性別騒動の女子ボクサーに敗れた伊選手が胸中告白「私は彼女を批判し、判断できる人間ではない」【パリ五輪】
ケリフ(左)との対戦を終えたカリニ(右)は胸中を口にした。(C)Getty Images
女子ボクシング界が揺れている。
キッカケとなったのは、目下開催中のパリ五輪に参戦している2選手の存在だ。イマネ・ケリフ(アルジェリア)と、リン・ユーチン(台湾)である。二人は共に昨年の女子世界選手権で性別適格性検査を不合格となり、出場権を剥奪されていた。
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しかし、パリ五輪における競技運営権を持つ国際オリンピック連盟(IOC)は、「女子カテゴリーに出場する選手は全員、競技参加資格を満たしている」と強調。両者の参加が医学的にも問題がないと判断していた。
そうした中で、ケリフの試合が波紋を呼んだ。現地時間8月1日に行われた女子66キロ級の2回戦に登場した彼女は、アンジェラ・カリニ(イタリア)と対戦。わずか46秒で相手が棄権するというまさかの結末を迎えたのだ。
開始早々にケリフが2発の強烈なパンチを浴びせると、被弾したカリニが鼻を負傷したとして試合続行を断念。動揺するカリニは、ケリフの握手も拒否。キャンバスに膝から崩れ落ちて涙した。
試合後、カリニが「痛すぎた」と漏らしたこともあり、やはりケリフの参戦を疑問視する声は噴出。ついにはイタリアのジョルジャ・メローニ首相も、「彼女(ケリフ)の血中テストステロン濃度が高かったのは事実であり、決して公平な試合ではなかった」と指摘。国際的な論争を起こしていた。
ただ、ケリフが一方的に問題視される状況は、リング上で号泣したカリニの望むところではないのかもしれない。試合後にイタリア紙『Corriere della Sera』の取材に応じた25歳は、「私は戦うためにリングに入った」と強調。そして、“渦中の人”となった相手を慮るように、こう語っている。
「イレギュラーな試合だったか? 私はここでケリフを批判し、判断できる人間ではないです。ただ、彼女がここにいるということは、何らかの理由がある。どれだけの論争があろうとも、私は戦ってきたし、リングに上がってきました。私はファイターであり、代表チームもそれを知っている。どんな痛みに直面しても決して立ち止まらない人間です。今日のように止めるのは、それが家族のためだからです」
現地時間8月3日にハンガリーのアンナ・ルツァ・ハモリと対戦するケリフ。その試合の行方は、大きな注目を集めそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]