浮気の原因は中学受験?料理人の夫を罵倒した43歳大企業勤務の妻が失いかけたもの

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「中学受験は、“子供に勉強させなければ”という親の責任感が強い受験です。親の思い通りに取り組まない我が子へのストレスから、家庭の雰囲気が悪くなり、浮気でストレス解消する親もいます」と言うのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんだ。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。

今回相談に来たのは、大手企業にフルタイムで勤務する43歳の沙織さん。前編「実の息子の中学受験に悩む43歳大手企業社員が中卒の料理人の夫の浮気を疑うようになるまで」で詳しく伝えたように、50歳の夫は料理人で、沙織さんが海外勤務の夢破れ、帰国後に出会った。二人の間には夫の連れ子で現在社会人の息子と、中学受験に向かっている小学6年生の息子がいる。中学受験にうまくいかずにイライラしている中、夫が浮気をしているようだというのだ。では調査の結果はどうだったのか。

13年前に出会い、夫に夢中に…

沙織さんと夫との夫婦関係を再度振り返りましょう。13年前、海外勤務からたった2年で日本支社に戻され、失意の中にあった沙織さんは、夫の店に立ち寄り、驚くほど美味しい茶碗蒸しを食べて、元気を取り戻します。その日のうちに男女の中になり、沙織さんは夫に夢中になってしまい、すぐに妊娠。

交際から1年も経たずに入籍してみたら、夫の家には先妻との間に生まれた息子(当時14歳、現在27歳)がいました。夫は沙織さんと出会う3年前に離婚しており、その原因は先妻のDVでした。当然、息子は“パパと暮らしたい”と言います。

12歳から父子家庭で育った息子は、家事もでき、沙織さんが産んだ弟の面倒もよく見ている。沙織さんが「将来、何をしたいの?」と聞くと、「高校か専門を出たら適当に働く」と即答。沙織さんは「大学に行って当たり前」という環境で育っているので、息子に勉強を教え、実際のレベルよりも少し下の偏差値の都立高校に進学させます。息子はその学校でトップクラスの成績を維持し、指定校推薦で中堅私立大学に合格。現在27歳の息子は大手企業の正社員として勤務し、結婚もして幸せそうにしているそう。

一方、実の息子は、中学受験の成績が伸び悩み、夏期合宿が終わっても、志望校どころか、滑り止めも手が届きません。つい、沙織さんは感情的に息子を怒鳴ってしまうと夫は息子をかばう。沙織さんは努力で人生を切り開いてきました。だから、息子の勉強量が足りないことがわかるのです。だから息子に「息抜きしよう」とささやく夫が許せない。そこで、中卒の夫と、高校中退の元妻を罵倒してしまったそうです。さらに「あんたの息子は、私が大学に進学させたから今の幸せがある」と加えたのです。

それから、夫の様子がおかしい。日本料理店を営む夫は、22時に全てのお客さんを帰し、その後に片付けや仕込みをして23時15分には全員撤収する。深夜0時前には家にいたのに、今は深夜に帰宅したり、朝7時30分に家を出る沙織さんより後に帰ることもある。

浮気を疑った沙織さんは、夫と女性を別れさせるために、山村さんに調査を依頼します。カウンセリングから、沙織さんは、夫を愛しており、元の関係に戻したいと考えていることが伝わってきたのです。

細かな夫の行動記録

沙織さんは、細かく夫の行動記録をつけていました。夫は、毎週、土日の定休日前に沙織さんと夫婦の営みの時間を持つのに、夏期講習の後あたりから、沙織さんの体に触れなくなったことまで話してくれました。

カウンセリング時に沙織さんは、「息子が6年生になるまでは、それなりに成績がよかったんです。でも、みんな頑張り始めるから、あっという間にクラスが下になっていった。私がイライラすると、夫の元気がなくなることはわかっていたんですが、気持ちのコントロールができなくて」と泣いていました。

先妻がDVをしていたことも考えると、夫は相手のことをひたすら受け止めますが、自分の興味がなくなると、何も言わずにそこから逃げようとする性格だと感じました。相手は原因がわからないから、感情を爆発させる。相手がヒートアップするほど、夫は冷めていき、別のところに居場所を見出すのです。これまでの調査でも、穏やかな性格の男性で、このタイプの方に多く出会いました。

沙織さん曰く。夫は性の技巧に長けているといいます。優しくて怒らない男性はとてもモテます。張り込みの日は金曜日に決めました。夫は仕事熱心で、決定的な証拠を取るなら金曜日ではないかと考えましたです。

人気店であることが伝わってくる

夫は15時に出勤すると聞いていましたが、浮気をしている人は、相手に合わせて意外な行動をすることがあります。朝から都心の低層マンションの自宅に張り込むことに。このマンションは、沙織さんが結婚と同時に購入した、2LDKの物件です。

朝7時から張っていると、沙織さんが出てきて、足早に駅へと向かっていきました。夫は14時に出てきて、電車を乗り継いで、都心のビル1階にある店に入っていきました。坊主頭に近い短髪で、柔和な表情をしている大柄な男性です。すっきりとした顔立ちをしており、モテそう。50歳という実年齢より若く見えます。

夫の店の建物は古いですが、店前には何も物がなく、パリッと清潔です。盛り塩も真っ白に輝いており、夫の店が人気であることが伝わってきました。

店には、すでに若い料理人がおり、仕込みをしている様子。17時に開店すると同時に、常連客らしき男性が入っていきました。そして18時にスタイルがよく、柔らかい雰囲気の女性が入っていきました。この女性は、お店のスタッフのようです。

19時からコースの予約が始まるようで、10人のお客さんが入り、満席。21時30分に日本人客が帰った後、数人の外国人客が入っていきました。

インバウンドのお客さんは、遅い時間のディナーを好むと聞いたことがあります。夫は22時から再び客を迎え、深夜0時には送り出し、その直後に若手料理人が小走りで出ていきました。おそらく、終電で帰るのでしょう。給仕を担当する女性はまだ中にいるようです。

カウンセリング時、沙織さんは、「0時には家に帰ってきている」と言っていましたが、夫は息子の将来に備えて、稼働時間を増やしたのかもしれません。それも言い出せないほど、沙織さんが中学受験でピリピリしていたのかとも考えてしまいました。

女性のアパートにふたりで…

深夜1時に、女性と夫が店から出てきました。2人は手を繋いでおり、近くの深夜営業のスーパーで白ワインとチーズ、生ハムを購入。夫がお金を払い、タクシーに乗って15分、女性のアパートに入りました。ここはセキュリティがなく外階段の1Kの物件です。さらに廊下側にキッチンがあり、その窓を女性が換気目的なのか細く開けました。

夫は「今日は機転を効かせてくれてありがとう」「英語が話せるあなたがきてくれたから、毎日楽しい」などとベタ褒めしていました。夫は女性の体を触っているようで、女性は鼻と喉にかかるような甘い声で「嬉しい。私は一緒にいられるだけで幸せ」などと話していました。夫は会話の間に、「愛している」を連発しており、当然のように性交渉が始まります。2時間ほどかけて、多少乱暴でもある性行為を行った後、女性は眠ってしまいました。夫は音を立てないように外に出て、合鍵を使ってドアを閉めると、大通りに向かってタクシーを拾い、朝4時に帰宅。

以上を沙織さんに報告すると「やっぱりそうだったか」と泣いていました。追加で女性の調査をすると、女性は35歳で離婚歴がある。海外の日本料理店に勤務していた経験があり、夫の兄弟子の紹介で1年ほど前から夫の店で働いていることがわかったのです。

女性は海外の料理店勤務経験から、インバウンド客をターゲットにしたメニューや営業時間を提案し、店の売り上げは伸び続けます。女性はワインアドバイザーの有資格者で、若い頃にワーキングホリデーでオーストラリアのワイナリーで働いていた経験もある。夫の方がベタ惚れであることもわかったのです。

沙織さんは激しくショックを受け。「私より、この人の方がいいじゃん」と泣いていました。気持ちが落ち着くと、怒りが込み上げてきたようで、「つか、コロナの時に金貸してやったのは、うちの実家と私じゃん。店のことだって、私は口を出さずに支えてあげたのに、ふざけんなよ」と言っていました。もちろん、そのお金は利子をつけて返したそうです。夫の師匠が「身内であれ、金には綺麗でいなさい」という方針を守ったのでしょう。

夫はおそらく、沙織さんの激しい性格が、少々窮屈になったのかもしれないと想像せずにはいられませんでした。それでも沙織さんは夫を愛している。それは夫に女としての喜びを教えてもらったこともあるかもしれません。

離婚は免れそうです

調査から3日後、沙織さんから電話があり「離婚は免れそうです」と安心したような声でした。沙織さんは調査結果を持ち帰った夜、息子に「あんたがバカで成績が悪いから、パパとママは離婚する」と怒鳴ったそうです。翌朝、息子からそれを聞き、夫は「パパとママは絶対に離婚しないよ」と言ったそうです。

息子からそのことを聞いた沙織さんは、出勤前の夫をカラオケボックスに呼び出し、調査結果も踏まえて、夫に洗いざらい話したのだそう。すると夫は「そこまで悩ませていたのか。ごめん」と誤り、「彼女は結婚するタイプではない。お互い息抜きなんだよ」と言ったそうです。帰宅時間が深夜になるのは、店の営業時間を延長しただけ。毎週金曜日は、お互いの性欲が高まるので、遊んでいただけだと告白。

さらに夫は、「彼女は売り上げに貢献しており、クビにすることはできない。でももう、お互いに飽きてきているから、体の関係は持たないようにする」と宣言。沙織さんは腑に落ちない部分が多々ありましたが、夫を信じることにしたそうです。夫も「さおちゃんがそこまで僕を好きだとは知らなかった。本当にごめんなさい」と謝罪。その足でラブホテルに言ったことを嬉しそうに話してくれました。

理想が高すぎたかもしれません

雨降って地固まる、ではありませんが、13年間過ごした夫婦の歳月は、多少の浮気では揺るがないことも感じました。また、夫も沙織さんも経済的に満たされています。お互い対等な関係で助け合っていることが、夫婦関係には大切なのだと感じました。

ただ、気になるのが中学受験をする息子さんへのきつすぎる態度です。そこまで怒鳴っていると教育虐待と言われても仕方のないレベルかもしれません。そもそも中学受験で合格しなければ、そしていい大学に行かなければ将来がダメなどということがないことは、中卒でも大人気の店を経営している夫が証明しています。

息子の中学受験に対しても、沙織さんは「理想が高すぎたかもしれません」と反省。夫からも義理の息子が、ほぼ公立から進学し、人気企業に入ったことに対する対抗心もあったことに気づきます。「自分の息子のため」というよりも、「中学受験に成功した親になる自分のため」になっていたのです。

そもそも、親に人格否定されるほど怒鳴られて、心が傷つかないわけがありません。成績が伸びないことで怒鳴られて、心に傷をつけられて、力を発揮できるのかも疑問です。そしてそこまでして中学受験に「合格しなければならない」ということはないはずです。何かに挑むことは素晴らしいけれど、特に小学生という親の影響が多大な時期の受験は、親が冷静であることや子供のことを温かく見ることがますます重要なのだなと感じさせられます。

憑き物が落ちたような声をしている沙織さんは、息子の心を壊す前に、夫の浮気をきっかけに「気づく」ことができました。中学受験をするのかしないのかから、息子さんと向き合っていくようです。息子さんにとって最善の中学校に進学することを願わずにはいられませんでした。

調査料金は20万円(経費別)です。

実の息子の中学受験に悩む43歳大手企業社員が中卒の料理人の夫の浮気を疑うようになるまで