「ピン芸人」柳沢慎吾が今さら“人気急上昇”の理由 『笑点』に単独出演で大絶賛 敬遠された“話の長さ”が再評価
俳優でタレントの柳沢慎吾(62)の評価が急上昇している。きっかけは8月25日に放送された「笑点」(日本テレビ)の演芸コーナーに出演し、“ひとり甲子園”を演じて爆笑をさらったことだった。
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【写真をみる】「いい夢見ろよ!」ポーズをキメる柳沢慎吾&芦田愛菜
番組冒頭、司会の春風亭昇太が「今日の演芸は柳沢慎吾さんです」と紹介すると、会場がどよめいた。そりゃそうだ。普段は芸人が漫才や講談などを披露する演芸コーナーに、歴とした役者が出演したのだから。
もっとも、高座に上がった柳沢は堂々としたもので、母親に「短めにしなよ!」と忠告されたことを明かしつつ、架空の設定の「ひとり甲子園(準々決勝・横浜対PL学園)」を披露した。高校球児の形態模写はもちろん、観客の応援、審判、場内アナウンス、テレビ実況、解説、NHKの総合からEテレへの切り替えなど、ありとあらゆることを1人で演じきり、「いい夢見ろよ、あばよ!」で〆ると会場の爆笑をさらった。Xではトレンド入りも果たしている。
さらに、9月17日にBS日テレの「笑点特大号」で再放送されると、あらためてネット上ではこんな声が。
《地上波で見逃してた笑点の柳沢慎吾がBS日テレで見れて良かった》
《たまたま観たBS日テレ「笑点特大号」柳沢慎吾の高校野球再現ネタ。なんか得したwww 観客の皆さんも自然に手拍子するレベルの高さwww》
《柳沢慎吾ちゃんもすごかったけど、オファーした番組の人もすごい。正気の沙汰じゃないw》
確かにそうだ。柳沢はバラエティ番組への出演が少なくないが、代表作の「ふぞろいの林檎たち」シリーズ(TBS)はじめ、NHKの大河は3本、朝ドラは4本、今期は「素晴らしき哉、先生!」(テレビ朝日/朝日放送テレビ制作)にも出演する歴とした俳優である。なぜ「笑点」のスタッフは彼にオファーしたのだろう。民放プロデューサーに聞いた。
敬遠された時代も
「もともとテレビマンの間では、喋りの面白い俳優という定評がありました。タレントとして『あばよ!』『いい夢見ろよ!』といったテッパンのフレーズもありますから。もっとも、かつてはバラエティ番組では敬遠された時代もありました。理由はたったのひとつ、芸や話が長く、編集が大変だったからです。ところが、今年4月にトーク番組『だれかtoなかい』(フジテレビ)に俳優の舘ひろしとゲスト出演、“ひとり慎吾劇場”はもちろん、館との即興刑事ドラマも披露し、“柳沢慎吾ショー”が堪能できました。そして『笑点』への出演で、マルチタレントとしての実力と嫌われないキャラが世間で再評価されたのだと思います」
それにしても、「ひとり甲子園」は堂に入った芸だった。
「なんでも『ひとり甲子園』は、彼が中学生の頃に編み出したものだそうですよ」
柳沢はインタビューでこう話している。
《中3の時、巨人の原辰徳監督が出場していた神奈川大会決勝を姉と見に行き、帰宅後のお茶の間で「慎吾、お父さんに見せてあげて」とリクエストされた。/「ブラバンから、バッター、ピッチャー、キャッチャーして、監督や解説もやってと言われて。お姉ちゃんが言わなかったら、『ひとり甲子園』は生まれてなかったね。原監督とはね、一度、六本木で会った時に本人の前でやりました。『面白いね、君』って。松坂(大輔)君や中田翔君、桑田(真澄)さんの前でもやりましたよ」》(スポーツ報知:22年7月30日)
熟成された十八番とも言える芸だったのだ。
最初は「徹子の部屋」
「実は『ひとり甲子園』をテレビで放送したのは、『笑点』が初めてではないのです。彼がまだ20代だった1986年に、『徹子の部屋』(テレ朝)で10分間にわたり披露したのが最初と言われています。もっとも、相手は“芸人つぶし”とも言われ、野球音痴で名高い黒柳徹子さんですからね……」
「笑点」のような大ウケは期待できそうもない。
「2008年にはCDアルバム『柳沢慎吾のクライマックス甲子園!!』をリリースしています。また、横浜スタジアムでは何度も始球式を務めており、マウンド上で『ひとり甲子園』を披露して“日本一長い始球式”と名物になっています。昨年、横浜スタジアム45周年記念のスペシャルイベントにも登場し、始球式に約30分をかけて自己最長記録を更新しました」
確かに、テレビではやりにくいかも。
「彼には『ひとり甲子園』以外にも、『ひとり太陽にほえろ』や『ひとり警視庁24時』『ひとりふぞろいの林檎たち』『ひとり火曜サスペンス』なんてネタもあります。面白いのですが、いずれも尺が長いのでショートバージョンを指示されたりすることもありました。また、集団芸にハマりにくいということもあり、“慎吾ちゃん尺”を作るほどの勇気がテレビマンになかったことも事実です」
「笑点」の成功は、彼の芸に相応しい“尺”と“舞台”を与えたことが幸いしたようだ。
「彼は俳優になる前、お笑いコンビ『てっちゃんしんちゃん』を組んで、『TVジョッキー』(日テレ)の素人お笑い勝ち抜きコーナー“ザ・チャレンジ”の4代目チャンピオンにもなりました。ちなみに、初代チャンピオンは竹中直人さん、3代目がとんねるずの石橋貴明さん、5代目が同じく木梨憲武さんです。また『ぎんざNOW!』(TBS)の“しろうとコメディアン道場”でも第20代のチャンピオンに輝いていますから、ただの俳優ではなく芸人としての才能もある。ひょっとすると、都内の演芸場で彼に目を付けた席亭さんが出てくるかもしれません」
デイリー新潮編集部