Octane UK

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MGへのノスタルジアがどれだけ強くても、今や同社は中国資本の傘下にある、という事実からは逃れられない。現在のMGは、60以上の地域で(アメリカは除く)、ICE、ハイブリッド、EVのハッチバック、サルーンなどの、競争力のある価格設定、長期保証、まっとうなドライビング体験で、高い評価を得ている。

【画像】シザーズドアを備えたMGの新スポーツカー、サイバースターの外観とインテリア(写真3点)

しかしながら、私たちが待ち望んでいたのは、新しいスポーツカーだ。サイバースターは、ロンドンと上海のMG社スタジオが設計、現在もソリハルに拠点を置くエンジニアチームが磨きをかけ、中国で製造された。2021年の上海モーターショーで、コンセプトモデルとしてお披露目されたのも記憶に新しい。電動のシザーズドアを含め、外観には当時からほとんど変更が加えられていない。

我々『Octane』は昨年、スタジオでの内覧会に招待されたが、今回、実際に運転する機会に恵まれた。2つのバージョンがあるとはいえ、どちらもEVだ。それでも、それを気にする必要はない。イギリスでの販売価格は、後輪駆動でシングルモーターの「トロフィー」が5万4995ポンド、四輪駆動でツインモーターの「GT」が5万9995ポンドだ。MGの往年の車たちが、そのルックスと有望さに反してパワー不足だったという記憶は、ここでは脇へ置いておこう。サイバースターGTは、375kWのパワーと725Nmという巨大なトルクを発生し、0-62mphを3.2秒で達成する。(まさにスーパーカーの領域だ!)トロフィーの方は、250kWと475Nmで5.0秒だ。

現行のBMW Z4よりも20cm長いという、予想以上の大きさだが、見た目も悪くない。フロアを形成するバッテリーパックが超薄型であるため(厚みは110mm)、少なくとも全高は決して高くない。

走りはどうだろう? 良い、というか、本当に良い。EVの長所である、大トルクと瞬間的かつスムーズなパワーの供給を、重量増(トロフィーは1885kg、GTは1895kg)という明らかなデメリットにも関わらず実現している。しかも、その重量の多くを低位置に留めつつ、前後50:50の割合で配分されている。道路上でも、サイバースターの重量を意識することはほとんどない。高速コーナーでも、安定した姿勢を保っていた。

乗り心地もスポーツカーとしては素晴らしく、ステアリングは正確で、適度なフィードバックを与えてくれる。MGは、シャシーに素晴らしい仕事を施しており、どちらのモデルでもそれを補完するように、バックグラウンドで絶妙に合成されたサウンドトラックが選べるようになっている。チューニングされたエンジンがギアを上下させるときの唸りには及ばないにしても、サウンドトラックは巧みにドライビング体験を高めてくれる。

GTはとんでもなく速い。一方でトロフィーは、重さのあるGTよりもステアリングとハンドリングが生き生きしている。なので、パワーの劣るトロフィーにおいても物足りなさを感じることはないだろう。航続距離は、トロフィーが316マイル、GTが276マイルとなっている。これはスコットランド高地の120マイルの距離を高速でドライブした結果が元となっているようだ。

どちらのモデルも、乗り心地までもが良い。全体にレザー調のトリムが施され、ボンネットは電動で、ドライバーの周囲には4つのスクリーンがある。暖房やエアコンのコントロールはタッチスクリーンだが、他の多く機能はステアリングホイールで操作できるのがありがたい。ただし身長6フィート(約180センチ)以上の場合は、フロントガラスを覗き込むような体勢になるかもしれない。

ということで、EVであろうとなかろうと、これからロードスターを購入するならば、サイバースターを考慮に入れないわけにはいけないだろう。

文:David Lillywhite