「炭酸水で歯が溶けるって本当?」「食事中に水分をとると消化に悪い?」などの疑問を専門家が解決
ちょっと雰囲気のあるレストランで食事をすると、ドリンクは水か炭酸水かと尋ねられることがあるので、どちらにすべきか迷った経験がある人もいるのではないでしょうか。普通の水と炭酸水のどちらが体にいいのかや、「食事中に水分をとると胃酸が薄まって消化に悪い」という説の真偽など、水と炭酸水での水分補給についてこれまでわかっている科学的なエビデンスを専門家がまとめました。
https://theconversation.com/is-still-water-better-for-you-than-sparkling-water-237125
◆水と炭酸水、健康にいいのはどっち?
オーストラリア・ボンド大学の医学および生物医学の准教授であるクリスチャン・モロ氏と、医学部の上級教育研究員であるシャーロット・フェルプス氏によると、水分補給に最適なのは「水」だとのこと。
もっとも、水分を補給する上で「炭酸水」と「静水(still water)」、つまり普通の水は同等の効果を持つため、水分を摂取する手段としては、炭酸が入っていてもいなくても同様とされています。
中には、密封されたボトルに入っている飲み物の方が健康にいいと考える人もいますが、オーストラリアでは水道水の安全性が厳重に監視されており、また水道水には子どもを虫歯から守るためのフッ素も添加されています。日本では水道水へのフッ素の添加は行われていませんが、(PDFファイル)日本は水道の水質がよく水道の水がそのまま飲める数少ない国のひとつなので、基本的にボトル入りかどうかを気にする必要はないといえます。
一方、注意しなければならないのは炭酸以外の添加物、特に砂糖や甘味料が入ったドリンクで、モロ氏らは「炭酸水や炭酸なしの水は、人工的に甘味料が加えられたフレーバードリンクやジュースよりも常に優れています」と指摘しました。
◆炭酸水は骨や歯に悪い?
まず骨については、炭酸水が骨にダメージを与えるというエビデンスはないとのこと。ソフトドリンクをよく飲むと骨折しやすくなるといわれていますが、これは主に肥満が関係しており、炭酸が直接骨に影響を与えるわけではないとされています。
一方歯の場合、炭酸水は炭酸が入っていない水に比べて酸性度が高いので、この酸で歯の表面を守るエナメル質が柔らかくなることがあります。とはいえ、炭酸水が歯に影響を与えるには、歯が長時間にわたって大量の炭酸水にさらされる必要があるので、炭酸水だけならそれほど心配する必要はありません。
しかし、炭酸だけでなく砂糖やかんきつ類も加わると酸性度がはるかに高くなってしまうので、これが歯に悪影響を及ぼすリスクがあります。
特に、歯ぎしりをするくせがある人は歯の軟化によるダメージが増大します。また、自宅で歯を白くする「ホワイトニング」をしている人は、炭酸水で歯が変色する可能性に注意が必要とのことです。
炭酸水をよく飲むので、歯のエナメル質への影響が心配という人に、モロ氏らは「炭酸水を飲んだ後に炭酸なしの水をコップ1杯飲むのも手です。そうすると歯がすすがれ、口内の酸性度が正常に戻ります」とアドバイスしました。
◆食事中にドリンクを飲むと消化に悪い?
食事中に飲み物を飲むと消化に悪いという人もいますが、これは誤解とのこと。つまり、水であれ炭酸水であれ、食事中に水分をとっても特に問題ないというのがモロ氏らの見解です。
理論的には、水で胃酸が薄まる可能性もあるものの、消化器系が単に食事の粘稠(ねんちゅう)度、つまり胃に入った食べ物の粘り気に適応するだけなので食事中に水を飲む習慣に悪影響はないとされています。
人によっては、炭酸飲料を飲むと胃の調子が悪くなることがありますが、これはガスがたまって膨満感や不快感などを引き起こすのが原因です。また、急に発生する強い尿意などを症状とする過活動膀胱(ぼうこう)の人は、炭酸水の酸性度が泌尿器系の問題を悪化させる可能性もあるそうです。
◆キンキンに冷やした水や炭酸水の影響は?
食事中の飲み物は水でも炭酸水でもいいとして、では温度はどうかというと、常温の水と冷水の影響を比べた研究は驚くほど少ないとのこと。いくつかの研究では、非常に冷たい水が胃の収縮を抑制して消化を遅らせる可能性があることや、氷水が血管を収縮させてけいれんを起こすとの報告がなされています。
また別の研究では、冷たい水を飲むと体を温めるためにエネルギーが消費されて、一時的に代謝が促進される可能性が示唆されていますが、その効果は最小限なので体重が目に見えて減るといった効果は期待できないようです。
モロ氏らは末尾で「まとめると、水は生きるのに不可欠なので、水分補給には数え切れないほどの健康上の利点があるということです。炭酸が入っているかどうかにかかわらず、水は常に最も健康的な飲み物です」と述べて、改めて水や炭酸水での積極的な水分補給を推奨しました。