岸田「米国は独りではない」!進む日米軍事一体化のウラ側が衝撃的すぎた…

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知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本

日本にとっての「最悪のシナリオ」とは?

政府による巧妙な「ウソ」とは一体…?

国際情勢が混迷を極める「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。

※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。

同盟史上「最も重要なアップグレード」

「You are not alone. We are with you(米国は独りではない。我々はあなたたちと共にある)」

壇上の岸田文雄首相がひときわ大きな声でこう訴えると、米連邦議会の議場ではスタンディング・オベーションが起こりました。

2024年4月11日(現地時間)、岸田首相は米国連邦議会の上下両院合同会議で演説しました。日本の首相が上下両院合同会議で演説するのは、2015年の安倍晋三首相以来、9年ぶり2度目のことです。

岸田首相は中国や北朝鮮、ロシアといった国々を念頭に「米国が何世代にもわたり築いてきた国際秩序は今、新たな挑戦に直面している」と指摘し、日本は米国の「グローバルなパートナー」として自由と民主主義を守るために共に行動すると約束しました。

そして、「日本は(中略)第二次世界大戦の荒廃から立ち直った控え目な同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました」と強調。日米同盟をいっそう強固なものにするため、自身が先頭に立って、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への大幅増額や「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有解禁などに取り組んできたとアピールしました。

この前日にホワイトハウスで行われた日米首脳会談でも、岸田首相は日本の防衛力強化の取り組みを伝え、バイデン大統領は改めて強い支持を表明しました。その上で両首脳は、「日米同盟を更に前進させるための新たな戦略的イニシアティブ」を発表しました。

そこで第一に挙げたのが、「指揮・統制の向上」です。

指揮・統制の向上が意味するもの

首脳会談後に発表された共同声明は次のように記しています。

我々は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる意図を表明する。

バイデン大統領は会談後に開かれた記者会見で、「これは同盟が発足して以来、最も重要なアップグレードだ」と強調しました。

「指揮・統制の枠組みを向上させる」とは、何を意味するのでしょうか。

バイデン政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めるジェイク・サリバンは、首脳会談直前に受けたNHKのインタビューの中でこう語りました。

「私たちは日本におけるアメリカの作戦指揮の機能を高めるとともに、日本とのあいだで作戦指揮の機能の統合を確実に進めていく準備がある」

この言葉どおり、米国が望んでいるのは、米軍と自衛隊の作戦指揮機能の統合です。

実質的にNATO・米韓同盟方式に近づけるのが米国のねらい

作戦指揮機能が統合された一番わかりやすい例は、米国を中心とした欧州・北米の多国間軍事同盟、NATO(北大西洋条約機構)、そして米韓同盟です。

図のようにNATOとして軍事行動をとる場合、加盟国の軍隊は「欧州連合軍最高司令官」の指揮下で行動することになっています。同司令官は、米欧州軍司令官が兼任しています。つまり、加盟国の軍隊は米軍司令官の指揮下で一丸となって行動するのです。米韓同盟も、米軍と韓国軍の連合司令部が設けられ、米軍司令官の指揮下で一丸となって動く体制になっています。

一方、日米同盟では、自衛隊が米軍司令官の指揮下に入る形にはなっていません。日米の防衛協力の在り方について定める「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)は、「自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動する」と明記しています。

米国は、日米同盟もNATOや米韓同盟のように完全に作戦指揮機能が統合された形にしたいと考えています。

日本国憲法第9条の存在

しかし、これを困難にしているのが、日本の憲法第9条の存在です。

日本政府は、憲法第9条の下で認められる武力の行使は「我が国を防衛するため必要最小限度」に限られる、という憲法解釈を採っています。

2015年に成立した安保法制により、日本が武力攻撃を受けた場合の個別的自衛権の行使に加えて、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合の集団的自衛権の行使も認められましたが、それも「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」の場合に限定されています。

米国にはこのような制限はありませんから、自衛隊が米軍司令官の指揮下に組み込まれた場合、自衛隊の行動が憲法第9条の下で認められる範囲を超えた米国の武力行使と「一体化」していると評価される恐れが生じます。そうなると憲法違反になってしまうので、自衛隊の指揮は米軍から独立した形にしているのです。

日米首脳会談で「指揮・統制の向上」が合意された直後の記者会見で官房長官が「自衛隊が米軍の指揮・統制下に入ることはない」と強調したのも、そのためです。

憲法第9条がある限り、NATOや米韓同盟のように米軍司令官が指揮する連合軍体制を正式に採用するのは困難ですが、実質的に限りなくこれに近づけようというのが米国政府のねらいです。

>>つづく「中国は「仮想敵」米国が描く理想に唖然「同盟国も運命を共に…」」では、米国が描く、同盟関係の「理想像」をより詳細に明らかにしていきます。

中国は「仮想敵」米国が描く理想に唖然「同盟国も運命を共に…」