Z世代は小さい頃からゲームやスマホになじんできたために、何か不具合があればリセットして、電源を落とし、再起動をする経験を持っています(写真:タカス/PIXTA)

昨今、若手の早期離職が問題になっています。「最近の子は、我慢が足りない」と、がむしゃらに働いた「昭和世代」とのギャップを語る管理職の方は多いのですが、本当にそうなのでしょうか。メンタルトレーナーの濱田恭子さんの著書『仕事がうまくいく人は「人と会う前」に何を考えているのか』から、Z世代との向き合い方を一部抜粋・再編集してご紹介します。

離職を防止する方法――Z世代の心理を理解する

最近はZ世代で「会社を辞めたい」というご相談をとても多くいただきます。上司の立場からすると、昨日までニコニコしていた若い世代が急に辞めたいと言ってきたといって「何を考えているのかわからない」と悩んでいます。

Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代で、2024年現在、20代の方たちはZ世代です。

会社を辞めたい人の8割は感情問題ですが、みんな感情の問題ではない理由をつけて辞めていきます。当たり前ですよね、大人なので「○○さんがいると我慢ならないので辞めます」とは言えません。

半面、たとえば仕事がかなりハードで、残業も多いのに辞めないでいられる現場もあります。その理由の多くは人間関係が良好だからです。

実際、やりがいのある仕事や、人間関係に恵まれた仕事をしている人は、作業量のハードさがあったとしても、離職率が低いものです。

では、Z世代はなぜ辞めてしまうのでしょうか。それは、彼や彼女たちが、デジタル世代であることが大きいと思います。

つまり、小さい頃からゲームやスマホになじんできたために、何か不具合があれば、リセットして、電源を落とし、再起動をする経験を持っています。

そのため、嫌なことやモヤッとすることがあれば、「辞める」=「リセット」という選択肢が出てくるのです。

これは彼らが不真面目なのではありません。仕事だけではなくプライベートも大切にしたいという傾向はありますが、仕事をいい加減にしているわけではありません。

ただ、彼らは頑張らないと!と育った親世代から、頑張りすぎてつらくならないように、と育てられてきました。だから、行き詰まったときにどのようにしていいかわからず、リセットボタンを押す、という選択をしているだけなのです。

仕事を継続しながら、スッキリさせる方法があることを知らないから辞めてしまうだけなのです。

どれだけリセット=離職しても解決には至らない

Z世代は、さらにコロナで人との関わりが減ったことで大きな影響を受けた世代でもあります。

どれだけリセットしても、いったんゼロになっても、根本的なところと向き合って、もし自分に同じようなパターンが繰り返されているならそこに気づかないと、次の職場に移っても、同じパターンを繰り返してしまうことを伝えていかなければなりません。

嫌な上司がいて会社を辞めてリセットしたとします。でも、次の会社でまた同じようなタイプの上司に巡り合ってしまう。職場をかえても、部署が変更になっても、なぜか、同じタイプの人間が現れてくる。そして同じように人間関係で悩んでしまう……。

これはなぜでしょうか。「世の中がそうだから」「社会って、そういうものだから」と言う方もいますが、必ずしもそうではありません。

一度、そうぼやく方に「あなたの見ている世界は、プロジェクションマッピングと同じですよ」とお伝えしたことがあります。

いくら建物を変えても、プロジェクションマッピングのように映し出す映像が変わらなければ、会社を変えても同じような人が現れ、同じようなことで悩むのです。

採用のときに、「前の会社って、どんな会社でしたか?」と聞くことがあります。目的はその人がどんなふうに前の会社のことを言うのか観察すること。どんなふうに以前の体験を捉えているのかで、その人がわかります。

「上司が○○で、それが嫌で辞めました。本当にひどい会社でした」と言う人と、「上司が○○でそれが問題で辞めましたが、そこで、自分はこのようなことを学べました。今では感謝しています」と言う人がいたとします。

どちらが次にいい上司に巡り合えるかはわかりますよね。

最初の人は自分の世界を繰り返し投影し続ける可能性が高いのです。

同じ人を見ても、その人のいい面が目につく人と、悪い面ばかりが目について、実際に他者とぶつかってしまう人がいます。

つまり「自分がどういう面に光を当てているか」ということ。自分のことだけに、なかなか気づくのが難しいのですが、同じ問題がいつも自分の周りにあるかどうか、これに気づくことだけでも大きな一歩になります。

4つの人間関係のパターンに気づけば変わる

「あなたの見ている世界は、プロジェクションマッピングと同じです」と前述しました。人間関係が嫌で会社を辞め、新しい職場で新しい人間関係を、と望んでも、やっぱり同じ人間関係に苦しめられる……。

それはあなたの運が悪いわけでも、社会が悪いわけでもなく、「あなたの(ものの見方の)パターン」なのだとご説明しました。

さらに人間関係にもパターンがあります。そのパターンに気づかなければ、同じことが繰り返されるのです。これは仕事でなくても同じです。

他者との関わりにはパターンがあります。パターンは大きく分けると「脅迫者」「被害者」「尋問者」「傍観者」があります。それぞれ簡単に説明すると、

● 脅迫者 …… 支配することによって納得しようとする
● 被害者 …… 罪悪感を抱かせることで注意を引こうとする
● 尋問者 …… 不安から尋ねる
● 傍観者 …… 情報をシャットダウンする

たとえば圧の強い上司は「脅迫者」です。「俺の言うこと聞かないと、どうなるかわかっているだろうな」(口に出すか出さないかにかかわらず)という態度で、人からエネルギーを奪います。

逆にいつも怒られてばかりでおどおどとおびえている部下は「被害者」です。

私はこのパターンを、凸凹(デコボコ)で説明しています。

人間は誰でも、相手の注意を引きたい、愛情がほしいという思いが原点にあります。

脅迫者は凸る(以下、デコる)ことによって注意を引きますが、一方の被害者は、凹る(以下、ボコる)ことによって注意を引きます。そう、おびえることでも注意を引いてしまうのがボコタイプになります。

たとえば、窓口業務の女性で「クレームが来るのではないか」「怖い、怒られる!」といつもビクビクしていると、本当にいつも怒ってくるようなお客様が引き寄せられることがあります。

尋問者―傍観者のご夫婦のパターンでは、妻が「あなたどこにいるの? 何しているの? いつ帰ってくるの?」と尋問してデコります。

無視と傍観は一緒

尋問されまくると人はどうなるかというと、傍観者となって、もう何も伝えたくなくなります。つまり、ボコって情報をシャットダウンするようになるのです。


シャットダウンも実は、注意を引く行為です。情報を伝えなかったり、無視されたりすると、かえって気になります。「教えない」と言われると、「教えて!」となりますよね。

無視というのは傍観と一緒で、究極は最も傷つける行為だったりします。ケンカをしたときにダンマリを決め込むようなタイプは傍観者です。

一見、「脅迫者」や「尋問者」のデコになっているほうだけが、ボコっているほうからエネルギーを奪いまくっているように見えますが、「被害者」や「傍観者」も、愛や注意を得るために、パターンを変えて他者から奪おうとしているわけです。

このパターンがわかると、自分の中で繰り返されているパターンにも気づきやすくなります。

だから気づいた人から関係性をフラットにするように意識する必要があります。

一人の人がいつも同じタイプではありません。人は場面によって複数のパターンを持っています。またこれらがまじり合って演じられていることもあります。

たとえば、上司とあなたの関係が脅迫者―被害者であったとしても、あなたは誰に対しても「被害者」ではないはずです。

子どもに対しては、あなたが尋問者、子どもが傍観者かもしれません。「勉強したの? 誰と遊んでいたの?」と子どもに問いただし、思春期の子どもが黙り込む、あのパターンです。

同じ人でも、その相手によって、その状況によって、4つのパターンは変わり、誰もが4つのすべての要素を持っているのです。

(濱田 恭子 : 日本マインドワーク協会代表理事)