる2番に座るケースが増えている。藤川監督も「2番と5番では年間の打席数が相当違う」と効率を認めつつ「そのはざまで悩むことになる」と勝つための最善手を探っていく。

 藤川監督の言葉に佐藤輝は即座に反応した。「僕が『2番』というのは、やっぱりアメリカっぽい感じですかね。(走者を)進めたりと考え過ぎず、どんどん長打というのを狙っていけたら」と意気込んだ。公式戦での「2番」は22年に6試合のみだが、来季は近本が出塁し、佐藤輝の長打で一気に得点するパターンなど想像は広がる。今季7試合で「2番」を務めた前川も「ありがたい打順」と前向きに捉えた。

 全打順を前日に発表するのは“球児流”のファンサービスでもある。「そのために発表してるから。せっかく天気も良くなるし、明日は少しでもファンの皆さんのためになれば」と来場を呼びかけた。雨上がりの安芸で、新たなチーム像の輪郭が示されるかもしれない。