「酒も煙草も肉も好きだけど」…自称”腸介”窪塚洋介がコロナ禍で始めた”意外なルーティン”1.5食

写真拡大 (全8枚)

「食事は1日1.5食しか食べません。腸がすっきりしていると頭がクリアになるし、性格もポジティブになるんです」

高い演技力と世間に迎合しない自由な言葉がカリスマ性を帯び、若者を中心に多くの支持を得ている俳優・窪塚洋介(45)。出演作のみならずライフスタイルまでもが注目されるなか、自ら窪塚“腸”介と名乗るほど熱心に取り組んでいるのが「腸活」だ。

「腸活」とは健康のために腸内環境を整える活動のこと。窪塚が腸活を始めたのはコロナ禍で世の中が混乱していた頃だった。

「仕事がキャンセルになり、家で過ごすなかで、ある先輩に寺田啓佐さんの『発酵道―酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方』という本を勧められたのがきっかけ。寺田さんは無農薬、無添加の自然酒を造る蔵元『寺田本家』(千葉県香取郡神崎町)の先代当主で、本には腸や微生物のこと、人間にとって発酵がいかに重要かということが書かれていた。その内容に感銘を受けたんです」

もともと20代の頃から食には気を付けていて、ファストフードやコンビニの弁当は食べず、家でも添加物をなるべく避けた食事をとってきた。『発酵道』に触発されて発酵や微生物、腸内環境にまつわる本を読み漁った結果、「すべては腸にある」と悟ったという。

「人間の生命活動に微生物は欠かせないものであり、そのほとんどが腸内にいます。腸で発酵活動を行い、免疫力を高めてくれる善玉菌もその一つ。それに『脳腸相関』という言葉があるんですけど、脳と腸はお互いに影響を及ぼすそうなんです。つまり、うつ病などの精神疾患も、ある程度は腸内の微生物の働きが関係していると考えられる。それがすごく腑に落ちて腸活を始めたんです」

腸のために窪塚が実践しているのは「1日1.5食」。朝は野菜ジュースと自家製豆乳ヨーグルト、昼は好きなものを食べて、夜は腸に良い根菜類や発酵食品、海藻類を軽くつまむという。朝0.25食、昼1食、夜0.25食とみなして、合計1.5食という計算だ。

「本当は1日1食にしたいところですが、無理をしてストレスになっては意味がないので1.5食にしています。少食にするのは細胞を活性化させるため。それに、たくさん食べると消化と吸収に生命エネルギーを使い過ぎてしまい、本来必要なところにエネルギーが行きわたらなくなってしまうんです」

例えば、ケガをした時は回復力を高めようとついたくさん食べてしまいがちだ。しかし、食べれば食べるほどエネルギーが消化吸収に回されるため、ケガを治すエネルギーが枯渇して、かえって回復が遅くなってしまうのだと窪塚は言う。

「断食は古くから世界各地で医療の一つとされてきた歴史があって、ドイツには『断食で治らない病気は医者も治せない』、フランスにも『断食はメスを使わない手術』ということわざがあると聞きます。もちろん、ずっと空腹ではいられないけれど、自然治癒力を高めるためには“食べ過ぎないこと”が大切なんですよ」

いきなり減らすことが難しければ、まずは「寝る前3時間は食べない」ことから始めるといいと窪塚は助言する。消化の良いものであれば一般的に3時間ほどで消化吸収される。3時間も食べないでいたら空腹で眠れないのではないか……と危惧してしまうが、それは思い込みに過ぎないそうだ。

「俺もはじめはそう思ってたんですけど、空腹を辛いと感じるのは『空腹だと飢餓に陥って死ぬから危険』だと脳が判断するから。そうではなく、『空腹だから俺の体は健康に向かっている』と考える。空腹感は幸福感なんだとマインドセットすることで前向きになれます。腸活をするとお酒の吸収速度があがるので燃費が良くなったし、いいことだらけです」

窪塚といえば、お酒が好きで、有機純米酒「福霧」のアンバサダーも務めるほど。「酒は百薬の長」ということか。

「このことわざ、実際は『酒は百薬の長、されど万病の元』っていうんですよね。だから本当は嗜むぐらいがいいんだろうけれど、好きなんでつい飲み過ぎちゃうんですよ。でも、普段お釣りがくるぐらいメンテナンスしているから二日酔いがなく、心身ともに調子がいい。さっきも言ったけど、好きなものを我慢してストレスになったらかえって不健康だと思うんです」

だから、煙草も害が少ないとされるものを選んではいるものの、やめようとは思わない。基本的には菜食だが、仲間との付き合いや気分で肉をがっつり食べたり、ファストフードを口にしたりすることもあるという。

「心のままにヴィーガンをするのはいいけれど、たまに自分がヴィーガンだからって肉を食べる人を攻撃するような、自分以外を否定する人たちがいるじゃないですか。あれ、体も心も全然整ってないじゃんって思うんですよ。無理をするからストレスがたまって攻撃するんじゃないかな」

ストイックになり過ぎるのはよくないが、スナックや添加物の多いものを食べ過ぎるのもよくない。「バランス」が大事なのだと窪塚は言う。

「腸活をしていると、どんなに美味しくても普段と違うものを食べ過ぎると体が重くなります。自然と健康にいい食を求めるようになり、『肉は月に一回にしよう』とか自分にとって心地よい状態がわかってくる。独自のバランスを見つけられたら、メンタル的にもすごく調子がよくなります」

俳優のみならず、モデルや執筆など活躍は多岐にわたるが、近年はゴルフアパレルブランド「8G SHOOT」のプロデュースや陶芸にも取り組む。YouTubeチャンネル「窪塚洋介の今をよくするTV」では腸活のことも積極的に発信している。「本当に好きなことだけをやって生きている」と語る窪塚は、人生においてもバランスを大事にしている。

「副業があるから俳優の仕事もバランスがとれているし、家族や仲間とのバランス、世の中とのバランス……自分をとりまくすべてにバランスがあって、これが乱れるとストレスが生まれてしまう。バランスよくいるためにはポジティブにものごとを捉えることが大事であり、だからこそ腸活で心身を整える。みんなが腸活したら誰かを羨(うらや)んだり、妬(ねた)んだりする人が減って世界が平和になると思うんですよね」

世の中をちょっとでもよくするために、窪塚“腸”介は今日も腸活を発信し続けている。

取材・文:中川明紀