「鉄分を摂りすぎると現れる症状」はご存知ですか?【管理栄養士監修】

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鉄分を摂りすぎると現れる症状とは?Medical DOC監修医が鉄分を摂りすぎると現れる症状・過剰摂取の原因・効率的な摂取方法などを解説します。

≫「鉄欠乏性貧血」を予防する食べ物はご存知ですか?医師が解説!

監修管理栄養士:
西澤 奈純(管理栄養士)

経歴
2017年至学館大学卒業 学生時代もスポーツ栄養の研究室でアスリートへの食事提供、実業団チームへの栄養サポート補助、大学生アスリートへの栄養アセスメント、スポーツジムでの健康栄養セミナー講師などを経験してまいりました。/ 2017年~2019年まで給食委託会社勤務 実業団陸上部スポーツ寮、特別養護老人ホームなどで給食管理、栄養管理業務に従事しました。 アスリートへの栄養サポートとして合宿帯同なども経験させていただきました。 / 2019年~管理栄養士として大学勤務 本格的にスポーツ栄養に携わるために転職いたしました。研究員としてスポーツ寮での食事提供、アスリートへの個別指導、集団セミナーなどに従事しました。 / 現在は食品メーカーにて調乳指導に従事し、月50名以上のお母様に指導をしております。また、料理専門の家事代行サービスでもお仕事しております。その他単発で業務委託でお仕事させていただいております。
主な研究内容・論文
大学女子体操競技選手に対する減量のための栄養サポート
保有免許・資格
管理栄養士
栄養士
普通自動車運転免許

「鉄分」とは?

鉄分とは、身体の健康維持に必要なミネラルの一種です。

食事やサプリメントなどから摂取した鉄分の、そのうち70%は赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在し、酸素の運搬に重要な役割を果たしています。

残り約30%は、肝臓や骨髄にストックされている貯蔵鉄です。血液中の鉄分が不足した場合に備えています。

体内の鉄分が不足している状態を鉄欠乏性貧血といい、集中力の低下や、頭痛、食欲不振などの症状があります。

軽度の場合は自覚症状がないこともあるため、定期的に血液検査を受けることが重要です。

鉄分を摂りすぎると現れる症状

貧血予防に重要な鉄分ですが、過剰摂取は身体に悪い影響を及ぼします。具体的な症状を5つご紹介しますので、心当たりのある方は早めに病院で血液検査を受けましょう。

胃部不快感

サプリメントや鉄剤に含まれる鉄イオンが胃の粘膜を刺激し、胃のむかつきや吐き気、嘔吐などの症状を引き起こす場合があります。貧血の治療薬として鉄剤が処方されている場合は、かかりつけの病院に相談してみるとよいでしょう。薬剤の種類や内服するタイミングの変更、胃薬の処方など体調に合わせた対処法を検討してくれるはずです。サプリメントを服用している場合は、一日あたりの摂取目安量や摂取方法をもう一度確認してみましょう。表記のとおりに服用しても症状が改善しない場合は、内科の受診をおすすめします。服用中のサプリメントやお薬手帳を持参すると、よりスムーズに診察を受けられるでしょう。

便秘や下痢

多量に摂り込まれた鉄分は消化管に負担をかけるため便秘や軟便、下痢などの症状を引き起こすことがあります。下剤や整腸剤は鉄分の吸収に影響を与える可能性があるため、便通異常に悩んだらかかりつけの病院を受診しましょう。また、体内で吸収しきれなかった鉄分は便と一緒に体外に排出されます。鉄分は酸化すると黒色になるため、鉄剤やサプリメントの服用中は黒色便がみられることがあります。ほかに症状がない場合は特に心配する必要はないでしょう。

皮膚炎

鉄分を過剰摂取すると、亜鉛不足の症状である皮膚炎がみられることがあります。鉄と亜鉛は同じ吸収経路をたどるため、鉄分の過剰摂取が亜鉛の吸収障害を引き起こすためです。亜鉛は皮膚のターンオーバーに重要な役割を担っており、不足すると発赤や発疹などの症状が出現する場合があります。目やお口周りに症状が出やすいのが特徴ですが、手足の先端や外陰部に症状が出ることもあり、ご自身でほかの病気と見分けることは難しいでしょう。気になる症状があれば、皮膚科の受診をおすすめします。

脱毛

毛根を包む毛包の周囲で皮膚炎が起こると、脱毛を引き起こします。また、亜鉛はたんぱく質の合成に重要な成分の一つです。鉄分の過剰摂取によって亜鉛の吸収が障害されると、髪の毛の生成や成長に必要なたんぱく質が不足し、抜け毛や薄毛を引き起こします。さらに、髪のダメージ補修にも重要な役割を担っているため、髪にハリやツヤがなくなることもあります。

味覚障害

人は舌の味蕾(みらい)という部位で味を感じます。味蕾のターンオーバーには亜鉛が重要な役割を担っているため、亜鉛が欠乏すると味を感じにくくなる場合があります。また、舌がピリピリ痛む場合も亜鉛欠乏症が原因である可能性があるため、かかりつけの内科や耳鼻咽喉科などを受診しましょう。

鉄分を摂りすぎる原因

一般的な食事であれば、鉄分の過剰摂取には至らないでしょう。しかし、以下のような場合では鉄分を摂りすぎてしまう可能性があるため、注意が必要です。

鉄剤の内服

鉄剤は、鉄欠乏性貧血の治療に用いられる薬剤の一種です。鉄分が豊富に含まれているため、鉄分が多く含まれている食品やサプリメントとの併用で鉄分を過剰に摂取してしまう可能性があります。食事療法や内服治療は医師の指示のもと、正しく行いましょう。

サプリメントの服用

一般的に、サプリメントはご自身で選んで購入します。病院で処方される薬剤とは異なり、1日の摂取目安量の記載はありますが、一人ひとりに合わせた用法・用量の記載はありません。そのため、知らず知らずのうちに鉄過剰症になっている可能性があります。体調面に不安があってサプリメントを服用している場合には、定期的に病院で検査を受けるとよいでしょう。

血液の病気

骨髄異形成症候群や再生不良性貧血では貧血の症状が現れますが、原因は鉄分の不足ではありません。そのため、原因が不明のまま鉄剤や鉄分サプリメントの服用を続けると、余分な鉄分が体内に蓄積し、鉄過剰症を引き起こします。病気の早期発見や早期治療のため、貧血の症状を自覚したら早めに病院で検査を受けましょう。

輸血の合併症

貧血治療として赤血球輸血を繰り返すなかで、過剰な鉄分が体内に蓄積しさまざまな症状を引き起こすことがあります。鉄過剰症は肝臓や心臓の病気、糖尿病などを引き起こすと考えられているため、注意が必要です。輸血による治療を受けている方は、医師の指示に従い定期的に検査を受けましょう。

鉄分を効率よく摂取する方法

鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血を発症し、動悸や息切れ、めまいなどの症状が現れます。食事の内容や内服のタイミングに留意し、貧血予防に努めましょう。

鉄分を多く含む食品の摂取

鉄分を多く含む食品には、以下のようなものがあります。

レバー

牛肉(赤身の部分)

かつお

がんもどき

納豆

小松菜

ほうれん草

これらの食品を普段の食事に取り入れることで、貧血の予防や症状軽減などの効果が期待できます。調理が困難な場合は、レトルト食品や惣菜をうまく活用してみましょう。

鉄分と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

ビタミンCは、鉄分と一緒に摂取することで鉄の吸収率を高めてくれます。以下のような食品を食事に取り入れ、効率的に鉄分を摂取しましょう。

● ブロッコリー
● アセロラジュース
● 赤・黄パプリカ
● レモン(柑橘系の果物)
● じゃがいも・さつまいも

水溶性ビタミンであるビタミンCは水に溶けやすく、また、加熱に弱いのが特徴です。じゃがいもやさつまいものビタミンCは、でんぷんによって守られているため、加熱による影響が少ないとされています。うまく食事に取り入れるといいです。

鉄分の効果を高める摂取タイミング

食事に含まれる成分が鉄分の吸収を阻害する恐れがあるため、以前は空腹時の摂取が推奨されていました。しかし、胃のむかつきや吐き気などの症状出現のリスクが高まるため、現在は空腹時を避けて食後(食事の後30分以内)に摂取するのが一般的です。病院で処方された鉄剤の場合は、医師からの指示のとおりに内服しましょう。

「鉄分を摂りすぎると現れる症状」についてよくある質問

ここからは、「鉄分を摂りすぎると現れる症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

鉄分の一日の摂取量について教えてください。

西澤 奈純 医師

一日に必要な鉄分の摂取量は18~74歳の男性で7.5mg、18~64歳の女性で6.5mgです。月経がある場合は10.5mgの摂取が推奨されています。食事からの鉄分摂取が不足していても、血液検査の結果で貧血と診断されなければ、鉄剤の内服は必要ありません。軽度の貧血であれば、まずは食事療法をメインに行います。

鉄分を含んだサプリメントの摂取は安全ですか?

西澤 奈純 医師

サプリメントのパッケージや添付文書には、一日あたりの摂取目安量や摂取方法などが記載されています。表示のとおりに摂取すれば、身体に害を与えることはないでしょう。しかし、持病があって薬物療法を受けている方は、薬剤の相互作用によって身体に悪い影響を及ぼす可能性があります。病院を受診する際はサプリメントのパッケージなどを持参し、一緒に飲んでも問題ないか相談してみましょう。また、気付かぬうちに鉄分を過剰摂取している可能性もあります。定期的に病院で検査を受け、異常の早期発見に努めましょう。

編集部まとめ

一般的な普段の食事では、鉄分を過剰に摂取してしまうことはないでしょう。
しかし、誤った方法でサプリメントを摂取したり、病院で処方された鉄剤と併せて摂取したりすると、鉄分の過剰摂取となります。
鉄分を摂りすぎた際に起こりうる症状は、胃のむかつきや便秘などの胃腸障害です。鉄分の摂りすぎを防ぐため、自覚症状がなくても定期的に病院で検査を受けるとよいでしょう。
その際、サプリメントの詳しい成分内容が記載されたものを持参すると、薬剤との飲み合わせをチェックしてもらうことができます。

「鉄分を摂りすぎると現れる症状」と関連する病気

「鉄分を摂りすぎると現れる症状」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

逆流性食道炎機能性ディスペプシア

胃がん

感染性胃腸炎

早期の胃がんは自覚症状に乏しく、胃のむかつきや貧血、黒色の血便などの症状がみられる頃にはすでにがんが進行している可能性があります。早期発見・早期治療のため、気になる症状があれば早めに病院を受診しましょう。

「鉄分を摂りすぎると現れる症状」と関連する症状

「鉄分を摂りすぎると現れる症状」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

胃のむかつき

嘔気・嘔吐

便秘

下痢

皮膚炎

脱毛

鉄分を摂りすぎると、胃腸障害や亜鉛の吸収障害を引き起こします。上記の症状に心当たりのある方は、早めに病院を受診しましょう。

参考文献

鉄(e-ヘルスネット)

鉄欠乏性貧血のはなし(大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座)