イオン「トップバリュ ベストプライス」強化で価格訴求強化、年末商戦に向け客数増定着化、荒利総額確保目指す、10月下旬に「トップバリュ」大規模キャンペーン、約100SKUで増量企画

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イオンは24年度下期、PB「トップバリュ」の価格訴求品「ベストプライス」を軸とした価格の打ち出しを強化し、集客力アップによる荒利総額の確保による業績改善を目指す。また、サプライチェーン構造改革の中では、商品IDの統合によるグループスケールの可視化とデータを軸とした商品戦略を進める。9日、都内で開催した決算説明会で吉田昭夫社長が下期方針について話した。

イオン 吉田昭夫社長

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同社の24年度上期業績は、営業収益が前期比6.1%増の4兆9,994億円と4期連続となる過去最高を更新し順調だったが、利益面では営業利益が16.2%減986億円となるなど、利益各段階で減益の増収減益となった。ただ、営業利益は過去最高の前年同期(1,176億円)に次ぐ水準だったが、金融やディベロッパー事業などが下支えした形で、小売事業はGMS、SM、DS、ヘルス&ウェルネスの各事業とも減益と厳しい状況となった。

〈「原価上昇の中での価格競争」、価格面を打ち出し「荒利率」から「荒利総額」にシフト〉

吉田社長はコストアップに対し営業総利益が不足したことを要因に挙げ、背景として生活防衛意識の高まりを指摘、「こうした環境から価格訴求を行うSM企業が増え、インフレで原価上昇する中での価格競争という環境になってきた。小売企業で売上総利益率(荒利率)を確保することが難しい状況と認識する必要がある」と話す。

こうした環境の中、小売事業においては営業総利益と経費の両面で取り組みを進めるという。営業総利益の確保では、価格面での打ち出しを明確化し、「荒利率」ではなく、売上増による「荒利総額」を上げていく施策にシフトする。その中で改めてPB「トップバリュ」、特に価格訴求型の「ベストプライス」を強化。

10月下旬に大規模キャンペーンを実施し、約400SKUの新商品・リニューアル品投入と、約100SKUの増量企画をあわせて行っていく。また、生鮮・デリカにおいても各事業会社で価格訴求を行い、競争力を高め、最大商戦である年末年始に向け客数増加を定着させ、荒利総額の確保を目指していくという。

吉田社長は「いわゆるハイアンドローで一時的な売上を取るつもりはなく、品質をキープしたままお値打ちだというPBの価値をきっちり認識してもらい、PBに対する抵抗感、(価格と価値の)トレードオフだけの状況でないという認識を持っていただけてきている」など話した。

なお、「トップバリュ」の上期売上高は前年比7%増の5362億円と伸長しているという。

経費面では、セルフレジやAI活用の自動発注システムなどDXの導入やプロセスセンター化による作業効率化、管理レベル向上といった施策を継続し、店舗作業の効率化を進め、人時生産性を高める。

さらに、中長期的目線からサプライチェーン全体の構造改革を実施し、川上を含む全体を包括したハイマージン事業への転換を目指す。その中で、商品IDを統合し、グループスケールを可視化し、データを軸とした商品戦略に取り組むという。来年度ごろからスタートさせるという。さらに事業者間におけるPBの重複があり、開発体制の見直しによるPBの大幅な規模拡大や、物流体制の再構築、店舗オペレーションのDX化なども進めていくという。

〈「まいばすけっと」出店加速、早期に倍増へ〉

また、吉田社長は今後、都市型小型SM「まいばすけっと」について、今後投資を重点配置し、現在の約1200店舗から早期に倍増させる方針だという。

吉田社長は「今後、東京への人口集中が予想される中、都心部で大型ショッピングセンターや大型スーパーで売場面積を増やすのは難しいため現状に合った業態であり、また都市部におけるCVSとの比較ではより低価格のイメージを持っていただけており、非常に競争力があるフォーマットができたと思っている」と話す。

同業態では現在、トップバリュの売上構成比が20%ほどあり、これをさらに高めることで価格競争力と収益力の強化を図っていくという。また、今後のネット通販・宅配需要の拡大を見据えれば、大手CVS各社と比べると都心部店舗網が薄い中で、イオングループの都心部におけるラストワンマイル拠点として活用することも考えられる。

まいばすけっと 仲町台駅南店外観