中学硬式野球の強豪・宮城仙北ボーイズ【写真:早浪章宏】

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中学硬式野球・宮城仙北ボーイズ監督は「日本一を獲れるよ」…繰り返し選手に伝えて実現

 今年8月に開催されたボーイズリーグの全国大会「エイジェックカップ第55回日本少年野球選手権大会」で、東北勢初優勝を成し遂げた宮城仙北ボーイズ(宮城・大崎市)。2012年の創設時からチームを率いる田中伸次監督は、「今年の3年生には『お前らは日本一を獲れるよ』とずっと言い聞かせてきました」と話す。Full-Countでは小・中学世代で日本一を成し遂げた監督に取材。指揮官が実感した“言葉の力”とは。

「かっこいいことを言うわけじゃないけど、日本一を獲るための指導とか、そういうのはないんですよ。思春期の中学生をその気にさせるのが指導者の役目。その中で、ことあるごとに『日本一、日本一』と言っていたら結果を出してくれた。言葉の力ってすごく大きいですよ」

 これまで、選手に日本一を強く意識させたことはなかった。しかし、優秀なメンバーがそろった今年の3年生の代には、監督自身の「願望」も込めて入団時から「お前らは日本一を獲れるよ」と言い続けてきた。1年生大会には団員25人を13人と12人に平等に分け、「赤」「白」の2チームで出場。東北支部で優勝、準優勝に輝くと、「この代は、ひょっとしたら行けるんじゃないか」と感じた。

 ただ、個の能力が高いゆえに「おらがおらが野球」が色濃く、この代が最上級生になってすぐの大会では結果を残せなかった。それでも、田中監督は選手たちを信じ、接し方を変えなかった。

自尊心とは「ここまでやったけど、まだまだ追求するものがある」

 今年の春先には、関東で開催された大会で、以前コールド負けを喫した相手に今度は逆転負けを食らった。選手たちは試合後こそ落胆していたものの、大会後最初の練習からは「このままでは日本一を獲れない」と口にして目標を見つめ直した。

 その敗戦を機に、投手であればボールの速さ、野手であればバットスイング、チーム全体であれば守備の動きが「目に見えるくらいガラッと変わった」と指揮官。夏の全国選手権決勝の相手である愛知名港ボーイズも、4月の練習試合では2度コールド負けした相手だったが、それでも、選手たちは試合前に「負ける気がしない。(練習試合の敗戦は)発展途上中の1つの壁であって、僕たちは乗り越えたから見ていて」と、頼もしい言葉を言い放った。

「大事なのは子どもたちが自尊心を持つこと。自尊心というのは、『自分たちはここまでやったから負けるわけがない』ということではない。『ここまでやったけど、まだまだ追求するものがある』という考えを、春先から持ち続けてくれた」。田中監督は今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定。「日本一」を意識させる言葉が重荷にケースもあるかもしれないが、その言葉は選手を、チームを成長させる原動力にもなりうる。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)