谷口が痛恨のオウンゴール。日本は最終予選で初の失点を喫した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 森保ジャパンはオーストラリアとホームで1−1の引き分け。現在首位に立っている日本としては、最終予選でストレートインの2枠を争うライバルに対して、勝点3を渡さなかった意味合いは小さくない。

 ただ、ここまで3連勝で複数得点、無失点を続けていたなかで、ようやく上がりかけていた日本代表の気運をさらに高めるチャンスだっただけに、残念な結果ではある。ただ同時に、ここで改めて最終予選が簡単ではないことを再確認できた試合でもあった。

 終盤に中村敬斗の仕掛けからのクロスが相手のオウンゴールを誘う形で追いついたが、やはり日本の戦いを難しくしたのが、58分の谷口彰悟によるオウンゴールだった。

 このシーンに関して谷口は「僕がゲームを崩してしまったなというのが率直な感想です」と振り返る。確かに、俯瞰的に見てもそんなに簡単なシチュエーションではなかったが、谷口であれば安全にボールをタッチライン側にクリアしてほしかったシーンだ。

「あの瞬間はいろんなことを頭の中で考えてましたけど、もしかしたら、その前にマチ(町田浩樹)が触るかなと。そこでどう対応するかというところまで考えた結果、ちょっと出足が遅れたのと、シンプルに僕のポジションがもう一歩でも下がって、左足でクリアできていたら問題なかったと思う。あれはポジショニングもそうですし、アラートに準備しておかないといけないシーンだった」

 そう谷口は語るが、90分を通してセットプレーによる1本しかシュートのないオーストラリアが、パワーをかけて攻めに来ていた時間帯であり、日本からすると後半が少し経過して、そろそろ点が欲しいという時間帯で、チームとしてもエアポケットに入ってしまっていた側面はあるだろう。
 
 直接のミスをした谷口が「決して集中してなかったとか、そういうふうには思わないし、どうこじ開けていこうかというなかだったので。自分自身がオウンゴールで試合を厳しくしてしまった」とチームの問題を否定するのは理解できるが、90分の中で言うと、オーストラリアに二次攻撃を許したところが、苦しい状況を生んだのは確かだ。

 実はその少し前に、この日の日本にとって同点ゴール以外での最大級のチャンスがあった。相手陣内でボールを奪ったところから田中碧を起点に、右サイドで持った久保建英が左足でクロスを上げると、ファーサイドに飛び込んだ南野拓実がヘディングシュートしたが、惜しくもゴール左に外れてしまった。

 直後にオーストラリアは自陣でボールを回したところから、左センターバックのキャメロン・バージェスが左足でロングフィードを送り、FWミッチェル・デュークがヘッドで背後に落とした。

 デュークに競りに行った谷口の背後を、町田が左から走り込むアイディン・フルスティッチより先回りでカバーして、GK鈴木彩艶に戻す。鈴木はフルスティッチがプレッシャーに来るなかで、左足でボールを蹴り出すが、右センターバックのジェイソン・ゲリアが力強いヘッドで折り返し、それを再びデュークが競り落として、フルスティッチ、ライリー・マクグリー、ルイス・ミラーと前向きに繋いだ。

 そこからディフェンスとGKの間に出されたボールを谷口がクリアミスしてオウンゴールになったが、この現象をボランチの守田英正は谷口のミスで済ませられない問題と捉えているようだ。

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「結局はセカンドを前向きに拾われて、そこからの失点だった。本気でちゃんとバランスを取れないと、失った後にバランスが悪いなかで修正しないといけない」

 そう分析する守田は、ゲリアのクリアボールを巡って、デュークと競る谷口の手前からサポートしようとしたが、デュークの頭に触ったボールが日本から見て右に流れて、マクグリーに拾われてしまった。

 こうした競り合いで、ボールがどこに落とされるかを予測するのは難しいが、その直後に守田も左サイドからインに来た三笘薫と被ってしまい、右ウイングバックのミラーに余裕を持って前を向かれてしまったのだ。

 そしてクロスの軌道上にはデュークと中盤からゴール前のファーサイドに上がってきたジャクソン・アーバインがいた。

 日本の3バックも下がりながらの対応が強いられる局面で、クロスが合えば失点のリスクがかなり高いシーンだった。結果的に谷口がオウンゴールしてしまったが、前半はボールを握りながらもなかなかゴールをこじ開けられず、どうオーストラリアの5バックを攻略するかというマインドが、守備のタイトさを失わせてしまった部分はあるかもしれない。
 
 ここに関連して守田が「守備と攻撃はセットなので。僕は攻撃を見返す必要がある」と指摘するように、守備だけでなく攻撃の進め方にも課題はあるだろう。

 ただ、ポジティブだったのは、この失点によって日本が下向きになることなく、メンバー交代も含めて前向きに同点、あわよくば逆転という流れに持って行けたことだ。ここから残りの最終予選、さらに言えば世界に向けた戦いの中でも、こうした試合展開が起こりうる。

 そこで相手に隙を与えてしまわないこともそうだが、いざ失点してしまった時に、どう振る舞って巻き返すか。キャプテンの遠藤航が不在という状況で、方法論として先に失点せずリードを奪う、同じ展開になったとしても逆転まで持っていく道筋はあったかもしれないが、今回の経験をチームとして共有し、今後の戦いに活かしていってもらいたい。

取材・文●河治良幸