中川李枝子さん

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 双子の野ネズミが活躍する絵本シリーズ「ぐりとぐら」の作者として知られた児童文学者の中川李枝子(なかがわ・りえこ)さんが14日、老衰で死去した。

 89歳だった。告別式は近親者で行う。

 札幌市生まれ。保育士として勤務しながら創作活動を開始。児童文学者の石井桃子さんに見いだされ、デビューした。1963年に発表した「ぐりとぐら」は、2匹の野ネズミを主人公にした親しみやすいストーリーと、妹の山脇(旧姓・大村)百合子さん(2022年死去)の愛らしい絵で人気を集めた。シリーズ全22作の累計発行部数は、2200万部を超える。

 ほかの作品に「いやいやえん」「ももいろのきりん」「そらいろのたね」など。アニメ映画「となりのトトロ」のオープニング曲「さんぽ」の作詞も担当した。

 「絵本と私」「子どもはみんな問題児。」など、子育てに関する文章やエッセーも多数執筆した。

原点は「保育士生活」

 誕生から61年たつ「ぐりとぐら」は、世代を超えて読み継がれている。我が家でも以前、幼かった子どもが見つめるその絵に、無性に懐かしさを覚えたものだ。

 野ネズミの「ぐり」と「ぐら」が森で見つけた大きな卵でカステラを作り、動物たちと分け合う。シンプルな物語には子どもの心を離さない、彼らへの限りない慈しみがある。

 作家になる前、保育士として長年働いた。そこで見た子どもたちは、よく遊び、突拍子もない行動をして、大人をよく観察している……。一日中見ていても飽きなかった。「あの子たちがいて、今のあたしがある」。9年前の取材の際、しみじみと語っていた。

 物心がついたころは戦争中で、戦死、疎開、空襲など大人の話す単語は重苦しかった。だから、楽しい子どもたちが出てくる児童文学の名作に夢中となり、物語をつむぐ原点となった。

 「保育士生活で分かったのは、子どもは笑顔のお母さんが一番好きということ」。親も子も笑顔にする楽しい児童文学を書き続けた。(文化部 小林佑基)