「骨髄異形成症候群」の症状や発症したら食べてはいけないものはご存知ですか?

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骨髄異形成症候群とは?Medical DOC監修医が骨髄異形成症候群の症状・初期症状・末期症状・原因・余命・生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

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監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)

2009年新疆医科大学を卒業し、中国医師免許を取得。2019年に日本医師免許を取得。
神戸大学大学院(腫瘍・血液内科学講座)にて血液悪性腫瘍の研究に従事。医学博士号を取得。
赤穂市民病院、亀田総合病院、新宿アイランド内科クリニック院長などを歴任後、2023年2月いずみホームケアクリニックに常勤として着任。現在は内科全般の疾患を幅広く診療している。

「骨髄異形成症候群(MDS)」とは?

骨髄異形成症候群は、骨髄の中にある血液を作り出す細胞(造血幹細胞)に異常が起こるために正常に血液を作り出すことができなくなる病気です。骨髄異形成症候群では、赤血球・白血球・血小板などの正常な血球がつくられず、血液細胞の成長の途中で壊れてしまう無効造血が起こり、血球が減少したり、形や機能に異常が生じたりします。骨髄異形成症候群は、造血幹細胞のうち、骨髄系幹細胞におこった異常が原因と考えられる病気であり、一つの病気ではなくいろいろな病気の集合体と考えられています。
骨髄異形成症候群の一部が急性骨髄性白血病に移行することもあり、注意が必要です。
骨髄異形成症候群は40代から徐々に増加し70歳を超えると急激に増加します。長生きした高齢の男性に多い病気といえます。

骨髄異形成症候群の代表的な症状

骨髄異形成症候群は健康診断などの血液検査の異常があり、気が付く人も多く、症状がほとんどない人もいます。血液細胞(白血球・赤血球・血小板)の異常により症状が起こります。代表的な症状について解説いたします。

貧血に伴う症状

赤血球が減少する貧血が起こると、息切れや動悸などの症状が出やすくなります。これは、赤血球が全身に酸素を運搬しているので、赤血球が少なくなると全身に酸素が運ばれにくくなるからです。このため、疲れやすくなったり、動悸、呼吸困難、めまいなどの症状が起こります。このような貧血の症状は、骨髄異形成症候群以外でも起こるため貧血の症状が疑われた場合にはまず内科を受診し、詳しく調べる必要があります。

出血の症状

血小板が少なくなると、出血が起こりやすくなります。これは、血小板が血を止める働きを持つためです。皮膚に点状出血ができたり、鼻出血や歯肉からの出血がみられるようになります。皮膚に細かい点状の出血がみられたり、鼻出血が続くなど出血症状がみられる場合にはまず内科を受診して、相談してみましょう。

白血球の減少に伴う症状

白血球数が減少すると、感染症が起こりやすくなり、これに伴う症状が起こります。白血球は細菌やウイルスに対しての防御機能として働きます。このため、白血球数が減少すると、感染症に対する防御機能が不十分となり感染症を起こしやすくなります。このため、発熱したり、咽頭痛などの風邪症状が起こりやすくなります。感染症が重症化もしやすくなりますので、発熱が持続する場合には、一度内科を受診して詳しく検査をした方が良いでしょう。

骨髄異形成症候群の前兆となる初期症状

骨髄異形成症候群の初期は症状がないことが多いです。健康診断などの血液検査で貧血が認められ、出血や鉄欠乏性貧血が認められない場合や、白血球や血小板など他の血球の減少もみられた場合に、骨髄異形成症候群を疑うきっかけになります。血液検査での軽度の異常を見逃さずに注意することが大切です。

骨髄異形成症候群の末期症状

骨髄異形成症候群が進行し起こる末期症状では、血球減少に伴う症状が起こります。また、白血病へ進行することでの症状を認めることもあります。

感染症の合併

白血球の減少が進行することで、感染症にかかりやすくなります。また、感染症が治らず、急変し命を落とす可能性もあります。

出血

血小板が減少することで、体のさまざまな場所から出血しやすくなります。皮膚での内出血はもちろん、脳や腸管などからの出血が起こることもあります。

重度の貧血

貧血が進行して、輸血を繰り返してもなかなか十分な状態を保つことができなくなります。貧血が進行することで倦怠感や動悸などの症状が持続しやすく、心不全を合併することもあります。

白血病による症状

骨髄異形成症候群が白血病へ進行することがあります。この場合には白血病による症状がみられることがありますが、基本的に前述したような貧血に伴う症状、感染症、出血に伴う症状などが起こります。ただし、これらの症状から白血病と診断をすることはできません。骨髄穿刺(こつずいせんし)や生検など精密な検査や評価が必要になります。体調不良が続いたら、主治医に相談をしましょう。

骨髄異形成症候群の原因

骨髄異形成症候群はゲノム異常から生じていると考えられていますが、病気の原因や発症する機序に関してはいまだ明らかになっていません。発症要因の一部として以下のような環境因子や一部の遺伝的要因も挙げられていますが、骨髄異形成症候群のごく一部です。

環境的要因

抗がん剤の治療歴がある人では、骨髄異形成症候群の発症しやすいことが分かっています。放射線療法や抗がん剤のうち、アルキル化剤とトポイソメラーゼ阻害剤は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの血液疾患の発症との関連があるとされています。また、原爆被害者や国際線パイロットなど放射線曝露を受けた人では、骨髄異形成症候群の発症が有意に多くなっているとの報告もみられています。しかし、治療に関連する骨髄異形成症候群も全体の10~20%程度であり、そのほかは原因不明です。

骨髄異形成症候群を発症したら食べてはいけないもの

骨髄異形成症候群を発症した場合に、食べてはいけないものは特にはありません。しかし、病気が進行し、白血球が減少している場合には感染症の発症に気を付ける必要があり、以下のような感染予防のための食事の注意が必要な場合もあります。すべての方に当てはまるわけではありませんので、主治医に確認をしましょう。

生もの

生肉、刺身、生野菜、生卵などの生の食べ物は感染症発症の危険性があり、加熱調理をした方が良いでしょう。

雑菌が繁殖しやすい食品

ドライフルーツ、乾燥芋、自家製漬物などは雑菌が繁殖しやすいため避けましょう。

発酵食品

自家製ヨーグルト、納豆、カビを含むチーズなども白血球が低い時には避けた方が良いでしょう。
食品は新鮮なものを、調理後すぐに食べましょう。また、調理時の手洗いに気を付け、調理時に生肉などを切った包丁、まな板などは他の食品と分け食中毒に気をつけましょう。

骨髄異形成症候群の余命・生存率

骨髄異形成症候群において、余命を考える際には、骨髄異形成症候群自体の進行と急性骨髄性白血病への移行リスクを考えなければいけません。骨髄異形成症候群の予後に影響を与える末梢血や骨髄の所見を予後因子として点数化し、この点数から高リスクか低リスク化を判断します。
高リスク群の場合、生存率が低く、白血病への進行率も高いことが示されています。

骨髄異形成症候群の治療法

骨髄異形成症候群の治療の方針は、リスクの判定をした後に、方針が決定されます。
低リスクの場合で症状がない場合には、経過観察をして必要があれば貧血を改善する薬や輸血などを行います。
高リスクの場合には、自然経過では予後が悪いため、年齢やドナーなどの条件が許せば同種造血幹細胞移植の適応を考慮します。高齢者でも、前処置を減弱した幹細胞移植を実施する場合もあるため、主治医に確認をしましょう。造血幹細胞移植が難しい場合には、細胞障害性抗がん薬を使った薬物治療が検討されます。

骨髄異形成症候群を治療しないとどうなる?

骨髄異形成症候群を治療しないとどうなるでしょうか?これは、リスク分類により変わります。低リスクの場合には、治療を行わなくとも問題ないこともあります。しかし、高リスクの場合には病状の進行が早く、白血病化も高率に起こるため、早期に最期を迎えることも少なくありません。

「骨髄異形成症候群(MDS)」についてよくある質問

ここでは「骨髄異形成症候群(MDS)」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

骨髄異形成症候群が進行するとどうなりますか?

今村 英利 医師

骨髄異形成症候群が進行した場合には、貧血や血小板減少、白血球減少が進行する場合、また白血病を発症する場合があります。

骨髄異形成症候群は完治しますか?

今村 英利 医師

骨髄異形成症候群の治癒を期待できる治療としては、造血幹細胞移植が挙げられます。造血幹細胞移植をすることで、完治が期待できますが、体への負担が大きく、高齢者では適応が難しい場合もあります。

骨髄異形成症候群から白血病になる確率はどれくらいでしょうか?

今村 英利 医師

骨髄異形成症候群は、検査により高リスク群から低リスク群まで分類されます。このリスク分類によって白血病化の確率が異なります。低リスク群では、十数%程度が白血病に移行するとされています。一方、高リスク群では急性白血病になる確率が50~80%とされており、非常に白血病になる確率が高いです。

編集部まとめ血液検査で異常があったら、症状がなくとも内科を受診しよう!

骨髄異形成症候群は、慢性的に経過する貧血、血球減少と急性骨髄性白血病へ移行しやすい特徴を併せ持つ予後不良の病気です。
骨髄異形成症候群は初期の症状が分かりにくいこともあり、健康診断などでの貧血や白血球、血小板などの減少を認めた場合には早めに血液内科を受診することが大切です。血液検査での異常があった場合には、症状がなくとも内科を受診し、相談をしてみましょう。

「骨髄異形成症候群(MDS)」と関連する病気

「骨髄異形成症候群(MDS)」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

心不全

内分泌科の病気

甲状腺疾患

血液科の病気

白血病貧血再生不良性貧血

骨髄異形成症候群の症状としては、血球減少に伴う症状が挙げられます。だるさや動悸など症状のみでは区別がつかないことも多いです。体調不良が続く時には内科を受診して相談をしましょう。

「骨髄異形成症候群(MDS)」と関連する症状

「骨髄異形成症候群(MDS)」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

倦怠感めまい動悸

皮膚の出血

発熱

骨髄異形成症候群の症状のみでは、病気の区別がつきません。体調不良が持続する場合には、早めに内科を受診して相談をしましょう。

参考文献

造血器腫瘍診療ガイドライン2023年度版.骨髄異形成症候群(出典先)