これは――虫ですね。本草学者が捉えた真相


『病葉草紙』京極夏彦

人の心は分かりませんが、 それは虫ですね――。

ときは江戸の中頃、薬種問屋の隠居の子として生まれた藤介は、父が建てた長屋を差配しながら茫洋と暮らしていた。八丁堀にほど近い長屋は治安も悪くなく、店子たちの身持ちも悪くない。ただ、店子の一人、久瀬棠庵は働くどころか家から出ない。年がら年中、夏でも冬でも、ずっと引き籠もっている。

「居るかい」

藤介がたびたび棠庵のもとを訪れるのは、生きてるかどうか確かめるため。そして、長屋のまわりで起こった奇怪な出来事について話すためだった。

祖父の死骸のそばで「私が殺した」と繰り返す孫娘(「馬癇」)、急に妻に近づかなくなり、日に日に衰えていく左官職人(「気癪」)、高級料亭で酒宴を催したあと死んだ四人の男(「脾臓虫」)、子を産めなくなる鍼を打たねば死ぬと言われた武家の娘(「鬼胎」)……

「虫のせいですね」
棠庵の「診断」で事態は動き出す。

「前巷説百物語」に登場する本草学者・久瀬棠庵の若き日を切り取る連作奇譚集。

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発売ラインナップ (2024/8/4~2024/8/10)

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タイトル 病葉草紙 著者名 京極夏彦 発売日 2024/08/07 作品紹介 これは――虫ですね。本草学者が捉えた真相
貧乏長屋を中心に起こる怪事の数々。店子で本草学者の久瀬棠庵は、「虫のせいですね」と呟く。「巷説百物語」とも繋がる謎解き奇譚。 タイトル 天使の跳躍 著者名 七月隆文 発売日 2024/08/07 作品紹介 それは誰もが絶望する、中年棋士のラストチャンスだった
田中一義、46歳。迎え撃つ相手は「令和の王」こと源大河八冠。悲運の中年棋士は、このラストチャンスに人生のすべてを燃焼させた。 タイトル イーロン・ショック 著者名 笹本裕 発売日 2024/08/08 作品紹介 最強のCOOが語る激動の日々
買収によりTwitter社に走った激震。リストラ、支払い停止、見えない方針。外資系企業を渡り歩いた著者がその時見たものとは?