発見された系外惑星「HD 118203 c」のイメージ、主星を背景に
Image: UMK

2005年の発見に続き、同じ星系でふたつめの惑星。

ポーランドの天文学者チームが、木星の11倍以上の質量を持つ太陽系外惑星(太陽以外の恒星の周囲を公転する惑星)を発見しました。これは、既知の系外惑星としては最大規模の質量となります。

発見された天体は表面温度がマイナス100度以下と低温、かつ木星より質量が大きく、「コールド・スーパー・ジュピター」と分類されます。この系外惑星とそれが属する星系の特徴は、今年8月発行の学術誌「Astronomy & Astrophysics」に掲載されています。

ポーランドのニコラウス・コペルニクス大学のAndrzej Niedzielski氏らの論文によれば、その系外惑星は我々の太陽から300光年ちょっとの距離の、おおぐま座を構成するHD 118203を主星としています。HD 118203は太陽に比べて20%質量が多く、大きさは約2倍ですが、年齢は54億年前後と太陽(46億年)より熟年感漂います。

同じ星系では2005年、NASAのトランジット系外惑星探索衛星(TESS)が地球の2倍サイズのホット・ジュピター「HD 118203 b」を発見していました。

「しかしドップラー観測により、それ(訳注:ホット・ジュピターの発見)が終わりではなく、別の惑星がある可能性が示されていました」ポーランドのニコラウス・コペルニクス大学のAndrzej Niedzielski氏は、プレスリリースの中で言っています。「そこで我々はすぐにこの惑星系を観測プログラムに入れたのです」

Niedzielski氏らのチームは、TESSのデータに加え、スペイン・カナリア諸島にあるガリレオ国立望遠鏡のデータと、米国テキサス州にあるホビー・エバリー望遠鏡のデータを総合して分析しました。その結果、HD 118203 bとは別の天体がHD 118203を公転しているのを発見できたのです。主星が明るすぎて惑星そのものは見えなかったのですが、観測チームは視線速度データを使い、HD 118203の明るさのかすかな変化から、惑星「HD 118203 c」の存在を割り出すことができました。

興味深いことに、HD 118203のふたつの惑星が主星を1周するのに要する時間は大きく異なっています。2005年に発見されたホット・ジュピター、HD 118203 bの公転周期はたった6.1日なのに対し、今回発見されたコールド・スーパー・ジュピター、HD 118203 cの公転周期は約14年にもなります。

ちなみにHD 118203 cは、質量は既知の系外惑星として最大規模ではありますが、直径が最大規模の系外惑星は地球から1,430光年のヘルクレス座にある、TrES-4bという天体です。TrES-4bは直径約23万kmで、木星(直径約14万km)より大きいですが、質量は木星より若干少ないため、密度が非常に低いのが特徴です。逆にHD 119203 cの直径は木星の1.1倍ほどと推定されているので、密度は木星よりかなり高くなっています。

ちなみに、系外惑星より質量の大きい天体は褐色矮星と分類され、その国際天文学連合により「木星の13倍」と決まってはいますが、実際はちょっと曖昧です。この境界に近い天体としては、他に木星の約12倍の系外惑星「がか座ベータ星b」などがある一方、木星の11.5倍しかないのに「褐色矮星かも」とされるOTS 44 のような天体もあります。観測技術がアップデートされるにつれて、この境界もより厳密になっていくのかもしれませんね。

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