【五島列島】コシ抜群『五島うどん』をおいしくする「地獄炊き」とは? お菓子からカレー(?)まで「国境の島」の名産品に感動
五島列島は九州の西、長崎の沖合に位置する島々で、国境の島として観光も盛んだ。名産物も多くあり、独自の魅力を放っている。ここでは手延うどん(粉末つゆセット。税込1000円)かんころ餅(税込918円)五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー(税込280円)を紹介する。どれも個性が強くて、予想以上に旨い品だった。
日本の国境に位置する五島列島の名産品
船を降りると港湾ビルに「国境の島」と大書されているのだから、国境の島なのである。福江島は、五島列島の中では最大の島だ。隠れキリシタンの島という歴史を持ち、今でもキリスト教徒が多い。同じ船で降りる乗客の中にはシスター服の女性もいた。
長崎港からジェットフォイルと呼ばれる高速船(巡航速度80km/hに達する)で90分も揺られてたどり着く島なのだから、長崎とは似て非なる文化圏となるのは、むしろ当然かもしれない。江戸時代には往来するだけで大仕事だったはずだ。
ここで紹介するのは、五島列島の名産品として地元の人に選んでもらった品々だ。どれも個性的な味であるうえに、通販で入手することもできる。馴染みのない味覚に触れる感激が、皆さんにお伝えできれば幸いだ。
『五島うどん』は乾麺でも別格のコシと喉越しだった!
うどんの由来には諸説あるなかで、有力とされているのが遣唐使が中国から持ち帰ったという説だ。このとき、道中である五島列島にも製法が伝わり、以来、島に定着したといわれている。つまり、五島うどんは日本でも最古参のうどんというわけだ。
そして「五島列島のうどんなら五島うどんだろう」と簡単に捉えることはできない。じつは『五島うどん』『五島手延うどん』は地域団体商標で、五島手延うどん協同組合が商標権を持っている。勝手に名乗るわけにはいかない、特別なうどんなのだ。
裏を返すと『五島うどん』『五島手延うどん』と銘打って売られているうどんは、製法と品質が保証されたエリートうどんというわけだ。早速、手延べうどん (粉末つゆセット。税込1000円) の味を確かめてみたい。
「地獄炊き」でわかる、五島うどんの旨さ
五島うどんは細麺で、椿油を塗って干して仕上げられている。細さの割にしっかりしたコシがあるのが特長なのだそうだ。
とはいえ乾麺である。そんなに素晴らしく美味いということもなかろうと思いつつ、パッケージに指定されたとおりのたっぷりの湯で、指定通りに茹でたうどんを一本、ためしに啜ってみて驚いた。この時点で既に美味い。麺の弾力が気持ちいいだけでなくて、きちんと味がする。塩味だ。
塩味といっても、ただの塩ではない。正確には海の塩辛さだ。潮の味が舌に乗ってくる。これは美味い。「地獄炊き」と呼ばれる湯もりうどんがオススメの食べ方だそうだが、そう言われるのも理解できる。この鍋のまま卓上にドンと置いて、つけダレで啜ったら絶対に美味い。
麺の輪郭もボケていない。湯もりうどんは、ぬめりを残したうどんの輪郭がぼやけてしまい、啜ったときに物足りなさを覚えることが多くて好みではないはずなのだが、このうどんは別だ。潮の味、歯ごたえ、喉越し、どれも魅力的だ。
うどんは水でシメるに限ると思い込んでいたが、五島うどんは地獄炊きも絶対に美味い。
あごだし(トビウオだし)の強い旨味に負けない、うどんの力強さが魅力!
とはいえ、季節は真夏。40℃近い気温で湯もりうどんを食べるのはさすがにつらいので、水でシメてざるに上げることにした。
粉末のスープを溶いて麺つゆにする。あごだし(トビウオだし)に馴染みがないので、おそるおそる味をみると、うどんと同じく潮の塩辛さと強い旨味が刺激的だ。
少しつゆを薄くつくりすぎた気もしたが、それでもうどんとバランスする自己主張の強さだ。冷たいざるうどんは猛暑の中では格別に旨くて、喉越しよく箸が進む。
つゆの中にうどんを入れて、かけうどんにしてみたところ、これまた絶妙。つゆの塩味も潮の塩辛さなのだが、あごだしを含んでいるからか、うどんのそれとはまた違う印象。うどんと一緒にすすり込み、口の中で噛むと、異なる味が競い合うような華やかさになる。華やかな味のかけうどんという、得難い経験ができた。
サツマイモの甘さが癖になる「かんころ餅」!
福江島で出迎えてくれた地元のかたに「みやげに買って帰るなら何がいいですか」と問うと、「まず、かんころ餅 (税込918円) ですね」という返事があった。島民にとっては、最も身近な味なのだそうだ。味の種類はいくつも用意されているが、まずはプレーンなサツマイモだけの味を知ってほしいとのこと。
その場でスマホ検索すると、もともとは高価なもち米による餅を、ふかしたサツマイモでかさ上げしたのが誕生のきっかけらしい。もち米とサツマイモを搗いて伸ばして乾燥させて、保存食にしたのだという。
売り場で手にしたかんころ餅は、分厚くしたかまぼこ板を真空パックしたような体裁で、手に取ると中身の詰まったずしっとした感触がする。包丁で切り分けて食べるもので、垢抜けた体裁とは言い難いが、素朴な味を予感させる手応えだった。
その予想は半分当たっていて、半分外れていた。サツマイモの甘みがとても上品なのだ。
ズンとくるサツマイモの甘さが、緑茶にあう
餅の歯ごたえよりも、サツマイモの味が前面に出てくる。ふかしたサツマイモを、保存が効くように加工した食品のような印象だ。噛みしめるたびにサツマイモの甘さがズンとくる。
そして、このサツマイモが美味い。なめらかで上品で、もとのイモもいいのだろうが、なめらかに仕上げるための手数もかけられていることが伺える味だ。かんころ餅だけを食べても美味いが、緑茶と合わせるとグンと味が引き立つ。三時のおやつに丁度いい菓子だ。
本格カレーの「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」
五島列島といえば海の幸。しかし、刺し身を持たせるわけにもいかないからだろう、地元のひとが土産に持たせてくれたのがこの、「 五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」だった。
今回紹介するのはプレーン(税込280円)だが、具材の入った チキン(税込520円)ビーフ(税込650円)豚なんこつ(税込480円 )といった選択肢もある。「なんにでもあうカレー」を証明するためのラインナップだろう。
開封前の見た目は普通のレトルトカレーである。あっさりしたデザインだが、フォントの選択とカレーライスのアイコンで現代的な印象だ。さっそく味見に移ることにしよう。
酸味から始まり、辛さに切り替わる本格カレーの味
固めに炊いた白米の上で開封。香りは強くない。色は濃い黄色で、プレーンなので具は見当たらない。なんにでもあうということは、なにものでもないということでもある。
スプーンで口に運んでも、すぐに刺激的な辛さがくるわけではない。辛さは特に感じない。感じられるのは酸味で、その背後に厚みのある複雑な味がある、おそらく、その主軸が鯛の出汁なのだろう。
そして、食べ進めようとするころに、一気に辛さが押し寄せてくる。「辛くない」などと言ったのは誰だ。辛いじゃないか。爽やかなカレーライスの辛さだ。これが後から押し寄せてくる。美味い。
夏の盛りに食欲を刺激するのに、丁度いい辛さの本格カレーでした。
文・写真/深澤紳一(ふかさわ しんいち):PCゲーム雑誌から文芸誌、サブカルチャー誌まで幅広い寄稿歴をもつライター。レーシングスクールインストラクターなども務めつつ、飼犬のために日々働く愛犬家。