「ダイエット飲料は本当にダイエットに役立つ?」などゼロカロリー飲料と健康についてわかっていることまとめ
健康志向が高まり、糖分の過剰摂取の問題が広く知られるようになったことで、砂糖入りのソフトドリンクの消費量は世界的に減少傾向にあります。砂糖がたっぷり入ったジュースの代わりに人気となっている、人工甘味料入りのダイエット飲料のダイエット効果や健康への影響について、健康と栄養の専門家がまとめました。
Cheeky diet soft drink getting you through the work day? Here’s what that may mean for your health
日本を含む世界各国では、砂糖入りのソフトドリンクの消費量が減少傾向にあり、例えばオーストラリアでは加糖飲料の消費量が1997年から2018年にかけて27%減少しています。
これについて、オーストラリア・クイーンズランド大学のローレン・ボール教授と、サザンクロス大学の認定栄養士兼講師のエミリー・バーチ氏は「公衆衛生の大勝利」としています。
WHOも、1日に摂取する遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満に、理想的には5%未満にするよう呼びかけていますが、これは砂糖の摂取を1日当たり約25g(小さじ約6杯)未満に抑えるのに相当するとのこと。コカコーラの335ml缶には小さじ7杯分の砂糖が入っていることを踏まえると、砂糖が入った飲み物を控えるのがいかに重要かがわかります。
砂糖入り飲料の消費量が減っているのに対し、人工甘味料入りのダイエット飲料の消費量は急増しており、その人気はオーストラリアの下水サンプルの90%から人工甘味料が見つかっているほどです。しかし、多くの人が砂糖入りの飲料を控える必要性を知っている一方で、ダイエット飲料の長期的な影響についてはあまり知られていません。
◆長期的な影響1:アスパルテームについて
ダイエット飲料には、人工甘味料としてアスパルテームやサッカリン、スクラロースなどが入っており、ほとんどの国の食品当局がこうした人工甘味料を安全としている一方、長期的な健康への影響を指摘する研究もあります。
例えば、欧米におけるダイエット飲料の消費とメタボリックシンドロームの関係について調べた2015年の研究では、ダイエット飲料を頻繁に、あるいは定期的に飲む人は、飲まない人に比べて糖尿病や心臓病になる可能性が高いとの結果が出ました。この関連性は、食生活やライフスタイルの影響を考慮しても同様だったとのことです。
また、WHOは2023年に「ダイエット飲料に使用されている主要な甘味料であるアスパルテームに発がん性がある可能性があることが判明した」との報告書を発表しました。
WHOが人工甘味料「アスパルテーム」を発がん性物質に分類しようとしている - GIGAZINE
重要なのは、これまでのところアスパルテームでがんの発生率が増加する可能性があるとされているに過ぎない点です。報告書の中でWHOは、アスパルテームの摂取でがんのリスクが高まると確信できるほど十分な科学的エビデンスはまだないと指摘した上で、「たまに摂取する分には安全」と強調しました。
◆長期的な影響2:ダイエット効果
ボール教授らによると、「ダイエット」とついている割に、ダイエット飲料は体重管理とはほとんど関係がないとのこと。
WHOが2022年に、人工甘味料と体重管理についてのさまざまな研究結果を検討するシステマティック・レビューを実施したところ、参加者をグループ分けして介入を行うランダム化比較試験では「人工甘味料を摂取した人は体重が若干減少する」という結果が出ました。
しかし、介入を行わずに参加者の健康を長期的にモニタリングする観察研究では、人工甘味料を大量に摂取する人はBMI値が上昇するリスクが高く、肥満になる可能性に至っては76%も高くなる傾向があると報告されていたとのこと。
言い換えると、人工甘味料は長期的な体重管理には役立たない可能性があるということです。そのため、WHOは体重管理のために人工甘味料を使うべきではないと推奨しています。
「ノンシュガー」「ゼロカロリー」「人工甘味料」は減量に役立たず糖尿病リスクを高めるというWHOの報告 - GIGAZINE
人工甘味料をよく摂取している人の体重が増えてしまうメカニズムはまだ解明されていませんが、動物を使った実験では「人工甘味料を大量に摂取すると脳にエネルギー不足の信号が送られて食べる量が増加する可能性がある」ことが示唆されています。
◆長期的な影響3:胃腸や歯の健康
2023年に発表された論文によると、人工甘味料は消化器系の内壁を刺激して炎症を起こし、下痢、便秘、膨満感、そのほかの過敏性腸症候群によく見られる症状のリスクを高めるという報告がいくつかあるとのこと。
一方、この研究では「人工甘味料のリスクと、砂糖の摂取量を減らせるメリットの兼ね合いを決めるには、さらなる研究が必要」とも指摘されています。
また、人工甘味料そのものはほとんど虫歯の原因になりませんが、多くの清涼飲料水にはリン酸やクエン酸が含まれており、これが歯のエナメル質を溶かしたり、歯の酸蝕(さんしょく)を促進したりするおそれがあります。
◆結論
こうした知見から、ボール教授らは「栄養に関する多くの話と同じで、ダイエット飲料も節度が大切です。ダイエット飲料をたまに飲むことが健康に害をおよぼすことはほとんどありませんが、頻繁に飲んだり過剰摂取したりすると長期的な健康リスクが増大するおそれがあります。ですから、水分補給には普通の水やハーブティー、炭酸水、フルーツやハーブを漬けたインフューズドウォーター、牛乳などが最適な選択肢です」と述べました。