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年金は待っていればもらえるものではなく、申請しないともらえるものではありません。また申請すればもらえる年金も。簡単な手続きだけなのに、もったいないことをしている人も多いようです。

住民税が課税されない「住民税非課税世帯」とは?

厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、調査世帯の72.6%が住民税課税世帯。残り28%が非課税世帯と課税の有無が不詳世帯だといいます。課税の有無が不詳の世帯がそれほど多くはないと考えると、2割強が住民税非課税世帯であると推測されます。また高齢世帯*に限ると、住民税課税世帯は52.8%。4〜5割が住民税非課税世帯と考えられます。

*65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯

住民税非課税世帯は、その名の通り、住んでいる自治体の住民税を課されていない世帯のこと。収入が一定額以下などの要件があります。そもそも住民税は前年の所得によって税額が決められ、毎年5〜6月ごろに「住民税決定通知書」でその年に納める住民税の税額が通知されるものです。

年金で暮らす高齢者の場合、収入のラインがよく耳にする211万円。65歳以上の高齢者夫婦の場合、主体生活者(世帯主)の年金収入が211万円以下であり、また配偶者の年金が155万円以下であれば、住民税非課税世帯になります。

ただしこの「211万円の壁」は住んでいる地域の級地によって変わり、211万円は1級地の場合。2級地では202万円(配偶者151万円)、3級地では193万円(配偶者148万円)となります。

住民税非課税世帯に該当する場合、国民健康保険料や介護保険料、高額療養費の減額といった優遇措置も。また「年金生活者支援給付金」も、住民税非課税世帯であることが条件です。

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額や所得が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給されるもの。「65歳以上で老齢基礎年金の受給者」であること、「同一世帯の全員が住民税非課税」であること、「前年の所得が、昭和31年4月2日以後生まれであれば88万9,300円、昭和31年4月1日以前生まれであれば88万7,700円以下」*であること、すべて満たしている人が対象です。

*昭和31年4月2日以後生まれで78万9,300〜88万9,300円以下である人、昭和31年4月1日以前生まれで78万7,700円〜88万7,700円以下の人には「補足的老齢年金生活者支援給付金」を支給

年間たったの6万円かもしれないが…

年金生活者支援給付金の給付額は、月額5,310円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出されます。つまり年間で最大6万円強が年金に上乗せとなる、ということ。

――たった6万円じゃ、何もならないわね

斉藤美智子さん(仮名・65歳)。老齢基礎年金を受け取り、住民税非課税世帯であれば、「申請すればもらえる年金がある」ということを聞きつけ、年金生活者支援給付金の説明を受けたときのひと言。新たに年金生活者支援給付金を受け取ることができる人には、緑色の封筒に入った「年金生活者支援給付金請求書」が9月2日から順次送られています。

――緑色の封筒……なんか届いていたけれど、よくわからないから捨てっちゃったわ

10年前、自営業だった夫を亡くしている美智子さん。65歳になってから受け取っている年金は、老齢基礎年金6.8万円(令和6年度)のみ。住民税非課税世帯であるものの、夫の残してくれた貯金などで生活に困ることはないといいます。

住民税課税世帯か非課税世帯はあくまでも所得額での判断なので、斉藤さんのように貯蓄はあるけど収入は少ない人も非課税となります。

――捨てちゃったんですか……1年で6万円でも、10年で60万円、20年で120万円。女性の平均年齢は87歳ほどなので、トータル132万円にもなりますよ

年金生活者支援給付金請求書は、氏名、電話番号、提出日を記入のうえ、切手を貼って投函するだけ。あとはいつもの金額に上乗せされた年金が振り込まれるようになります。また翌年も条件を満たしていれば手続き不要です。

――申請さえすればもらえるお金なのに捨てちゃうなんて

そこまでいわれると「年にたった6万円」と封筒を捨ててしまったことが悔やまれられます。65歳から受け取れば、平均寿命から考えると女性であれば130万円にもなるわけですから。

もし緑色の封筒を捨ててしまったり、失くしてしまったりした場合は、日本年金機構のホームページから請求書をダウンロード。必要事項を記載のうえ、近くの年金事務所に提出すれば、それで手続き完了なので、諦める必要はありません。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』

日本年金機構『年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ』