大河『光る君へ』敦成親王や藤原道長の呪詛事件の真相 軽すぎる処罰…捏造の可能性も 識者語る
NHK大河ドラマ「光る君へ」第38回は「まぶしき闇」。敦成親王の呪詛事件が描かれていました。寛弘6年(1009)1月、一条天皇の中宮・彰子(藤原道長の娘)と生まれたばかりの皇子(敦成親王)の呪詛事件が発覚します。道長も呪詛の対象となっていました。内裏で彰子と皇子を呪う厭符(呪いの札)が発見されたと言います。呪詛した僧侶や陰陽師は拷問され「真犯人」が炙り出されました。
呪詛は、源方理や高階光子(高階成忠の娘。成忠の娘には、伊周の母・貴子もいる)らが僧・円能に依頼して行ったとされています。呪詛の関係者の延長に伊周がいることから、彼は朝参を約3カ月停止されます。源方理や高階光子らが、前年12月に僧・円能に呪詛を依頼したとされますが、ではなぜ彼らは中宮彰子、敦成親王や道長を呪詛しようとしたのでしょうか。
呪詛した僧侶・円能の自白によると、中宮彰子や敦成親王、そして道長の存在が、伊周を台無しにしている。よってこの3人を呪詛し、亡き者にしようとしたというのです。源方理や高階光子は呪詛が伊周の為になると思い、実行しようとしたのでしょう。しかし、前述したように、呪詛に関与していない伊周にまで悪影響を与える事になり、裏目に出たと言えます。
さて、呪詛の「首謀者」らは、死刑になるところでしたが、罪を減じられて、官位剥奪や禁獄される事になります。しかし、朝参を停止された伊周にしても3カ月後には許されていますし、方理は翌年には復位しています。呪詛した僧・円能も禁獄を解かれる事になります。つまり、事件の関係者が翌年には赦免されているのです。そうした事から、源方理や高階光子、円能らは本当に親王らを呪詛しようとしたのかと疑問に思う向きもあります。要は呪詛事件はでっち上げ、捏造の可能性もあるという事です。
◇主要参考文献一覧 ・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)
(歴史学者・濱田 浩一郎)