丸川珠代前参院議員

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保守分裂の和歌山2区

 27日投開票の衆院選の見通しは荒れ模様だ。“裏金・統一教会議員”らは元首相の未亡人にすがりついても落選の危機にあり、現役閣僚までもが何人か苦境にあえいでいるという――。【前後編の後編】

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 前編【「昭恵さんが“2年前のあの出来事”について話し始め…」 崖っぷちの萩生田光一氏がすがる安倍元首相の威光】では、裏金議員の象徴的存在である萩生田光一氏がマスコミをシャットアウトして行った決起大会の模様について報じた。

 さらに苦戦を強いられている自民党議員らの選挙運動についても報じたが、保守分裂選挙の様相を呈しているのが和歌山2区である。二階俊博元幹事長の三男・伸康氏(46)が公認候補であるにもかかわらず、裏金問題で離党中の世耕弘成前自民参院幹事長(61)が出馬を強行。選挙戦を優位に進めている。

丸川珠代前参院議員

風前のともしびの「二階王国」

 二階選対のベテラン県議がため息交じりに言う。

「伸康は真面目に選挙運動をやっているけど、情勢調査だと世耕が35%、伸康が20%くらいでしょ。現状では、伸康は比例復活も厳しい。せめて、差を5ポイントまで縮めないと」

「二階王国」も風前のともしびというわけだが、世耕陣営関係者はこう打ち明ける。

「橋本市にある世耕後援会の会長が、橋本市の平木哲朗市長から圧力をかけられた。結果、後援会長は辞任せざるを得なくなったのです」

 平木市長の背後に二階氏の影が見え隠れするが、当の元後援会長の男性に話を聞くと、

「参議院議員の世耕先生だから後援会長をやっていた。後援会長を降りたのは、市長になにか言われたからではありません」

組織はフル回転

 平木市長は、

「事実はありません」

 二階事務所も、

「圧力を認識していません」

 と言うのみ。いずれにせよ現状優勢な世耕氏といえど、伸康氏の脅威からは最後まで逃れることができそうにない。

「選挙区内の町村会や県議会の大半は伸康氏の支持に回っている。組織はフル回転しており、比例復活の道が断たれたわけではないのです」(政治部デスク)

 仮に伸康氏が比例で当選すれば、自民党和歌山県連から「党規違反に準ずる脱法的行為」と批判されている世耕氏が自民党に復帰する道は、より険しさを増すことになる。

悲惨な状況の丸川珠代

 自民党の公認を外された他の裏金候補についていえば、有力な対立候補がない兵庫9区の西村康稔元経産相(62)、公明党と選挙協力が成立している埼玉13区の三ッ林裕巳前衆院議員(69)、東京17区で圧倒的な知名度と組織力を誇る平沢勝栄元復興相(79)の3名を除き、軒並み落選しそうだ。

 比例重複を認められなかった裏金候補も追い詰められており、相当数が議席を失う。

 中でも知名度を頼みに参院から東京7区に鞍替えした、丸川珠代前参院議員(53)は悲惨な状況にある。

「立民元職の候補が優勢。丸川氏は16日に安倍昭恵さんと一緒に渋谷区の路上で辻立ちを行い、“安倍先生がいないことが悲しい”と涙を流しながら“小選挙区一本です。どうかお助けください”と声を振り絞るという、情に訴えるしかない状況。あまりにあちこちで涙を流すので、自民党支持者のな中からもあきれる声が上がっています」(渋谷区政関係者)

“政権交代を成し遂げなければ、死んでも死にきれない”

 さて、自民党以外もまた悲喜こもごも。

 立民・国民が大幅伸長の一方、公明・維新は議席を減らすといわれている。

 そんな中、闘志を漲(みなぎ)らせているのが、前回選挙で自民党の藤原崇前衆院議員(41)に小選挙区で敗れ、比例復活に甘んじた立民の小沢一郎氏(82)である。

 地元後援会幹部の話。

「小沢先生も54年18期の議員生活を続けてこられた。後援会も高齢化がかなり進んでいる。支援者からは“もうそろそろ引退してもいいのでは”という声も上がるのですが、ここ1〜2年は先生自身が“政権交代を成し遂げなければ、死んでも死にきれない”というふうに仰っています」

現役閣僚にも赤信号が

 今回、藤原氏には裏金問題に加えて、自民和歌山県連主催の会合で露出の多い衣装を着た女性ダンサーのショーを含む懇親会に参加し、党青年局長の辞任に追い込まれた失点がある。小沢氏が優勢なゆえんだ。

「小沢先生は党の総合選対本部長代行なので全国を飛び回らないといけない。後援会にも“留守にするけどよろしく頼む”と声がかかっています」(前出の後援会幹部)

 公明党は学会員の減少に伴う組織力低下に苦しんでいるが、埼玉14区の石井啓一公明党代表(66)自身も苦戦を強いられている。

「14区内の三郷市と八潮市は元々、三ッ林氏の地盤。だからこそ彼に公明党推薦を出して、引き換えにその組織票を取り込もうとしたのですが、うまくいっていません」(前出・デスク)

 党勢の退潮著しいのは維新も同じ。特に参院から鞍替えした、東京1区の音喜多駿政調会長(41)は、同党のホープでありながら維新の人気低下のあおりをモロに受けて、「比例復活もままならない状況」(同)という。

 話を自民党に戻すと、現役閣僚にも赤信号が点灯している。

 まず、埼玉5区の牧原秀樹法相(53)で、

「相手が枝野幸男立民最高顧問(60)。過去6回の選挙で牧原氏は一度も勝ったことがない。しかも、旧統一教会などのイベントに秘書の代理出席も含めて37回出席していた過去を法相就任直後に暴かれて、支援者の離反を招いています」(同)

元幹事長も落選濃厚

 また、鹿児島3区の小里泰弘農相(66)は2019年に本誌(「週刊新潮」)で女子大生とのパパ活を報じられた人物で、

「地域の婦人部では、“5年たったくらいじゃ許せない”なんて声を聞きます」(地元後援会関係者)

 ほかにも、神奈川20区の甘利明元幹事長(75)も選挙区で落選濃厚。

「前回は比例復活でしたが、今回は年齢制限で比例重複もないため議員バッジは外すことになるでしょう」(前出・デスク)

 さらに、岸信介元首相を曾祖父に、安倍元首相を伯父に持つ山口2区の岸信千世前衆院議員(33)も、やはり裏金の余波で厳しい戦いだという。

 そんな中で、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せているのが、総裁選で最多の党員票20万票を獲得した奈良2区の高市早苗前経済安保相(63)。彼女には全国の候補者から130件以上の応援依頼が殺到した。

「本来、応援依頼は各都道府県連を通じて党本部が判断するものですが、候補者から高市に直接、電話でお願いされるケースも多いです」(高市選挙事務所)

「目はうつろで覇気がない」

 実は夫の山本拓氏も自身が出馬する福井2区へ応援に入るよう求めているが、

「高市氏の手が回らない状況です」(前出・デスク)

 神奈川2区の菅義偉副総裁(75)も選挙は盤石で、地方の応援演説に駆り出されている。しかし、

「目はうつろで覇気がなく、足元もおぼつかない。相変わらず健康不安説が取り沙汰されています」(同)

 かくしていずこも自公はさえない。与党で過半数を取れるのかどうか、いよいよ微妙な情勢だという。

 前編【「昭恵さんが“2年前のあの出来事”について話し始め…」 崖っぷちの萩生田光一氏がすがる安倍元首相の威光】では、裏金議員の象徴的存在である萩生田氏がマスコミをシャットアウトして行った決起大会の模様について報じている。

「週刊新潮」2024年10月31日号 掲載